スポーツクライミング競技会 五輪内定の野口が女子リード優勝

スポーツクライミング競技会 五輪内定の野口が女子リード優勝
スポーツクライミングで、国内のトップ選手の実戦不足を解消しようと、東京オリンピックの代表内定選手らを集めた競技会が愛媛で開かれ、女子のリードでは東京オリンピック代表内定の野口啓代選手が優勝しました。
この競技会は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で多くの大会が中止や延期となる中、トップ選手の実戦不足を解消しようと日本山岳・スポーツクライミング協会が開催したもので、愛媛県西条市で観客を入れずに行われました。

競技会には今シーズンのワールドカップの代表メンバーなど男女合わせて34人が参加し、初日の31日はボルダリング、1日はリードが行われました。

女子のリードでは、東京オリンピックの代表に内定している野口選手が安定した登りで決勝でただ1人、最後まで登り切り、優勝しました。
男子のリードでは高田知尭選手が前日のボルダリングに続いて優勝しました。オリンピック代表に内定している楢崎智亜選手は7位でした。

大会では、日本のトップ選手の登りをコロナ禍の海外のファンにも楽しんでもらおうと、日本協会の主催大会では初めて英語のコメントつきで競技の模様がオンラインで配信され、日本代表チームのコーチや競技を終えた選手らが日本の選手の特徴などを英語で紹介していました。

野口「トレーニングの成果が出ている」

女子のリードで優勝した野口選手は「最後のほうに左足の動きが狭くなるパートがあり、今までそういうパートを嫌がって体力を消耗していたが、狭い動きを練習してきて、対応できたのがよかった。2日間を通じてトレーニングの成果が出ていると感じた。さらにトレーニングに身が入る」と手応え十分といった表情でした。
一方、男子のリードで7位だった楢崎選手は「大会前の調整の段階では調子は悪くなかったが、体の動きで上下や前後のタイミングがずれている感じがした。久しぶりの大会なので緊張や集中することで体がすごく疲れた。ただ、こういうことが起きることを体験できたのでよかった」と、反省点を前向きに捉えていました。

野口啓代 東京五輪へ進化証明

「やっぱり身が引き締まる」
去年10月のワールドカップ以来、1年ぶりとなる日本代表の青いユニフォームに、野口啓代選手は、キリッとした表情を見せました。初日のボルダリングは2位、1日のリードは優勝と安定感を示す中、31歳のベテランは、なお進化していることを証明した場面がありました。
初日のボルダリング。コースは“課題”と呼ばれ、決勝は4つの課題が設定されました。このうち、緩い傾斜の壁で「コーディネーション」と呼ばれる手足の連続した動きが求められる課題で、ほかの選手たちが苦戦する中、ただ1人、1回で完登に成功したのが、野口選手でした。

こうした緩い傾斜の壁も連続した動きも「苦手だ」と言います。それでも苦手を克服しつつあるのは、新型コロナウイルスで試合が制限される中、地道に取り組んできた練習の成果です。

野口選手は、中学生の時から実家が経営する牧場の牛舎の一角に整備された父手作りのクライミング用の壁で練習に明け暮れてきました。さらに、ことし5月、実家の敷地内にスポンサーの支援も得てスピード、ボルダリング、リードの3種目すべての壁がそろう練習場が完成しました。

国内随一となったトレーニング環境で、外部のルートセッターに依頼し、緩い傾斜の壁にさまざまな課題を組んでもらったり、3種目のうち強化の遅れていたスピードで日を追うごとにタイムを縮めたりと、オリンピックでの金メダルを見据えた特訓に励んでいるのです。

ことし3月、現役最後の舞台と決めていた東京オリンピックの延期が決まりました。「このまま中止になったらどうしよう、とものすごく不安だった」と、振り返ります。

それから半年余り。自分の原点でもある実家で新旧の壁に向き合っている間に、無観客などかつてとは異なる形ながらスポーツクライミングでも大会が徐々に再開され、気持ちも前向きに変わりました。
(野口啓代選手)
「『オリンピックはいけるんじゃないか』『開催される』と周りが言ってくれるので、それを信じて頑張ろうと思う。これからは一戦一戦が私にとってオリンピックまでのカウントダウン。一課題ずつ大切に登りたい」

コロナの影響が続く中、来年夏までに野口選手が青い代表のユニフォームで戦う機会は限られるかもしれません。それでも、努力の跡と大好きなクライミングへの思いが凝縮された登りが見られそうです。