バイデン氏 国務長官に側近ブリンケン氏指名見通し 米メディア

アメリカ大統領選挙で勝利を宣言したバイデン前副大統領は24日に閣僚人事の一部を発表するとしています。複数のメディアは、バイデン氏が外交の要である国務長官に、側近のブリンケン元国務副長官を指名する見通しだと伝えていて、新政権の陣容に関心が高まっています。

バイデン氏 閣僚人事の一部を24日に発表へ

今月3日に行われたアメリカ大統領選挙は、主要メディアの当選確実の報道を受けて民主党のバイデン氏が勝利を宣言しましたが、トランプ大統領は、選挙で不正があったと主張し、法廷闘争を続ける構えを崩していません。

ただ、専門家やメディアは、バイデン氏の当選確実が覆る可能性は低いと指摘しています。

こうした中、バイデン氏が大統領首席補佐官への起用を決めたクレイン氏は22日、バイデン氏が閣僚人事の一部を24日に発表すると明らかにしました。

具体的にどのポストについて発表するのかは明らかになっていませんが、複数のメディアはバイデン氏が国務長官に、バイデン陣営で外交顧問を務めるブリンケン氏を指名する見通しだと伝えました。

ブリンケン氏はオバマ政権1期目に副大統領の安全保障担当補佐官としてバイデン氏に仕え、オバマ政権2期目には国務副長官として外交政策を担当しています。

閣僚人事をめぐっては連日、報道でさまざまな顔ぶれが伝えられるなど、関心が高まっています。

これまでに財務長官にはFRB=連邦準備制度理事会のイエレン前議長やFRB理事のブレイナード氏が有力視されているほか、国防長官にフロノイ元国防次官やダックワース上院議員らの名前が挙がっています。

財務長官や国防長官の候補者には女性が多く、それぞれ、就任すればアメリカ史上、初めてとなり、バイデン氏が目指す多様性のある政権の象徴にもなります。

閣僚候補 国務長官

アメリカの複数のメディアが国務長官に指名される見通しだと伝えたアントニー・ブリンケン氏は、バイデン氏の長年の側近として知られ、選挙期間中からバイデン氏の外交・安全保障政策の責任者として陣営を取りしきりました。

ブリンケン氏はトランプ政権の「アメリカ第一主義」が同盟国とのあつれきを生んだとして国際協調や同盟を重視する外交政策を掲げています。軍事的台頭を続ける中国に対しては日本をはじめとする同盟国や、関係国と結束して対抗する必要性を訴えています。

このほか、国務長官の候補としてはオバマ政権時代に黒人女性として初めて国連大使を務め、その後、ホワイトハウスで安全保障担当の大統領補佐官を務めたスーザン・ライス氏も当初、有力視されていました。

しかし、ライス氏に対しては2012年にリビア東部でアメリカ領事館が襲撃され、大使らが殺害された事件への対応をめぐり今も共和党内で反発が根強く、議会上院での承認の難航が予想され、起用は見送られるとの見方が広がっています。

閣僚候補 財務長官

国内経済の立て直しに向けて重要な役割を担う財務長官について、バイデン氏は「党内であらゆる人々に受け入れられる人物だ」としていて、経済分野の知見と経験が豊富な人物の名前が挙がっています。

ジャネット・イエレン氏は2014年から4年間、中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会のトップにあたる議長を務め、雇用状況を重視した金融政策の運営に当たりました。

FRBの理事を務めるラエル・ブレイナード氏はオバマ政権時代に財務次官を務めました。現在は、FRBのパウエル議長らとともに、新型コロナウイルスの危機対応を主導しています。

一方、党内左派からは大統領選挙でバイデン氏と候補者指名を争ったエリザベス・ウォーレン氏を推す声もあります。ウォーレン氏は「反ウォール街」の姿勢を貫く左派の上院議員で、中流階級への支援を訴え、その財源として大企業や富裕層への増税を主張しています。民主党左派の代表格であることから来年1月の南部ジョージア州の決選投票で共和党が上院の過半数を確保した場合、承認が難航するとも見られています。

閣僚候補 国防長官

国防長官には女性2人が有力視されています。

ミシェル・フロノイ氏はオバマ政権の1期目に国防次官を務めました。フロノイ氏は、トランプ政権がおととし1月、中国やロシアへの対応をアメリカの国防政策の最優先の課題と位置づけた「国防戦略」の策定にも携わるなど、党派を超えた国防政策の専門家として知られています。

タミー・ダックワース氏はタイ出身のアジア系アメリカ人の上院議員です。イラク戦争で両足を失った退役軍人で、子育てをしながら議員活動を続ける姿に女性からの人気も高く、一時はバイデン氏の副大統領候補として名前が取り沙汰されました。

閣僚候補 労働長官

このほか、党内左派の中心人物で、民主党の大統領候補者選びでバイデン氏と指名を最後まで争った、バーニー・サンダース上院議員も労働長官の候補として取り沙汰されています。

バイデン氏の人事の特徴は

バイデン氏はこれまでに大統領首席補佐官に最側近のクレイン氏の起用を発表するなど、合わせて14人のホワイトハウス高官の人事を発表していますが、いずれもバイデン氏の活動を長年支えてきた側近や、ワシントン政治に精通した人物が選ばれています。

トランプ大統領が既成政治の打破を掲げ、バノン元首席戦略官ら行政経験のない人や、大統領の長女、イバンカ補佐官やその夫のクシュナー上級顧問ら一族を最側近として起用したのとは対照的です。

また、副大統領候補に黒人で女性のハリス氏を選んだバイデン氏は新政権の人事についても、多様性を反映させる考えを示しています。

バイデン氏は、大統領次席補佐官に陣営の選挙対策本部長だった女性のオマリーディロン氏を起用していて、発表されたホワイトハウス高官14人のうち8人が女性であるほか、大統領上級顧問には黒人のリッチモンド下院議員が指名されています。

一方、外交政策の要となる国務長官の人事をめぐっては、影響力を増す中国への政策がどう変わるのかに関心が集まっています。

トランプ大統領が政治や経済、安全保障のあらゆる面で圧力を強める政策をとってきた一方、バイデン氏は中国に対して圧力だけでは不十分で、気候変動や新型コロナウイルスなど世界的な課題では中国と交渉すべきだとしています。

ただ、オバマ前政権で国務次官補を務め、現在もバイデン陣営の東アジア政策に助言するキャンベル氏は外交専門誌への寄稿の中で、中国と関係を深めることを通じて民主化や国際協調を促すことを目指した歴代政権の対中政策は間違いだったと指摘しています。

いまや民主党内でも中国への警戒感は高まっていて、日米外交筋も「国務長官に誰がついても、中国への姿勢が急に緩むとは考えにくい」と述べ、アメリカの対中強硬姿勢は変わらないとの見方を示しています。

また、今回の閣僚人事は、来年1月に南部ジョージア州で行われる上院議員選挙の決選投票の結果に大きく左右されるとみられています。

閣僚や各省庁の幹部人事には議会上院での承認が必要になるため、1月の決選投票で民主党が上院の過半数を獲得できなかった場合、共和党から強い反対を受ける人事は難航することになります。

このため、民主党左派のサンダース上院議員やウォーレン上院議員、さらに2012年にリビア東部でアメリカ領事館が襲撃されたテロ事件をめぐり、今も共和党内で反発が根強いライス元大統領補佐官はバイデン氏にとって起用が難しくなります。

専門家「閣僚人事で対アジア外交に大きな違い」

アメリカ政治が専門の東京大学の久保文明教授はバイデン新政権発足に向けた閣僚人事について、「どういう人が起用されるかでバイデン政権の日本や中国との対アジア外交に大きな違いが出てくる。例えば中国に対してはアメリカ外交の優先事項を地球温暖化対策に向けた協力と考えるのか、それとも軍事的な力というものを全面に押し出して対決していこうとするのか、どのような考え方を持っているかで政策の中身がずいぶんと違ってくる」と指摘しています。

一方、民主党左派の起用が取り沙汰されていることについて「選挙戦で左派は今回、4年前と違いバイデン氏に協力していて、その見返りとしてある程度、重要な閣僚ポストに自分たちを任命してほしいと思っている。そういう左派の要望をどのぐらい受け入れるのか、能力や政策の方向などさまざまな多様性を、人事にどうやって反映させていくか、バイデン氏にとって難しい課題でもあるし、逆に腕の見せどころという部分もある」と述べ、バイデン氏が難しい調整を迫られているとしています。

また、左派が閣僚に起用された場合について、「共和党から社会主義だという批判が強まる」としてより一層分断が深刻化するおそれがあると指摘しています。