東京都「モニタリング会議」警戒レベル維持も対策の徹底指摘

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する「モニタリング会議」が開かれ、専門家は、感染状況と医療提供体制のいずれも警戒のレベルを上から2番目の表現で維持しました。専門家は、これから冬を迎えるに当たり、暖房を入れていても、こまめに換気するなど、対策の徹底が必要だと指摘しました。

会議では、都内の感染状況について、専門家が4日までの7日間平均は前の週と比べると横ばいだったなどと説明し、警戒のレベルは4段階のうち上から2番目の表現を9週連続で維持して、「感染の再拡大に警戒が必要であると思われる」と評価しました。

そのうえで、日本で暮らす外国人の間でクラスターが発生しているとして、ことばの違いや生活習慣に配慮して、情報提供や支援をすることが重要だと呼びかけました。

さらに、これから冬を迎えるに当たり、暖房を入れていても、こまめに換気するなど、感染予防対策の徹底が必要だと指摘しました。

都の感染症対策の新たな拠点で「専門家ボード」の座長を務める東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は、「これから気温が下がってくると新型コロナウイルスがまた増強する可能性が高くなるので、引き続きしっかりと対策を行う必要がある」と注意を呼びかけました。

一方、医療提供体制については、重症の患者が増えていることなどが指摘され、「体制強化が必要であると思われる」という上から2番目の表現を18週連続で維持しました。

専門家「冬は感染リスク上げる要素多い」

モニタリング会議に出席した国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、寒さと感染拡大のリスクについて「空気が乾くと飛まつが飛びやすくなるのも事実だと思う。さらに、冬は、窓を閉めたままになりがちで換気する機会が減るうえ、寒くなると温かい閉鎖空間に集まって他人との距離も近くなるなど、感染のリスクを上げるような要素が多い」と指摘しました。

そのうえで「リスクを一つ一つ下げていくために、手を洗うこと、マスクの着用、3密を徹底的に避けるなど夏以上に意識的にやることが非常に大事だ」と述べました。

また、日本で暮らす外国人の支援について、「体調が悪い時にすぐ相談できて早く病院に行けるようにつないであげることが大事だ。分かりやすい日本語で伝えるなど、まめな支援が必要だ」と述べました。

一方、都内の重症患者が増加していることについて、東京都医師会の猪口正孝副会長は「医療体制も圧迫してくる可能性がある。引き続き、警戒心を強めて、医療提供体制の確保を考えていきたい」と述べました。

専門家「急速に増加する可能性秘めている」

5日のモニタリング会議の中で示された、都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

東京都は、前回のモニタリング会議から、都外に住む人がだ液によるPCR検査で検体を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けを出した人を除いた数値で分析・評価しています。

今週はこうしたケースが13人いました。

感染状況

感染状況についての分析結果です。

新たな感染の確認は、4日までの7日間の平均が165.4人で、前の週から「横ばい」だったものの「増加比」は106.2%でした。

専門家は「新規陽性者数が高い水準のまま増加比が100%を超えた。このまま続くと、急速に増加する可能性を秘めている」と指摘しました。

そのうえで「気になることは医療機関など施設内でのクラスターが複数発生していることだ」として、クラスターの増加は一気に患者を増やすことにつながるとして、注意を呼びかけました。

今月2日までの1週間で年代別の割合をみると
▽20代が最も多く25.4%
▽30代が19.7%
▽40代が15.9%
▽50代が13.9%
▽60代が8.2%
▽70代が6.5%
▽10代が4.7%
▽80代が3.5%
▽10歳未満が1.4%
▽90代以上が0.8%でした。

65歳以上の高齢者の割合は14.3%で前の週と比べて横ばいでした。

感染経路がわかっている人のうち、家庭内での感染は前の週から5ポイント以上増えて41.5%となり、少なくとも14週連続で最も多くなりました。

また、年代別にみても、80代以上を除くすべての年代で家庭内感染が最も多くなりました。

このほか
▽職場内は16.6%
▽施設内は16.0%
▽会食は7.0%
▽夜間営業する接待を伴う飲食店は2.1%でした。

専門家は「職場や施設、飲食店などで感染して、家庭内にウイルスが持ち込まれる可能性がある。手洗いやマスクの着用、それに3密を避け、テーブルやドアノブの消毒など改めて対策の徹底が必要だ」と呼びかけました。

そのうえで「今後、寒くなってくるので、暖房を入れていてもこまめな換気を徹底することが非常に重要になってくる。1時間おきに窓を開けるとか、小さく開けたままにするなどいろいろ工夫のしようはある」と指摘しました。

さらに、今週も、複数の病院や高齢者施設、大学の運動部の寮、それにスポーツジムでクラスターの発生が報告され、専門家は「感染拡大を防止する対策の徹底が必要だ」と説明しました。

医療提供体制

続いて、医療提供体制です。

検査を受けた人のうち陽性になる人の割合である「陽性率」は、前回の3.5%から上昇し、3.9%となりました。

また、入院患者は、4日時点で1040人で、1週間前、先月28日の時点より89人増えています。

専門家は「入院患者の急増にも対応できる病床の確保が必要な状況に変わりなく、医療機関への負担が強い状況が長期化している」と説明しました。

また、都の基準で集計した重症患者は4日時点で35人で、前回、1週間前より5人増えました。

35人を年代別にみると
▽40代が3人
▽50代が7人
▽60代が7人
▽70代が13人
▽80代が5人

性別では
▽男性が26人
▽女性は9人でした。

専門家は「人工呼吸器による管理が必要な患者が複数入院している医療機関の負担が増えている。重症患者の今後の推移と通常の医療体制への影響に警戒が必要だ」と指摘しました。

また、今月2日までの1週間で都に報告された亡くなった人は9人でした。

9人のうち8人が70代以上でした。