米大統領選 バイデン氏 新型コロナ専門家チーム発表

アメリカ大統領選挙で勝利を宣言した民主党のバイデン前副大統領は、最大の課題としている新型コロナウイルス対策の専門家チームを発表するなど政権移行に向けた準備を進めています。一方、トランプ陣営は会見を開き、改めて法廷闘争を続ける構えを示しましたが、どこまで選挙結果に影響を及ぼすのかについては懐疑的な見方が広がっています。

アメリカ大統領選挙で勝利を宣言した民主党のバイデン前副大統領は9日、最大の課題としている新型コロナウイルス対策で助言を行う専門家チームを発表しました。

専門家は13人からなり、責任者は1990年代にFDA=アメリカ食品医薬品局の局長を務めたケスラー博士らが務め、メンバーの中にはトランプ政権下でワクチン開発の支援を担っていながら解任され、その後、政権の対応の不備などを批判した厚生省、生物医学先端研究開発局のブライト前局長などが含まれています。

バイデン氏は会見で、アメリカ国内の感染者が累計で1000万人を超えたことに触れたうえで「ウイルスを過去のものにするために何でもするつもりだ」と述べて就任直後から対応に全力をあげる考えを示し、マスクの着用などの感染対策の徹底を目指すと強調しました。

このほか早速、カナダのトルドー首相と電話で会談するなど政権移行に向けた動きを加速させています。

一方、トランプ陣営は勝敗の決め手となった激戦州の東部ペンシルベニア州で、開票所での陣営側の立ち会いが十分許可されなかったなどとして新たに裁判を起こしました。

また、ホワイトハウスのマケナニー報道官が会見し「選挙はまだ終わっていない。正確かつ公正な集計結果を得るためのプロセスを始めたばかりだ」と述べ、法廷で争う考えを改めて示しました。

ただ、選挙の不正を裏付ける証拠はあるのかと記者団が繰り返し質問したのに対して具体的な証拠は示さず、法廷闘争がどこまで選挙結果に影響を及ぼすのかについては懐疑的な見方が広がっています。

米司法長官「不正の疑いがあれば捜査認める」 米メディア報道

アメリカのトランプ大統領が大統領選挙の投票で不正が行われたと主張する中、アメリカメディアは、バー司法長官が9日、全米の検察官らに書簡を送り、今回の大統領選挙の投開票で明らかに不正が行われたという疑いがあれば、選挙の結果が確定する前でも捜査を認めると伝達していたと報じました。

トランプ大統領は大統領選挙の集会などで、郵便投票は不正につながるとしてバー司法長官が捜査を指揮すべきだと主張していました。

アメリカ司法省の選挙に関係する犯罪を捜査する部門は、これまで、選挙の結果が確定するより前に、投票にまつわる不正の捜査を行うべきではない、とする指示を示していたとされます。

バー長官が書簡を送った意図は明らかではありませんが、ニューヨーク・タイムズは「選挙結果に影響を及ぼさないという司法機関の長年の方針を無視した」と批判しました。

一方、CNNテレビは「選挙の不正の証拠を探そうとしていると、トランプ大統領に示すことができる」として、大統領へのポーズだという見方を伝えています。

FOXニュースも「選挙の不正主張」の中継打ち切り

トランプ大統領が選挙で不正が行われたと主張していることをめぐり、“トランプ政権寄り”とされるFOXニュースが、報道官の会見の中継を途中で打ち切る異例の対応をとりました。

ホワイトハウスのマケナニー報道官が9日、会見の冒頭部分で、「民主党は不正や違法な投票を歓迎している」と述べたところ、スタジオの司会者が「不正の主張を示す証拠が示されないかぎり、これ以上お伝えすることはできません」と述べて中継を打ち切りました。

FOXニュースは、トランプ大統領の支持者が好んで見る保守系のテレビ局で、“トランプ大統領寄り”の報道姿勢で知られているだけに、現地では驚きをもって伝えられています。

アメリカではSNS各社だけでなく、テレビ局も誤解を招く可能性があったり、事実かどうかわからなかったりする情報をそのまま伝えることの是非が問われていて、ABCなど複数の全米テレビネットワークは5日、選挙での不正を主張するトランプ大統領の会見の中継を途中で打ち切っています。

共和党上院トップ トランプ大統領の立場を擁護

トランプ大統領を支える与党・共和党の議会上院のトップ、マコネル院内総務は、法廷闘争を続けるトランプ大統領の立場を擁護しました。

マコネル院内総務は9日、今回の選挙の結果について、議会上院の本会議で声明を発表し「トランプ大統領は選挙の不正な疑惑を調べ、法的に訴える権利が100%ある」と強調しました。

そのうえで「もし選挙の結果に影響を及ぼす規模の不正が起きていたなら、明らかにされるべきだ」と述べ、法廷闘争を続ける大統領の立場を擁護しました。

大統領選挙の結果をめぐっては、共和党内でもロムニー上院議員などは、選挙の結果を認めて、民主党のバイデン氏を祝福する声明を発表したのに対して、グラム上院議員などは結果を認めず、大統領の立場を強く支持する考えを表明していて、意見が分かれています。