「医療資源不足」に備え新提言 治療中止 差し控えの注意点示す

新型コロナウイルスの感染が急速に拡大し、人工心肺装置=ECMOなどの医療資源が不足する。そんな最悪の事態に備え、日本集中治療医学会はより効果が期待される患者に優先的に振り分けるため、回復の見込みがない患者などの治療を中止する、あるいは差し控える場合の注意点を示した提言をまとめました。

新型コロナウイルスに感染した人の命をつなぎ止めるECMO=人工心肺装置や、人工呼吸器、それに集中治療室のベッド。こうした医療資源は徐々に増えてきているものの、数にかぎりがあります。

国内で感染が再び拡大する中、日本集中治療医学会は、今後、重症患者が増え続けECMOなどの医療資源が不足するという最悪の事態が起きた場合に備えて、新たな提言をまとめました。

より効果が期待できる患者に医療資源を優先的に振り分けるため、回復の見込みが無い患者などの治療を中止したり差し控えたりする場合の、考え方や注意点を示しています。

それによりますと、
▽治療の中止や差し控えは医師個人でなく医療チームで議論し、
▽患者の意思や医学的な妥当性などを考慮して判断するとしています。

▽患者自身が判断できる状態でなければ家族の合意に基づき、
▽患者や家族の意思は常に変化する可能性もあるので、それにも対応するとしています。

さらに、中止・差し控え後も痛みをやわらげる緩和ケアなど適切な医療・看護を提供するほか、家族の精神的ストレスもケアし、方針を決定した過程や医療内容は、後で検証できるよう記録するなどとしています。

日本集中治療医学会の西田修理事長は、治療の中止や差し控えを推奨するものではないとしたうえで「万が一の事態に、医師や患者、それに家族がよく話し合い適切に対応できるようまとめたものだが、最も重要なのはこうした事態に陥らないことだ。一人ひとりが感染予防の意識をもう一度高めて、最悪の事態を回避すべきだ」と話しています。