爆速メリーゴーラウンド? 崖っぷち遊園地の“本気の冗談”

爆速メリーゴーラウンド? 崖っぷち遊園地の“本気の冗談”
“爆速メリーゴーラウンド”に“瞑想観覧車”…。新型コロナウイルスの影響で崖っぷちに追い込まれた遊園地が次々と繰り出す一風変わった企画がじわじわと注目を集めています。冗談なのか本気なのか、ぎりぎりのラインを攻める姿勢にコロナ禍を乗り越えるヒントが見えてくるかもしれません。(新潟放送局記者 野口恭平)

低予算で“ぎりぎり”に

新潟県阿賀野市にある遊園地・サントピアワールドに、この秋登場したのが「ぎりぎりアトラクション」。

お金はないけど、アイデア勝負ーーー。

そんな遊園地のスタッフが総力で生み出した数々の工夫が評判を呼んでいます。
大型扇風機の風を正面から受けることで体感速度をあげてもらおうという木馬、その名も「爆速メリーゴーラウンド」。回転速度はそのままに、全身で風を浴びるその心境は「爆速」か!?

予算は扇風機代3万9800円。
ほのぼのとした観覧車は窓をすべて黒くして中も真っ暗。
ひとり静かに自分と向き合ったり、いつもと違う感覚を楽しんでもらったりする「瞑想観覧車」に様変わりしました。

かかった費用は締めて約1万円。
私も乗ってみましたが、約10分間自分がどこにいるのかすら分からず、普通とは違ったスリルを味わうことができました。

ほかにも、お化け屋敷に特注のカレーのアロマをたきしめた「カレーなるモンスターの館」など全部で5つの企画をそろえました。

雪国の遊園地の苦境

この「ぎりぎりアトラクション」、危機的な運営状況下でのまさにギリギリの取り組みなのです。

昭和51年に開園し、地域の人たちに親しまれてきたサントピアワールドは、平成23年に経営破綻。地元企業からの出資を受けて再出発し、ようやく安定的に黒字が確保できるようになるか…というタイミングでコロナ禍に見舞われました。

この遊園地は、積雪などの影響で冬の間は休業し、例年、3月中旬ごろから営業を始めます。しかしことしは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、3月の来園者が激減し、昨年度の決算が当初の黒字予想から一転して約1000万円の赤字になりました。

さらに、緊急事態宣言などの影響で4月上旬から5月末までは営業できませんでした。この期間は、例年、年間の売り上げの半分近くを確保する重要な時期で、今年度も赤字になるのは確定的だといいます。
高橋園長
「売り上げが確保できなければ(再び経営破綻も)あり得ると、本当に崖っぷちに追い込まれました」

支援は寄せられたけど…

施設の維持費だけで年間3000万円がかかり、多くの企業同様、この遊園地でも取引先の金融機関から緊急の融資を受けました。さらに窮状を知った多くの人たちからクラウドファンディングによって5500万円の支援が寄せられ、危機的な状況を脱することができました。
でも、融資はあくまでも借金。これから返済が求められます。

「どうすれば運営を続けられるのか。利用客に楽しんでもらえるか…」

手元に残ったなけなしのお金を前にしたスタッフたちの模索が「ぎりぎりアトラクション」につながったのです。

遊具の特徴踏まえ考え抜く

でも、こうしたアイデアを生み出したのは決して偶然ではありません。遊具の特徴を知り尽くすスタッフだからこそ思いついたと言えるのです。

ゾウの乗り物で空中を回るおなじみのアトラクションでは、「当たり」の旗が置いてあるところに止まれば客にステッカーをプレゼントする企画を実施しました。
毎回、ゾウが止まる場所がランダムなので、「ルーレットのように遊んでもらえるのでは」と考えたそうです。

ただ、楽しさやおもしろさの前に「安全性」が最も重要です。遊園地が、例えばジェットコースターを改修した場合、法律に基づき特定行政庁(県など)に届け出て安全性をチェックしてもらう必要があります。このため、サントピアワールドは、ジェットコースターではイベントは実施しないことにしました。

観覧車は重量が変わってしまうと安全性に問題が出るため、スプレーや軽いボードで黒くしました。チェックにあたる新潟県に説明をして、「問題ない」というお墨付きを得ています。

“平日”に貸し切り!

営業の再開後は、採算がとれると見込んだ土日・祝日に限って営業を続ける一方、修学旅行生向けの「平日貸し切りプラン」を新たに用意しました。一度に多くの生徒が来ても1日当たり総額100万円で遊び放題です。

すると、関西など遠距離の修学旅行を諦めた県内外の学校から問い合わせが相次ぎました。貸し切りなら不特定多数と接することはないと、新型コロナウイルスの感染予防対策として評価されたのです。9月、10月の平日は、ほぼ予約で埋まりました。
「ぎりぎりアトラクション」と「平日貸し切りプラン」。
苦境のなかで繰り出した一手によって一定の収益を確保する道筋はつきました。とはいえ、悩みは尽きません。

毎年休業する冬の時期にはスタッフを近くの食品工場などに派遣して人件費をなんとか賄っていますが、ことしは新型コロナウイルスの影響で例年どおり実施できるかどうか分からないそうです。

それでも高橋園長は明るく語っていました。
高橋園長
「今度は敷地を使ってドローンのレース場を作りたい」

ヒントは足元に

コロナ禍にあって、多くの企業がどのように事業を継続するか悩み、模索を続けています。サントピアワールドの取り組みには3つのことがかいま見えました。
1 遊具の特徴を生かして低予算で話題を集め(=資産を活用して新サービスを開発)
2 安全性を最優先に楽しんでもらい(=企業として必要なことを明確に)
3 通常どおり営業できない平日の使い方を変える(=逆転の発想)
新型コロナウイルスの収束が見通せず、景気の先行きも不透明な今、小さな遊園地の「本気の冗談」が手がかりを示しているように思えました。
新潟放送局記者
野口恭平
2008年入局
経済部で電機業界や金融業界を取材し2020年9月から現所属