菅首相 “手段総動員 早期に成長軌道へ” 経済財政諮問会議

新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済の回復に向けて、菅総理大臣は、経済財政諮問会議で、あらゆる手段を総動員し早期に成長軌道に戻すため、新たな経済政策をとりまとめる考えを示しました。

総理大臣官邸で開かれた経済財政諮問会議には、菅総理大臣や西村経済再生担当大臣らが出席し、日本経済の現状と対策の方向性などについて意見を交わしました。

この中で、民間議員は「新型コロナウイルスによる下げ幅を早期に取り返す経済成長を実現し、来年度中には感染拡大前の水準を取り戻すべきだ」などと提言しました。

これを受けて、菅総理大臣は「感染対策に万全の対策を講じ、社会経済活動との両立を図りながら経済を回復させ、グリーン社会の実現やデジタル改革などにより、社会経済の大きな変革に取り組む」と述べました。

そのうえで「時機を逸することなく、あらゆる手段を総動員し、早期に日本経済を成長軌道に戻していくための対策をしっかり考えたい」と述べ、新たな経済対策をとりまとめる考えを示しました。

また、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指す方針について、菅総理大臣は、地球温暖化対策などに力を入れる企業を投資先に選ぶ「グリーン投資」のさらなる普及などについて、成長戦略会議で具体的な検討を進める方針を示しました。

民間議員 提言「業界再編含め電力産業の構造改革を」

9日の経済財政諮問会議では、経団連の中西会長ら民間議員が、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指す政府の方針を実現するため、「業界再編も含めた電力産業の構造改革が必要だ」と提言しました。

この中で、経団連の中西会長ら民間議員は「脱炭素社会の実現に向けた国際的な産官学の大競争が始まっている」としたうえで、再生可能エネルギーを主力電源とするべきだと表明しました。

ただ、天候によって発電量が大きく変動する太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入には、送配電網の増強や大型の蓄電池の開発など巨額の投資が不可欠なものの、「国内の電力業界は老朽化した発電・送配電設備を更新する投資余力が乏しい」と指摘しました。

そのうえで「エネルギー部門の高コスト構造を打破し、脱炭素化の取り組みを加速する必要がある」として「業界再編も含めたが電力産業の構造改革必要だ」と提言しました。

経団連 中西会長「日本のエネルギー投資は停滞 議論必要」

経団連の中西会長は、政府の経済財政諮問会議に先立って行われた定例会見で、「日本のエネルギー市場の主なプレイヤーは電力会社だが、設備投資の多くは原発の安全対策に使われ、電力会社の実力は弱くなった。イノベーション=技術革新や新しい電力の仕組みの方向性を出すためには、政府に頼るだけでなく、民間のお金もしっかり回るようにやっていかないといけない」と述べました。

そのうえで、みずからの提言について「日本のエネルギーに対する投資は停滞しているという事実認識から出発しないといけない。これまでは規制産業である電力会社がかなりの部分を負っていたが、これができなくなった時にどうするんだという議論は真剣にやらないといけない」と述べ、脱炭素社会の実現のためにも、再編を含めて電力業界の構造改革について議論する必要があるという考えを示しました。