コロナの時代の資格試験

コロナの時代の資格試験
「就職に有利そうだから」
「自分の会社では海外勤務には必須条件なので」
「たくさん持っていれば自慢できる」…
理由はともあれ、資格試験に挑戦した経験があるという方は多いのではないしょうか。ところが、新型コロナウイルスの影響で試験を中止したり、延期したりする動きが相次ぎました。ただ、受験者にとっては、せっかくの努力が水の泡となってしまっては納得できません。このため、主催する側は今後も試験を続けていくための模索を続けています。(経済部記者 佐々木悠介)

資格試験の中止、相次ぐ

こちらの表は、ことし3月から8月にかけて中止や延期になった資格試験です。
いずれも就職や社内の昇進や昇格に役立ったり、不可欠だったりする資格です。

最近では会場を分散したり、マスクの着用などを徹底したりして、試験を再開する動きも出てきました。ただ、スケジュールの変更や人数を制限するなどのケースがあるほか、感染が再び拡大した場合に試験が続けられるのかは不透明です。

年間50万人の受験者を救うには

どうしたらコロナ禍でも試験を確実に実施できるのか、さまざまな試験で試行錯誤が始まっています。
情報処理の技術や知識を認定する「情報処理技術者試験」もその1つです。この試験は、ITエンジニアとして働くうえで必須とされる国家試験で、春と秋に実施され、年間およそ50万人が受験します。

しかし、4月に予定された試験は、新型コロナウイルスの影響で中止。受験者に大きな影響が出ました。

そこで、主催する団体は、ことしの秋以降、一部の試験について方式を大きく変更して実施することにしました。
最大の変更点は、試験日程の分散化です。

新型コロナウイルス対策で重要なのは、「密」を避けることです。受験者どうしの間隔を空けるため、複数の会場を用意することも検討しましたが、一度に何千人も入れる会場を確保するのは簡単なことではありません。

そこで、思い切って「同じ日に試験を実施する」という大前提を見直したのです。会場に一度に入れる数を5分の1程度に減らし、試験も最大で3か月間に分散して行うことにしました。
さらに筆記試験からパソコンを使った試験に切り替えることにしました。問題用紙をそのつど印刷したり配布したりする必要がないため、試験の日程が増えても対応しやすくなります。

主催団体では、どの日程の試験を受けても公平となるよう同じ難易度の試験問題を作成するノウハウを確立し、2年後をめどに完全に新しい方式に移行したいとしています。

情報処理推進機構の倉持和宏部長はこう話しています。
倉持部長
「公平性を担保するための問題の作成や試験環境の整備などの課題もあるが、受験者に受験する機会を提供できるよう努力している。ウィズコロナに対応するため、抜本的な見直しを行っていきたい」

大学生からは“安ど”の声

こうした対応をこれから受験する人たちは、どう受け止めているのでしょうか。大学生の生の声を聞いてみようと中央大学の国際情報学部を訪ねました。
この学部はITエンジニアを目指している学生が多く、在学中に「情報処理技術者試験」を受験します。この資格があると、企業の面接などで有利に働くこともあるとして、入念に準備をして受験するということです。

ことし4月に試験が中止されたことについて聞いてみると…
「事前に準備していましたが何度も受けられるものではないので残念です」
「1回当たりのプレッシャーが大きくなると思います」
やはりその影響が大きかったことを感じました。

一方で、新たな方式での試験については…
「パソコン上でも受験できる機会を得ることができて助かる」
「インターンに間に合う」
「プレッシャーがあったので助かった」
“安ど”の声が多く聞かれました。

「受ける日時によって難易度はどうなるのか」など試験の公平性への懸念もあったものの、コロナ禍でも確実に試験が行われるという安心感があることは非常に重要だと強く感じました。

未来の資格試験とは

不正を防ぎながらインターネットを使って自宅で受験できる技術も生まれています。

都内のIT企業「CBTソリューションズ」は、コロナ禍での資格試験の理想形は、会場に行かなくてもよい“自宅での受験”だと考え、AI=人工知能を活用してカンニングを防ぐシステムを開発しました。
パソコンに小型カメラを備え付け、受験者の様子を監視する仕組みです。事前に受験生の顔写真を登録し、試験中の映像はすべて録画されます。

AIは、受験者の顔はもちろん視線の動き方を詳しく分析します。たとえば、画面から離れたところを見続けると不正の可能性があると判定します。
私も実際に体験し、あえて机の下でスマホを見続けたところ、見事に不正だと見抜かれてしまいました。

また、試験中に別の人と入れ代わることも試しましたが、やはり別人と判定されました。
AIが不正の可能性があると指摘した場合、試験官も動画で確認して正式に不正かどうかを確認します。

このシステムは、販売を始めたばかりの段階ですが、会社にはすでに資格試験以外に学校の入学試験でも導入できないかといった問い合わせが来ているということです。
野口社長
「IT技術を駆使しながら主催者、受験者にとって試験をするのに最適な環境を作り出したい」
さまざまな分野で、新型コロナウイルスと共存していくための模索が広がる中、資格試験でも、柔軟で新しい発想の取り組みが進むことを期待したいと思います。
経済部記者
佐々木 悠介
平成26年入局
静岡局を経て経済部
現在、経済産業省担当