大相撲 優勝の貴景勝 唯一の看板力士の重責の中で「集中」貫く

大相撲 優勝の貴景勝 唯一の看板力士の重責の中で「集中」貫く
大相撲11月場所で、大関 貴景勝が2回目の優勝を果たしました。貴景勝は目標の横綱昇進に向けて大きな一歩を踏み出しました。
「集中してやります」。今場所の貴景勝は何度そのことばを繰り返したかわかりません。

ただ1人の大関の重責も、優勝争いの重圧も、すべてと向き合ったうえで、ただ目の前の土俵だけを見つめる集中力が、2年ぶりの賜杯をもたらしました。

11月場所では観客を先場所の倍となるおよそ5000人に増やしましたが、両横綱に続いて大関の朝乃山、さらには新大関の正代までもが早々に休場し、ファンを落胆させました。

そうした状況の中でも、看板力士としてただ1人残った貴景勝は、一顧だにしませんでした。

「人のことを気にしても意味がない。自分の相撲をとることだけを考えている」
貴景勝が土俵で見せたのは“自分の相撲”そのものでした。

低い当たりから突き押しでただ前に出る。相手が無理に押し返そうとすれば強烈ないなしが待っている。つけいる隙のない押し相撲で白星を重ねていったのです。

みずからも押し相撲で角界の頂点に立った元横綱の北勝海、日本相撲協会の八角理事長は、「押し相撲で安定して勝っていくのは非常に難しい」と指摘します。

押し相撲で白星を積み重ねていくためには、一気に前に出る思い切りのよさが欠かせません。少しでも「迷い」があれば、足が出ず、踏み込みが甘くなります。さらにいったんリズムが崩れれば、そのとたんに連敗してしまうこともあります。

「相手が全員、まともに来てくれるならいいけど、まともに当たれないこともある。それでも自分の相撲を貫くという集中力が必要になる」と八角理事長は話します。
貴景勝も毎日の取組後、繰り返し同じことばを話していました。

「とにかく集中していこうとだけ思っていました」

“自分の相撲に集中する”。単純なことですが、それがいかに重要か、誰よりも貴景勝自身が理解しているようでした。

そんな貴景勝にも「迷い」が見えた取組がありました。

9日目、平幕の人気力士でしこ名のように動きのいい翔猿との一番。

相手の立ち合いを警戒したのかやや慎重になり、思い切って前に出ることができず、はたき込みで敗れました。
貴景勝はただ、「何も言うことはない。あした集中してやることしかできないので」と話しました。

そのことばどおり、決して集中力を切らすことなく、また白星を重ねていったのです。

八角理事長は連敗せず場所を引っ張っていた貴景勝を「いいときだけ力を出すんじゃなくて悪いときも力を出す。この精神力が立派だ」と、高く評価しました。
千秋楽の優勝決定戦、迷いの一切ない、会心の押し相撲を見せた貴景勝。

優勝を決めた直後、珍しく表情を変え、涙をこらえているように見えました。

ただ1人の大関の責任、大関として初めての優勝を期待する周囲の声に、貴景勝が重圧を感じなかったはずはありません。そうした声やみずからが置かれた状況とすべて向き合ったうえで、ただただ目の前の土俵に「集中」し続ける、それがいかに困難なことだったかを、土俵での表情が示していました。
来年の初場所は「綱とり」の場所となります。

「小学校から毎日強くなりたいと思ってきてるんで、それを変わらず一生懸命頑張って、自分と向き合ってやっていきたい」と話した貴景勝。

「ただ集中する」という、単純で困難な道を歩み続けてきた貴景勝。その日々の積み重ねこそが、横綱という大きな夢につながっていきます。