南関東 大河川沿いの福祉避難所 660施設で浸水リスク

高齢者や障害者など、特に配慮が必要な人にとって重要な避難先となるのが自治体が設置する「福祉避難所」です。
NHKが南関東の大河川沿いにある福祉避難所を分析したところ、少なくとも対象の4割にあたる660の施設で浸水リスクがあることが分かりました。
専門家は「広域避難の態勢整備など対策が急務だ」と指摘しています。

福祉避難所は、体が不自由なお年寄りや障害者など、災害時に特に配慮が必要な人のために開設され、主に福祉施設などが対象となっています。

NHKは、東京、千葉、埼玉、神奈川の南関東の4都県で大河川の浸水が想定されている自治体の福祉避難所、1567の位置データを収集し、最悪のケースでどの程度浸水するおそれがあるのか防災科学技術研究所の協力を得て分析しました。
その結果、少なくとも4割にあたる660の施設で浸水するリスクがあり、このうち230施設には、2階以上がつかる可能性がある3メートル以上の浸水のおそれがあることが分かりました。
中でも、江戸川区や足立区など、標高が低い「江東5区」と呼ばれる地域では3メートル以上浸水するおそれがある施設は6割以上にのぼりました。

今回の分析には中小河川は含まれておらず、浸水リスクのある福祉避難所はさらに多い見込みです。

高齢者などの避難に詳しい跡見学園女子大学の鍵屋一教授は「非常に厳しい結果だが、このリスクが現実化し、多くの福祉避難所が機能しなくなる可能性を踏まえて対策を進める必要がある。特に江東5区のように、ほぼ全域が浸水域にあたる自治体では、『広域避難』の態勢整備など対策は急務だ」と話しています。

機能しなかったケースも

去年10月の台風19号では、福祉避難所が機能しないケースもありました。

埼玉県川越市では障害者施設が浸水し、入所者およそ40人が避難を余儀なくされましたが、市内では福祉避難所は1か所も開設されませんでした。

このため、施設の入所者は一般の避難所に滞在しましたが、車いすで使えるトイレがないほか、個室で落ち着くことができないなど、設備の整っていない環境の中で体調を崩す人も相次いだということです。
障害者施設「けやきの郷」の内山智裕総務部長は「一般の避難所で障害の特性にあわせた環境を作ることは極めて困難だということが分かりました。特に重度の障害がある方は環境次第で命に直結する問題が出てくるおそれもあります。平時から安心して避難できる場所を確保しておく重要性を痛感しました」と話していました。

川越市は、福祉避難所を事前に27か所指定していましたが、半数近くは浸水が想定される地域にあり、受け入れスペースも大幅に足りなかったことから、開設ができなかったとしています。

水害時の福祉避難所の活用方法については改めて検討を進めているということです。

“ほぼ全域が浸水” 江戸川区の模索

水害リスクを抱える中で福祉避難所をどう機能させるか、ほぼ全域が浸水するおそれのある江戸川区では模索が始まっています。

1人で避難が難しい高齢者などは5000人余りいると試算されていますが、区はことし福祉避難所の受け入れ態勢を初めて調査。

その結果、浸水しても安全に避難できる福祉避難所はおよそ1400人分しかないことが分かりました。

このため区が進めているのは特に支援が必要な高齢者など1400人を抽出し、行き先や移動手段などをあらかじめ決めておく、いわば「オーダーメード」の避難です。

“オーダーメード避難”も課題は山積

しかし、現実には課題は山積みです。

浸水が1週間から2週間程度続くと想定される中、福祉避難所となる施設では、介護用のベッドや避難者のための新たな食料を準備する必要があります。

さらに、避難者に医療的なケアをするには、あらかじめ、家族と具体的な合意をしておかなければなりません。
江戸川区福祉推進課の白木雅博課長は「根本的な対策が必要だとして、一歩踏み出した。課題は山積みだが、すべての区民が安全に避難できるよう当事者の方や受け入れ側の施設などと話し合いを進めながら、一つ一つ解決していきたい」としています。