冬のボーナス 半数の企業 去年より引き下げ 新型コロナ影響か

新型コロナウイルスの感染拡大で雇用への影響が広がる中、労働組合でつくる団体が、この冬のボーナスについて企業などからの回答状況をまとめたところ、およそ半数で、去年より引き下げられたことが分かりました。

全労連・全国労働組合総連合などが、加盟する労働組合を対象に、ことしの冬のボーナスについて調査し、これまでに企業などから回答があった276の組合の状況をまとめました。

それによりますと、前年と比較できる147の組合について集計したところ、およそ半数に当たる72の組合で、去年より引き下げられたことが分かりました。

また、冬のボーナスの金額について、業種や規模などの条件をそろえるため、118の組合を抽出して調査した結果、平均で1.82か月分、51万8058円で、去年より0.21か月分、17万2541円減少したということです。

これは、過去10年で最も低くなっていて、中小企業で、ボーナスが大幅に減額されるケースが多くなっています。

来月中旬にも、最終的な状況をまとめることにしていて、記者会見した全労連の黒澤幸一事務局長は「大変厳しい状況が明らかになった。労働者の生活を守るため、労使での話し合いを進めるとともに、中小企業への支援を、国などに求めていきたい」と話していました。

看護師「勤務の負担が増え 収入が減るのは苦しい」

新型コロナウイルスの影響で、医療機関でも冬のボーナスが大幅に減らされる方針が示されるケースが相次いでいて、働く人からは「勤務の負担は増えているのに、収入が減ってしまうのは苦しい」という声が聞かれます。

千葉県内の病院で看護師として働く30代の女性は、夫と大学生と小学生の娘の4人で暮らしていて、看護師の経験は、およそ15年、感染症対応の業務を担当しています。

新型コロナウイルスの感染拡大で、病院では専用病棟を設置することが必要になり、深夜までの残業も多く、女性の残業時間は、感染拡大前よりも月30時間ほど増えたということです。

自分が感染するのではないかという不安や、病院内で集団感染を起こしてはいけないという緊張感があり、精神的な負担も大きくなっています。

新型コロナウイルスの影響が長期化する中で、女性が働く病院でも体調の不調を訴えたり、休職を余儀なくされたりする人が出ているということです。

こうした中、冬のボーナスは、去年と比べて0.7か月分、平均で20万円余り引き下げたいという回答が今月、病院から労働組合にありました。

女性に支給される冬のボーナスも、このままでは去年よりも20万円余り下がる見込みだということです。

女性も、ボーナスが支払われるのを前提に生活を設計していて、大幅な減額は厳しいと感じています。

女性は「冬のボーナスは、ことし大学に入学した娘の授業料に充てる予定でした。新型コロナウイルスの影響でストレスを感じている中、生活を切り詰めなければならず、仕事の大変さに加えて、生活の大変さが二重にかかると感じています」と話しています。

そのうえで「新型コロナウイルスに対応するために、病院が、その費用を負担して独自に対策をしているケースは多くあり、地域の小さな病院だと経営が難しい状況になっていることは分かっています。行政が医療機関の現状をきちんと把握し、支援をしてほしいです」と訴えていました。

女性が働く病院は、NHKの取材に対して「新型コロナウイルスの影響による患者の減少などで、いまだかつてないほどの経営の悪化となっています。冬のボーナスについては、今回の回答をせざるをえなかった」と話しています。

大学生協職員「生活費を削るしかない」

東京都内の大学生協で正規職員として働く50代の男性は、冬のボーナスが40万円近く減ってしまう可能性があり「生活費を削るしかない」と話しています。

男性は、妻と息子と両親の5人で暮らしていて、16年前に家を購入し、月におよそ13万円の住宅ローンを払い続けています。

男性は、冬のボーナスを住宅ローンに充てたり、来年、専門学校への進学を希望している息子の入学費用に充てたりする予定だったということで「専門学校もお金がかかるので、冬の一時金が減額されると、もう生活費を切り詰めるしかなく、厳しいです。学生が来ないことには、生協の売り上げも上がらないし、元どおり回復してほしいが、来年もどうなるか心配です」と話していました。

東京や埼玉など、1都3県にある、およそ40の大学の生活協同組合の職員で作る労働組合によりますと、それぞれの生協から、新型コロナウイルスの感染防止のため、大学に来る学生が大幅に減り、食堂や物品の売り上げが急激に悪化したことなどを理由として、現時点で、冬のボーナスを去年よりも1.1か月分引き下げたいという回答があったということです。

専門家「マイナスの影響 一部の分野に深く大きく集中」

日本総合研究所の小方尚子主任研究員は「夏のボーナスは、新型コロナウイルスの感染拡大前に水準を決めていた企業も多かったが、冬のボーナスでは、新型ウイルスの影響が大きく出て、大幅なマイナスとなる見通しだ。ただ、全面的に景気が悪くなって、幅広い業種に影響が出たリーマンショックの時と違い、今回は需要が減った業種と、逆に増えた業種があるため、マイナスの影響が一部の分野に深く大きく集中している」と指摘しました。

そのうえで「収入の減少が長期にわたり、ローンや教育費が支払えない人も増えているため、どこに支援を必要とする人がいるのか、きめ細かく見て、的を絞った支援をする必要がある。一方で貯蓄にまわしている世帯もあるため、安心して消費できる環境をつくり、景気回復につなげるという視点も重要だ」としています。