アメリカ大統領選 バイデン氏が激戦州ペンシルベニアで逆転

アメリカ大統領選挙で当選に必要な選挙人の獲得に近づいている民主党のバイデン前副大統領が、開票が続く激戦州の東部ペンシルベニア州でトランプ大統領の得票数を逆転しました。リードするバイデン氏は、集計作業が終わるまで忍耐強く待つよう国民に呼びかけたのに対し、トランプ大統領は票の集計などで不正が行われていると主張して法廷で争う姿勢を強調し、今後、混乱も予想されます。

今月3日に投票が行われたアメリカ大統領選挙はトランプ大統領が214人の選挙人を獲得したのに対し、民主党のバイデン氏は253人を獲得してリードし、当選に必要な選挙人の過半数の270人に近づいています。

残る6つの州では、投票日から3日たった今も開票作業が続いていて、このうち激戦州の東部ペンシルベニア州では、これまでトランプ大統領がリードしていましたが、日本時間の6日午後11時前、バイデン氏が逆転しました。

バイデン氏は、南部ジョージア州でも逆転したほか、西部ネバダ州でもわずかにリードしています。

ただ、いずれの州でも両者の差はわずかで、どちらの候補者も当選を確実にできない状況は続いています。

バイデン氏は、集計が終われば自分が勝利するとした上で、「民主主義は時として忍耐が求められることもある」と述べて、開票を忍耐強く待つよう国民に呼びかけました。

これに対し、トランプ大統領はホワイトハウスで記者会見を開き、「消印がない票や、本人確認ができない票も集計している」などと述べ、郵便投票で不正が行われていると主張した上で、「今後、多くの訴訟を起こすことになる」とさらに法廷で争う姿勢を強調しました。
一方、トランプ大統領は証拠を示さず、記者会見を中継していた全米ネットワークの複数のテレビ局は「大統領は誤った主張をしている」として中継を途中で打ち切る異例の対応をとりました。

開票作業が大詰めを迎える中、今後、法廷闘争などを含めた混乱も予想されます。

トランプ陣営の提訴とは?

トランプ大統領の陣営は、投票日以降、激戦州のミシガン、ペンシルベニア、そしてジョージアで相次いで票の集計の差し止めなどを求めて提訴しました。しかし、裁判所は一部の訴えについて証拠がないなどとしてすでに退けています。

トランプ陣営は4日、激戦州ミシガンで、票の監視にあたる共和党の担当者が郵便投票の集計作業のときに外されたとして、両方の陣営の責任者が立ち会える状況になるまで、すべての集計をやめるよう訴えを起こしました。しかし、州の裁判所は5日、この訴えを退けました。

また、ジョージア州でも、一部の地域で、郵便投票の受け付け時間を過ぎた票が受け付け時間内に届いた票の束に入れられたのを見たという目撃情報があるとして、受け付け時間を過ぎた票が集計されることがないよう、仕分けを徹底するよう求める裁判を4日に起こしました。しかし、地元の裁判所は5日、「受け付け時間以降に票が届いたという証拠がない」 としてトランプ陣営の訴えを退けました。

一方、ペンシルベニア州の郵便投票をめぐってトランプ陣営は、11月3日までの消印があれば6日まで受け付けるとした州の最高裁の判断は不当だと主張しています。連邦最高裁判所は、6日まで受け付けることを合法とした州の最高裁の判断について先月(10月)28日、裁決をはかり、8人の判事の判断が4対4で割れ、その結果、州最高裁の判断が維持されることになりました。

ただ、前々日の26日にトランプ大統領が指名し、議会上院で連邦最高裁判事に承認された保守派のバレット判事は、この裁決には参加していません。

トランプ陣営としては、州の最高裁の判断を不服として連邦最高裁で争うべく、手続きを進めています。

専門家「郵便投票の無効分がポイント」

アメリカの現代政治が専門の上智大学の前嶋和弘教授は投票から2日たっても開票作業が続いていることについて、「郵便投票によって開票作業が遅れることはわかっていた。トランプ大統領が郵便投票について不正だと指摘すればするほど結果が出るのは遅くなる」と指摘しています。

そして今後、勝敗を左右するポイントとして「選挙人が多いペンシルベニア州が重要だ。郵便投票について投票日の3日後まで到着を認めているが、封筒を二重にして送らなければならないといったきまりがあり、最大で10万人分くらいが無効になるとも指摘されている。郵便投票のうち、どれだけ無効とみなされるかがポイントになる」との見方を示しました。

さらにトランプ大統領が各州で票の集計の差し止めを求める訴えを起こしていることについて「すでにいくつかの州で訴訟が却下されている中、トランプ陣営は裁判で戦えるように不正の根拠となる証拠を探しているのではないかと思われる。証拠によって裁判の行方が大きく変わるので、ここ数日の動向がポイントだ」と指摘しました。

そのうえで、「12月8日の選挙人確定の日まで、トランプ大統領の主張でどれだけ裁判が進み、場合によっては決着していくのかが注目だ」と話していました。

激戦州での開票作業の状況は…

開票作業が続く激戦州の東部ペンシルベニア州や西部アリゾナ州など合わせて5つの州の選挙管理委員会の責任者などが5日、相次いで会見を開いたりメディアの取材に応じたりして開票作業の進捗状況について明らかにしました。
▽ペンシルベニア州は、選挙管理委員会によりますと日本時間の6日午後8時の段階でまだ開票できていない郵便投票が16万票あまりに上っています。ペンシルベニア州では、3日までの消印の郵便投票を6日まで受け付けています。


▽アリゾナ州は、5日夜、日本時間の6日午前11時以降、順次開票結果を発表するとしていますが、州内で最も人口が集中している地区の選挙管理委員会の責任者は、地元メディアの取材に対し「まだ27万票の不在者投票と、1万票以上の疑問票が残っており、開票作業は週末まで続く可能性がある」としています。

▽ジョージア州は、選挙管理委員会の担当者が記者会見で「5日中にひととおりの集計が終わるよう努力しているが、票差がかなり小さく、疑問票など、すべての票を集計するための時間も必要だ」と述べました。ジョージア州の州務長官は、ツイッターで、5日午後10時半、日本時間の6日午後0時半の時点で「まだ1万4千票が残っている」としています。
日本時間の6日午後8時の時点で、バイデン氏が917票リードしていて、両候補者の得票率の差は0.02ポイントとなっています

▽ノースカロライナ州は、3日の消印がある郵便投票を12日まで受け付けるため結果は、13日まで確定しないとしています。

▽ネバダ州は、人口が最も集中している地区の選挙管理委員会が会見し「すでに届いている郵便投票の開票作業は、土日までかかる」という見通しを示しました。
ネバダ州では、3日の消印がある郵便投票を10日まで受け付けていて、12日中には法律に基づいて集計を終えることになっているということです。

専門家「トランプ大統領の主張は矛盾」

トランプ大統領が記者会見で、郵便投票で不正が行われていると主張した上で、今後、法廷で争う姿勢を示したことについて、アメリカの司法制度に詳しい駿河台大学の島伸一名誉教授は、「郵便投票については民主党の支持者の票が多いので、その部分について無効にしたいというのが大きな理由だと思う」と分析しました。

その上で、「会見で不正だと主張したことについては根拠を示しておらず、自分がリードしている州ではカウントを打ち切って自分の勝ちとしたい、追いつこうとしている州ではカウントを続けてほしいと主張している。自分が勝つためにどうしたらいいかという点では目的は一貫しているが、主張としては矛盾している」と指摘しました。

そして今後の展開については、「無効を主張する部分について、根拠があるとしても、選挙全体、投票全体を無効にするほど重要なものかどうかということが問題だ。署名がないなど、ささいな誤りがある票についてその根拠を示せたとしても、郵便投票全体を無効にするということにはならないと思う」と述べ、例えば民主党が組織的に郵便投票で不正を行ったといった事実がない限り、郵便投票全体を無効にするのは難しく、選挙結果を覆すまでには至らないのではないかという見方を示しました。