新型コロナワクチン 高齢者や基礎疾患ある人優先接種へ 厚労省

開発中の新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、厚生労働省は、高齢者や基礎疾患がある人を優先的に接種する方針を固めました。一方、妊娠中の女性については、臨床試験のデータがないことなどから、優先接種の対象にするか判断を見送りました。

厚生労働省は、欧米の製薬会社3社との間で、新型コロナウイルスのワクチンの開発に成功した場合に供給を受けることで契約などを結んでいて、来年前半の接種開始を目指しています。

9日は専門家を集めて検討会が開かれ、ワクチンを優先的に接種する順位について協議が行われました。

この中で、医療従事者以外への接種について、まず高齢者を優先し、次に基礎疾患のある人に接種を行う方針が確認されました。

一方、妊娠中の女性については、国内外の臨床試験に参加しておらず、安全性に関するデータがないことなどから優先接種の対象にするか現時点での判断を見送りました。

厚生労働省は、今後どのような基礎疾患がある人を優先接種の対象にするか、学会などの意見も踏まえて検討する方針です。

合わせて政府の分科会は、医療従事者に最優先で接種するかどうかを検討することにしています。

厚労省 国民全員分のワクチン確保の方針

厚生労働省は、国民全員が接種できる量のワクチンを来年前半までに確保する方針で、欧米の製薬会社3社から開発に成功した場合に供給を受ける契約などを結んでいます。

このうち、
▽アメリカの製薬会社「モデルナ」とは2500万人分のワクチンの供給を受ける契約でこのうち2000万人分が来年6月末までに供給されることになっています。

また、
▽アメリカの製薬大手「ファイザー」とは来年6月末までに6000万人分、
▽イギリスの製薬大手「アストラゼネカ」とは来年3月末までに1500万人分、合計で6000万人分の供給を受けることで、それぞれ基本合意しています。

一方、開発中のワクチンに感染や重症化をどれだけ防ぐ効果があるかはまだ不透明で、臨床試験で確認できなかった副作用が実用化されたあとに出てくる可能性もあります。

また、大量のワクチンの接種を自治体がどう効率的に進めていくかも課題となりそうです。

ワクチン10候補 臨床試験の最終段階

新型コロナウイルスのワクチン開発は異例のスピードで進められています。

WHO=世界保健機関のまとめによりますと、11月3日時点で研究が進められているワクチンの候補は200余りにのぼります。

このうち47について実際にヒトに投与して安全性や効果を確かめる臨床試験が始まっていて、10の候補は3段階ある臨床試験の最終段階に進んでいます。

▽アメリカの製薬大手ファイザーなどは、開発を進めている「mRNA」と呼ばれる遺伝子を使ったワクチンについて、「90%を超える予防効果がある」とする暫定的な結果を発表しました。

安全性のデータがそろう11月半ば以降に、緊急使用の許可を申請するとしています。

また、▽イギリスの大手製薬アストラゼネカとオックスフォード大学が共同で開発するワクチンや▽アメリカの製薬会社「モデルナ」とアメリカ国立衛生研究所が開発するワクチンなども臨床試験の最終段階に進んでいます。

中にはロシアのワクチン会社が開発し、ロシアが正式に承認している「スプートニクV」のように国によっては最終段階の臨床試験を終える前に承認しているものもあります。

日本国内では、▼大阪大学の研究者が設立したベンチャー企業「アンジェス」がDNAを使った「DNAワクチン」を開発し、現在、臨床試験を進めています。

このほか、▼東京大学医科学研究所のグループや▼ワクチンメーカーの「KMバイオロジクス」、それに▼大手製薬会社などがそれぞれワクチンの開発に乗り出していて、臨床試験に向けて研究を進めています。