働き盛り男性 自殺増加 新型コロナによる雇用情勢の悪化影響か

働き盛り男性 自殺増加 新型コロナによる雇用情勢の悪化影響か
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働き盛りの男性の自殺が増えています。20代から50代でことし9月に自殺した男性は700人余りで、去年の同じ時期を2か月連続で上回りました。自殺の防止に取り組む団体は新型コロナウイルスの影響と見ています。
厚生労働省によりますと、ことし9月の1か月間に全国で自殺した女性は640人で4か月連続で去年の同じ時期を上回った一方、20代から50代の男性も705人と去年を56人、率にして8.6%上回りました。

8月に自殺した同じ年代の男性は706人で去年を6.6%上回っていましたが、1か月間でさらに2ポイント悪化しています。
自殺の防止に取り組むNPO法人「ライフリンク」の清水康之代表は「新型コロナウイルスの影響で非正規で働く人や自営業者を中心に働き盛りの男性が追い詰められている。雇用を守る政策を続けていくことが必要だ」としています。

厚生労働省は相談窓口の検索サイトを設けていて「相談が集中してつながりにくい場合はほかの窓口を探して相談してほしい」と呼びかけています。URLはhttp://shienjoho.go.jp/です。

路上生活に追い込まれた人も

新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、雇用情勢は徐々に悪化しています。

総務省や厚生労働省によりますと、全国の「完全失業率」は2.2%だった去年11月以降右肩上がりに上昇し、ことし9月の時点で3.0%に上っています。

有効求人倍率も9か月連続で低下して、1.03倍にまで落ち込みました。

また信用調査会社「帝国データバンク」によりますと、新型コロナウイルスの影響で倒産した企業は2月以降で700社に上っています。

生活困窮者の支援をしているさいたま市のNPO法人「ほっとプラス」には、3月以降、働き盛りの世代の男性からの相談が多く寄せられています。

中には、「新型コロナの影響で仕事が決まらず、家賃が払えない」とか、「仕事を失って実家に帰る交通費さえない」などと悩みを打ち明ける人もいるということです。

相談を寄せた男性の中には路上生活にまで追い込まれた人もいます。

新潟県のレジャー施設で契約社員として働いていた30代の男性は新型コロナウイルスの影響で仕事を失い、先月には所持金がほとんど底をつきました。

偶然、立ち寄った飲食店の店主にNPO法人を紹介され、今はこのNPO法人が運営するシェルターで暮らしています。

生活保護を受けることになった男性は「路上生活をしていると、どんどん身動きがとれなくなってしまい、自分の力ではどうしようもなくなってしまいました。新型コロナウイルスの影響がここまでとは予測していませんでしたが、また社会とつながって、自分の力で生きていくことができるようにしたい」と話していました。
男性を保護したNPO法人「ほっとプラス」の高野昭博生活相談員は「今まで普通に暮らしていた人の生活が根本から揺るがされていると感じる。中小企業も今は一生懸命ふんばっているが、流行が収束しないかぎり、状況はさらに深刻化していくのではないか」と話していました。

都内の20代男性「相談できることが必要」

都内の20代の男性は、ことし2月、勤務先の会社から突然、解雇を告げられ、その日のうちに寮からも退去させられました。

妊娠中の妻を連れてウイークリーマンションに引っ越しましたが、家賃が払えなくなり、友人から借りた車で夫婦で寝泊まりをするようになりました。

再就職しようとインターネットや転職サイトで就職先を探し、合わせておよそ50社に応募しましたが、結果はすべて不採用でした。

人事担当者からは「新型コロナのせいで経営が厳しく、選考自体を見送る」などと説明され、短期のアルバイトさえ見つからなかったということです。

男性に当時のブログを見せてもらうと、「今、現在は無職。もはや、自分ではどうしようも出来ないほどの地獄にいる。壮絶、過酷な人生を経験している最中です。人生本当に何があるかわからない」とつづられていました。

男性は当時の心境について「再就職したくても新型コロナのせいで仕事が見つからず、お金がどんどんなくなっていく不安しかありませんでした」と振り返っています。

男性によりますと、1日に口にできたのはおにぎり1個と水だけで、それでも所持金は僅か500円になり、ついには自殺が頭をよぎったと言います。男性は当時の心境について、「妻につらい思いをさせてしまっているという重圧がのしかかり、『どうにかしないといけない』と、それだけを考える毎日でした。でも、どうしようもできず、家族だけでも守ろうと思い、自分が死ねば保険で守れるのではないかと考えるようになりました」と打ち明けてくれました。

ことし6月、男性は、「最後に誰かに自分の話を聞いてもらいたい」と偶然、インターネットで見つけた支援団体の相談窓口にSNSでメッセージを送りました。

それを見た相談員が、その日のうちに泊まれる部屋を用意し、自殺を思いとどまることができたということです。男性はその時の心境について、「『聞いてくれる人がいたんだ』という気持ちと、車中泊をしなくて済むし、食べるものもあるという安心感がいちばんでした。もし相談がつながっていなかったらと考えると怖いです」と話していました。

その後、就職先も見つかったという男性は「自分がこんな状況になるとは1ミリも思っていませんでした。自分自身ではどうにもできない部分もかなり大きかったと感じています。一方で自分で何とかできるという気持ちが強く、どうにもできないことを受け入れられない自分もいて、誰かに相談しようとしてもできないということの繰り返しでした。1人で悩んでも解決しないし、よくない方向に考えがいってしまうので、少しでいいから話せる場と機会があれば、最悪の状況にはならないのではないでしょうか。メールや文章でもいいので、相談できることが何より必要だと思います」と話していました。

NPO法人 「働く男性の支援強化を」

自殺の防止に取り組んでいる東京都のNPO法人「ライフリンク」は、週に6日、SNSを使った相談を受け付けています。

平均で15人から20人ほどの相談員がLINEでメッセージを送ってきた人とやり取りをしていますが、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、働き盛りの男性からの相談が目立っているということです。

「ライフリンク」の清水康之代表は「自殺の増加率だけを見ると女性のほうが顕著だが、男性の自殺も依然として多い。特に非正規で働く人や経営が安定していない自営業者が、新型コロナウイルスの直接的な打撃を受けている」と指摘しています。

そして「これまで国が打ち出してきた支援策や雇用対策が、生活の安定や命を守ってきた側面が多分にある」としたうえで、「雇用情勢がさらに悪化すれば、人間関係や心の健康の悪化を引き起こし、自殺のリスクが高まりかねない。日本では依然として男性が一家の収入を支えている世帯が多く、働き盛りの男性の仕事を守ることは、家族の暮らしや命を守っていくことにもつながる。働く男性への支援を強化することが必要だ」と指摘しています。