アメリカ パリ協定から正式離脱 地球温暖化対策の国際的枠組み

アメリカは4日、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から正式に離脱しました。ただ、大統領選挙でトランプ大統領と争っている民主党のバイデン氏は協定に復帰する方針を示していて、大統領選挙の結果が温暖化対策の国際的な取り組みにも大きな影響を及ぼすことになります。

トランプ大統領は、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」はアメリカの製造業を制約する不公平な協定だと主張して、去年11月4日、協定からの離脱を国連に通告し、1年後の今月4日に協定の取り決めに従って正式に離脱することになっていました。

国連の気候変動枠組み条約の事務局は4日、イギリスやフランスなどと共同声明を発表し、アメリカが協定から正式に離脱したと明らかにしました。

離脱に先立ってアメリカ国務省は2日、NHKの取材に対して報道担当者のコメントを出し、「アメリカ政府としては、環境を保護しながら経済成長とエネルギー安全保障を促進することを支持する」として、パリ協定が経済成長などの妨げになり得るという立場を改めて示しました。

バイデン氏 大統領に就任すれば協定復帰の方針

一方、アメリカ大統領選挙でトランプ大統領と争う民主党のバイデン氏は、大統領に就任すれば協定に復帰する方針を示しています。

専門家によりますと、アメリカ政府が協定に復帰する場合は、国連事務総長に書簡を送れば30日後に復帰できるということで、大統領選挙の結果が温暖化対策の国際的な取り組みにも大きな影響を及ぼすことになります。

英仏など4か国が声明「離脱は遺憾」

アメリカがパリ協定から正式に離脱したことを受けて、4日、国連の気候変動枠組み条約の事務局と、来年予定されている地球温暖化対策の国際会議COP26の議長国のイギリスやフランスなど4か国が共同で声明を発表しました。

声明では「地球温暖化の影響を軽減し、より環境に優しく、持続可能な未来の実現のために私たちが協力して早急に取り組みを強化しなければならないことは科学が明らかにしている」と述べたうえで「アメリカが本日、パリ協定から正式に離脱したことは遺憾だ。地球温暖化対策を加速させるために、パリ協定の参加国や、世界中のアメリカの関係者やパートナーと協力して、協定の完全な履行に向けて取り組む」としています。

専門家「協定の実効性 損なう可能性」

アメリカの正式な離脱について、気候変動の国際交渉に詳しい東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は「アメリカが1年前に離脱を通告してから、その方向に賛同する国はこれまでなく、今すぐ大きな影響があるわけではない」とする一方、「世界第2の排出国のアメリカが背を向け続けると、協定に対する信頼性や実効性を損なう可能性がある」として、今後アメリカに追随して協定を離脱する国が出る可能性がゼロではないと指摘します。

またアメリカは、気候変動の国際的な支援のための基金である「緑の気候基金」への拠出を止めているということで、金銭的な面での影響は続くとみられるということです。

そのうえで高村教授は、各国が5年ごとに削減目標を国連に提出することになっているパリ協定は、今はその試金石にあたる時期にあるとして、「協定がうまく動くようにアメリカが貢献できるのか、それともそれから遠ざかるのかということが決まってくる。この4年はとても大きい」と述べ、アメリカの離脱が今後、パリ協定の目標の実現にも足かせとなる可能性があると指摘しました。

一方、アメリカ大統領選挙でトランプ大統領と争う民主党のバイデン氏は、大統領に就任すれば協定に復帰する方針を示していて、高村教授は「バイデン候補が勝った場合、アメリカがパリ協定に復帰するだけでなく、アメリカと欧州が2つの軸になって世界の気候変動対策をリードしていくだろう」と話しています。

バイデン氏「再加入する」

アメリカがパリ協定から正式に離脱したことを受けて、大統領選挙でトランプ大統領と争う民主党のバイデン氏は4日、自身のツイッターに「77日後、バイデン政権は協定に再加入する」と投稿し、大統領に就任すれば協定に復帰する方針を改めて示しました。

加藤官房長官「アメリカの脱退は非常に残念」

加藤官房長官は、5日午前の記者会見で「気候変動問題は、国際社会全体が取り組むべきグローバルな課題であり、日本は『パリ協定』を着実に実施していくことが重要という立場だ。そういう観点から、アメリカが協定から脱退することは非常に残念だ」と述べました。

一方「アメリカは世界第2位の温室効果ガスの排出国だが、環境分野などで、イノベーションを通じて先進的な技術の導入や取り組みを行っている国でもある。日本としても、気候変動問題に対処するため、アメリカと協力しつつ、引き続き積極的に取り組んでいきたい」と述べました。