マスク会食と言われても…

マスク会食と言われても…
忘年会や新年会。例年だったら家族や友人とおいしいものを食べながらワイワイ騒いで…と、にぎやかに過ごす時期ですが、コロナ禍ではそうもいきません。

そんな中、にわかに注目を集めているのが、飲食をする時だけマスクを外して、おしゃべりする時はマスクを付ける「マスク会食」です。そんなことできるの?

(ネットワーク報道部記者・斉藤直哉、井手上洋子/北見局記者・五十嵐菜希/青森局記者・長谷川薫)

「マスク会食」を呼びかけ

この「マスク会食」、感染症の専門家だけでなく、総理大臣や各地の知事も相次いで呼びかけています。
菅総理大臣は、「Go Toイート」について、原則4人以下で飲食をするよう全国の知事に検討をお願いしたと明らかにして、「静かなマスク会食」を呼びかけました。
菅総理大臣
「最大限の警戒状況にあると認識している。専門家からは、飲食を通じた感染のリスクが指摘されており、飲食の際でも会話の時にはマスクを着用するよう言われている。ぜひ、『静かなマスク会食』をお願いしたい」
また、東京都の小池知事は、パネルを用意して5つの「小」を心がけるよう呼びかけました。
東京都 小池知事
「会食はぜひ小人数で、できれば小一時間で、小声で楽しんで。お料理は小皿に分けて、小まめにマスク、換気、消毒をして、5つの小を強く意識してください」
神奈川県の黒岩知事も力が入っています。YouTubeの動画で「マスク会食」のやり方を実践して紹介しています。
神奈川県 黒岩知事
「マスクをしながらの会食は私もやったことがある。こうやってマスクしながら、お酒飲むときは外し、ごはんを食べるときは外して食べる。これで十分楽しい。こうすれば感染のリスクをグッと下げることができる」
神奈川県も「マスク会食」を、新しい会食マナーとして普及させようと呼びかけています。

ネットでは戸惑い多い

こうした「マスク会食」。

SNS上では、理解を示す意見もありますが、多くは戸惑いや、現実的ではないといった声です。
「飲みでマスク会食って正直無理だと思う」
「マスクしてまで会食したくないなあ」
「無理にGoToイートと両立させようとするのは本当に良い事なの?」
「付けたり、外したり、あー忙しくてかなわん」

会食による感染リスクは

そもそも、会食による感染リスクはどう考えられているのでしょうか。

政府の分科会は、感染リスクが高まる典型的な場面として「飲酒を伴う懇親会」や「大人数や長時間におよぶ飲食」を挙げています。
こうした場面で感染リスクが高まる要因としては、

1 飲酒の影響で気分が高揚すると、注意力が低下し大声になりやすい、
2 大人数の飲食では大声になり飛まつが飛びやすくなる、
3 回し飲みや箸を共有すること
などが挙げられています。

実際の会食による感染のケース

会食によって実際に感染が広がったケースもあり、国立感染症研究所はその集団感染の事例を公表しています。
店内のテーブル席で、座っていた7人のうち、1人が感染していてせき込んでいました。

参加者がマスクをしていたかどうかは分かっていませんが、向かい合って1メートルほどの距離にいた人など4人が検査の結果、陽性と判明しました。

一方で、感染者から最も離れた席にいた人と、30分ほどで退席した人の2人は陰性だったということです。

「リスク下げるには必要」

専門家の間でもこの「マスク会食」への見解は分かれています。

感染症対策に詳しい日本赤十字北海道看護大学の根本昌宏教授は、感染リスクを下げるには「マスク会食」を実践することが重要だとしています。
日本赤十字北海道看護大学 根本昌宏教授
「大きな違和感を感じている方もいるが、マスクをして話すことが日常になっているので、マスク会食もその延長だ。徹底すれば感染リスクを抑えることができる。わきあいあいと盛り上がる事が目的の会食の意識を変えて、静かに会話を楽しむようルールを徹底することが大切だ」
根本教授は、マスクから漏れる飛まつは、声が大きいほど多くなるので、より感染リスクを下げるには、なるべく小声で話すことを挙げています。

また、店側もマスク着用を呼びかけることが必要で、利用客もそれに対してムッとしないことが必要だとしています。

「リスク高まるおそれも」

さらに、ちゃんとしたやり方をしないと、「マスク会食」には、逆に感染リスクが高まるおそれが潜んでいると指摘する専門家もいます。
公衆衛生が専門の長野保健医療大学の塚田ゆみ子助教は、会食中にマスクをつけたり外したりすることを繰り返すと、マスクの外側など露出した部分に付いたウイルスが、マスクの内側にも付着してしまうおそれがあると指摘します。マスクの取り外しには、耳にかけるゴムの部分を持ってマスクの内側を清潔に保つ十分な注意が必要だということです。

そして、できれば会食が終わったら新しいマスクに取り替えてほしいとしています。

そして塚田助教は、お酒の席でマスクをつけ続けることは、なかなか難しいと考えています。
長野保健医療大学 塚田ゆみ子助教
「料理を口に運ぶたびにマスクを上げ下げしたり、外したりしようとしても、お年寄りや幼い子どもだと難しい。さらに、会話が盛り上がったり、お酒が入ったりすると、ついついマスクを外したままになってしまうことが考えられる」
そこで、塚田助教が提案しているのが、料理が来たらまずは黙々と食事を楽しんで、食べ終わったらマスクをして会話をする。そしてまた、料理が来たら会話をやめて食事をするという「タイムキープ方式」の会食のしかたです。お店の人に料理を出すタイミングを事前に相談しておくとよいということです。

さらに、会食の合間に「ハーフタイム」を設けて、換気することも有効だということです。
長野保健医療大学 塚田ゆみ子助教
「例年であれば特に年末年始は会食の機会が増えますが、いま気を緩めてしまうと今後の感染を広げてしまいかねません。安心して年末年始を迎えるためにも、いま一人ひとりができることをやるしかないと思います」

便利グッズも続々と

どうにかしてマスク着用と飲食を両立させることはできないか、さまざまなアイデアが出されています。

着用しているマスクと、店の紙ナプキンを組み合わせた会食用マスクをいち早く提案してきた外食チェーンの「サイゼリヤ」は、紙ナプキンだけで作れる改良型をPRしています。
この紙ナプキンマスクの作り方と使い方はこうです。

1 広げた紙ナプキンに、別の紙ナプキンを挟んで折り畳む。

2 これに下から手を入れて口の前に持ってくる。

簡単に作れて、前方への飛まつをとどめる効果が期待されるということで、汚れたら捨てればいいという手軽さもあります。

手に持つマスクも

さらに、京都市にある嵯峨美術大学の佐々木正子学長は「手に持つ」マスクを考案しました。
会食用のマスクで、会話を楽しむ際に口元にあてるものです。試作品を使った食事会では、「違和感なく使用できた」といった意見が寄せられたということです。

大学は、持ち手の型紙をホームページで公開していて、自分でこの手に持つマスクを作ることができます。商品化したいという業者からの問い合わせも増えているそうです。
新型コロナウイルスの感染リスクを最小限にするには、複数での会食を控えたり、リモートにしたりすることがいちばんですが、さまざまなアイデアを取り入れながら、自分たちでできる対策を考えてみませんか。