エンタメ界の風雲児、ネットフリックス創業者に聞く

エンタメ界の風雲児、ネットフリックス創業者に聞く
今のエンターテインメント業界で、風雲児と言えばこの人が思い浮かぶ。ネットフリックスの創業者でCEOのリード・ヘイスティングス氏だ。オリジナル作品を含め、多くの映画やアニメ、ドラマなどの動画を配信し、世界的に成長を続けている。新型コロナウイルスの感染拡大で外出を控える人が増えたことも、会員の増加につながった。今後のサービス展開から組織論まで、ヘイスティングス氏に聞いた。
(ロサンゼルス支局記者 菅谷史緒)

伸びる業績

好調な業績が続くネットフリックス。世界の有料会員数は伸び続け、ことし9月の時点で1億9500万人に上っている。新型コロナウイルスの感染拡大で自宅で過ごす人が増えたことを背景に、ことし4月から6月までの3か月間には、世界の会員数が1000万人以上、増えた。
日本でも、5年前のサービス開始以来、会員は500万人を超えている。配信中の韓国ドラマ「愛の不時着」は、ことしの「新語・流行語大賞」の候補にもなった。
ヘイスティングス氏
「日本では、ハリウッドの番組や韓国ドラマ、日本のアニメなど、そのすべてが会員数の増加に貢献してきました。今後の成長に大きな可能性を感じています。(『愛の不時着』の人気の理由は)主人公が韓国と北朝鮮の境界に不時着し、恋に落ちるという、普通では考えられないような筋書きが人々をひきつけていると思います。韓国のドラマにはロマンスとコメディーの要素がある点も見逃せません」

既存の概念に挑戦

そもそもネットフリックスは、最初から動画配信のサービスを手がけていたわけではない。1997年に創業したころは、郵送でDVDのレンタルを手がける会社だった。

このころ、アメリカでは「ブロックバスター」というビデオレンタルの大手チェーンが君臨していたが、ヘイスティングス氏は、より薄くて軽いDVDのレンタルで対抗した。

ブロックバスターとの激しい競争を経て事業を拡大したネットフリックスは、インターネットの普及に合わせて動画配信サービスへと事業を転換。
巨額の資金を投じてオリジナル作品をつくるようにもなり、2019年には、アメリカのアカデミー賞でネットフリックスが手がけた映画「ローマ」が監督賞など3つの賞を獲得し、ハリウッドの話題をさらうまでになった。
ヘイスティングス氏
「これからも会員が何を望み、私たちに何が出来るのか、学び続けていきます。ユーチューブのような広告モデルにはならないでしょう。また、スポーツやニュースといった分野は今起きたことがすぐに広がっていきますから、ネットフリックスに向いているとは思いません。シリーズものや映画であれば、午後でも、夜でも、利用者が自分のスケジュールにあわせて楽しめますから、動画配信に向いているのです」

独自の組織論

ネットフリックスの成長を、ライバルたちは傍観している訳ではない。アマゾンやアップル、ウォルト・ディズニーといった大手企業も動画配信サービスに力を入れている。こうしたライバルとの競争に勝ち残るため、何が必要なのか。ヘイスティングス氏は、目指す組織をこう語る。
ヘイスティングス氏
「会社や組織というものは、愛情に基づいた『家族』のようであるべきだという考え方があります。もう1つの考え方は、野球やサッカーといったプロスポーツの『チーム』のようであるべきだというものです。この場合、勝つために選手は全力を尽くし、監督はさらなる勝利のために変革を打ち出します。そうすることでしか、チャンピオンシップを勝ち取れるようなチームづくりは出来ません。ネットフリックスは、『家族』というより『チーム』です。家族のような会社がよいという社員には、そちらに移ってもらっていいと思っています。社員が『アスリート』であればこそ、互いに多くを学ぶことができるのです」
「アスリート」という例えをひもとくと、並外れた瞬発力を持ち、高い目標を設定してその達成に向けてなすべきことを逆算する。足りないところがあればトレーナーらに補ってもらい、勝利という「最高の結果」につなげていく。そんな人物像が浮かび上がる。社員に自由度と責任を与えているというヘイスティングス氏だが、その分、結果についても厳しい姿勢で求めていることがうかがい知れる。

成長は続くか

これまでの会員数の増加が急激だったこともあり、会社は、ことしの後半は伸びが鈍化すると見込んでいる。とはいえ、会員数が2億人に到達するのは間近だ。

これからのネットフリックスの成長に何が必要かという私の問いに、ヘイスティングス氏はこう答えた。
ヘイスティングス氏
「日本の人々がゆっくりくつろぎたい時に見てもらえる存在であり続けたい。新しい番組や映画を作って期待に応えていきたいと思っています」
ネットフリックスは、日本でもクリエーターに多額の資金を投じ、エンターテインメントの業界で存在感を増している。浮き沈みの激しい世界でヘイスティングス氏が持続的な成長に向けてどういった手を打っていくのか、目が離せない状況が続きそうだ。
ロサンゼルス支局記者
菅谷 史緒
平成14年入局
ニューデリー支局、
イスラマバード支局、
経済部を経て
去年から
ロサンゼルス支局