コロナ ドイツの劇場閉鎖 日本の演出家の新作オペラが公演延期

ドイツでは、新型コロナウイルスの急速な感染拡大を抑えるため、2日から全国で、劇場や飲食店などの閉鎖が始まりました。
日本を代表する演出家の1人、宮城聰さんが演出する新作のオペラも、ベルリンでの公演が延期となりました。

新型コロナウイルスの1日の感染者数が、連日1万人を超えるドイツでは感染拡大を抑えるため、2日から劇場や映画館などが閉鎖され、飲食店も配達や持ち帰りの販売以外は認められなくなりました。

ベルリン国立歌劇場では日本の演出家、宮城聰さんが演出する新作のオペラ「ポントの王 ミトリダーテ」の公演が、11月13日から始まる予定でしたが、劇場の閉鎖で延期を余儀なくされました。

宮城さんはNHKの取材に対して、「きょうまで全力でやってきたので、悔しいとか空虚感ということはあまり感じない」と冷静な受け止めを示したうえで、「いつかは上演されると思いますが、その日までみんながテンションを維持していかないといけないので、そこを信じて、耐えていく、我慢していくという感じです」と現在の心境を語りました。

宮城さんは、静岡県の劇団SPAC=静岡県舞台芸術センターの芸術総監督を務めていて、10月上旬にベルリンに入り、公演に向けた準備を重ねてきたということです。

劇場の閉鎖などの措置は4週間行われ、その後の日程はまだ決まっていないため、宮城さんはいったん日本に帰国するということです。

規制強化に市民の反応は

首都ベルリンでは市民から、さまざまな声が聞かれました。

「今回の措置は適切だと思う。4週間後に感染者数がどうなっているかだ」とか「ウイルスによって生きるか死ぬかを考えればしかたがないと思います」などと一定の評価を示す人がいる一方で、「すでに存続の危機にひんしている業界の人々に追い打ちをかけ、最後のとどめとなるかもしれない」と影響を懸念する声も聞かれました。

また3日から飲食店の店内での営業やイベントの開催の禁止、劇場や博物館の閉鎖など、外出制限が行われるオーストリアでも、首都ウィーンでは市民から、「残念だが人々の気持ちの緩みが、厳しい状況につながってしまったと思う。今は外出制限をした方がいいと思う」などと理解を示す声が聞かれました。

一方、飲食店の従業員は、「飲食店にとっては最悪だ。クリスマスまでに元のように営業ができることを願っている」と、不安な様子を見せたほか、ウィーンの国立歌劇場で歌手として音楽活動を行っているという男性は、「ウィーンほど世界中でコンサートを行っている場所はほかにないだけに芸術活動にとって、とにかく悲しい状況だ」と話していました。