鍵を握る郵便投票

アメリカの期日前投票では決められた投票所などで直接、投票する方法のほか、郵送されてきた投票用紙に記入して返送したり、専用のポストに投かんしたりする郵便投票でも投票できます。

大幅に増加

投票状況を分析しているフロリダ大学のマイケル・マクドナルド教授の「アメリカ選挙プロジェクト」のまとめでは、11月3日の時点で全米で少なくとも6524万人あまりが郵便投票で投票したと推計され、投票所を訪れて投票した人は、3592万人あまりで、期日前投票の投票数としては1億116万人となっています。

これは前回2016年のおよそ5800万人の1.7倍で、投票日も含めた前回選挙全体の投票総数の73.4%にあたるということです。

マクドナルド教授は今回の選挙では郵便投票を含む期日前投票が記録的に伸びているとして、当日も含めた全体の投票総数は過去最多の1億6020万人に上り、投票率も過去最高の67%に達するという見通しを示しています。

要因は郵便投票

その期日前投票が大幅に増加した大きな要因が郵便投票の利用の拡大です。

アメリカでは郵便投票の制度は州によって異なりますが、各種調査によりますと新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、全米の30以上の州で感染の防止対策として郵便投票を利用しやすくする措置をとっています。

具体的にはこれまで仕事や病気などやむを得ない事情がある場合にのみ利用を認めていたのを感染防止対策が理由であれば誰でも利用できるようにしたり、有権者登録をした人は全員無条件で利用できるように緩和したりしています。

また有権者登録をした人全員に自動的に郵便投票の投票用紙を送ることができるようにした州は前回2016年の大統領選挙では3州でしたが、今回は10州と首都ワシントンに広がっています。

増えるトラブル

一方で制度の急な変更や利用者の大幅な増加でトラブルも相次いでいます。

東部ニューヨーク州や中西部オハイオ州では、投票用紙や返信用封筒に印刷された内容に誤りが見つかり、送り直す手続きが取られました。

また激戦州の東部ペンシルベニア州では両陣営の訴訟合戦の末、郵便投票の際、投票用紙を2重に封じるところを2重にせずに返信した「裸の投票用紙」と呼ばれる票を無効とする判断が州最高裁で示され、すでに投票されたものも含め数万票が無効になるおそれが指摘されています。

郵便投票への対応の違い

郵便投票を巡っては民主党のバイデン陣営が新型コロナウイルスの感染対策として郵便投票の積極的な利用を呼びかけていて、郵便投票の消印が間に合っていれば投票日のあとも受け付けるべきだと主張しています。

一方、トランプ陣営は郵便投票では本人確認で問題が起きる可能性があり、期日前と当日と2回投票するなど不正につながると繰り返し主張していて、投票日のあとの受け付けにも反対しています。

相次ぐ訴訟

この結果、郵便投票をいつまで受け付けるかに関して訴訟が相次ぎ、激戦州の中西部ウィスコンシン州では民主党が締め切りを投開票日から6日後まで延長するよう裁判所に求め、いったんは認められましたが、共和党が上訴した結果、連邦最高裁は延長を認めないという判断を示しました。

またミネソタ州では11月10日必着分まで有効としていたのに対し、共和党関係者が投票日の翌日以降に届いた分は無効だとして訴えを起こしました。

これについて連邦控訴裁判所は先月29日になって無効になる可能性があるという見解を示したことから、州当局がこれ以降は郵便投票を利用しないよう呼びかける異例の事態となっています。

全米の訴訟の状況をまとめているウェブサイトによりますと、今月1日の時点で郵便投票の制度の変更などを巡る訴訟は45の州などで328件に上っています。

開票トラブルと長期化

今後、混乱が予想されるのが投票日のあとに到着した票を有効とするのか無効とするのかです。

トランプ大統領は1日、投票日のあとに受け付けるのは問題だという認識を示し、訴訟を辞さない構えを示しました。

各種調査によりますと投票日やその前日の消印を有効として投票日以降の到着を受け付ける州は全米の少なくとも20以上に上っていて、なかには20日後まで受け付ける州もあります。

一方、開票作業に関しては州によって期日前に投票用紙が届いても投票日当日にならないと始められないため、すべての開票結果が出そろうまでは数日から数週間かかるとみられています。

選挙結果は裁判に?

さらに郵便投票の集配を担う郵政公社の態勢の問題点も指摘されています。

郵政公社では経営改革のもと経費を削減するとして、郵便物を仕分ける機械の削減などが進められていました。

この影響で大量の郵便投票の到着が期日に間に合わず、無効になるおそれも指摘されています。

郵便投票で不正が起きると主張するトランプ陣営が訴訟に踏み切れば長期にわたって法廷闘争が続き結果が確定しないおそれも指摘されています。