「認知症カフェ」 新型コロナで“再開踏み切れず”80%超

「認知症カフェ」 新型コロナで“再開踏み切れず”80%超
全国におよそ7000か所ある、認知症の人とその家族が集い悩みを相談できる「認知症カフェ」。厚生労働省などが初めて行った調査で、回答があっただけでも80%を超える認知症カフェが、新型コロナウイルスの感染拡大で再開に踏み切れず、利用者に影響が広がっていることが分かりました。
「認知症カフェ」は、初期の認知症の人とその家族の孤立を防ぎ、心理的な負担を減らそうと、地域や専門家とつながり悩みを相談できる場で、おととし時点で全国に7000か所余り設置されています。

この認知症カフェへの新型コロナウイルスの影響について、厚生労働省は、専門家のグループに委託して全国の自治体を対象に初めて調査を行い、およそ70%に当たる1240余りの自治体から回答を得ました。

その結果、ことし8月末時点で、自治体が状況を把握していたおよそ6000の認知症カフェのうち、83%が新型コロナウイルスの影響で再開に踏み切れていないことが分かりました。

理由については、開催場所が高齢者施設だったため使用できなくなったほか、利用者の多くが80代以上で、飲食も伴うため、感染のリスクを排除できないことを挙げるところが目立ちました。

カフェの休止に伴い認知症の人とその家族に影響があったかについては、23%の自治体が「支障があった」と答え、外出先を失い家にこもりがちになるケースや家族関係が悪化したり認知症の症状が進んだりしたとみられるケースがあったということです。

専門家のグループは、地域差はあるものの早急な対策が必要だとして、コロナ禍でも認知症カフェを持続させるための「手引書」を作り、自治体に配布することにしています。

調査を担当した東北福祉大学社会福祉学科の矢吹知之准教授は「認知症カフェがなくなることで診断に遅れが出たり認知症が進行してしまう側面もある。訪問活動や手紙、電話など、その機能を維持するための手段を考えていく必要があり、コロナの時代に立ち向かっていけるか、まさに試されている」と話しています。

専門家作成の手引書 必要な4つのポイント

専門家のグループが作成した「手引書」では、運営者が認知症カフェの機能を維持するために必要な4つのポイントを挙げています。

▽広報誌や回覧板を使って活動内容やイベントを知らせ、つながりを感じてもらうこと。

▽連絡先がわかる場合には、手紙や電話を活用し、ひと言だけでも声を届けること。

また、▽地域の状況に合わせて定期的に訪問活動をし、相談相手になることも効果的だとしています。

さらに、通信環境やパソコンの有無、それに、操作に慣れていることが前提ですが、外出自粛が長引く場合は、オンラインを使った認知症カフェの開催も選択肢の1つだとしています。

「認知症カフェ」とは

「認知症カフェ」は、高齢者施設や医療機関、それに、各市町村の地域包括支援センターなどで開かれていて、認知症と診断される前の違和感を感じ始めた時期や診断された直後など、介護サービスを受けるまでの「空白の期間」を埋める存在となっています。

国は、平成24年の「認知症施策推進5か年計画」で認知症カフェの普及を掲げ、その後、各市町村の「認知症地域支援推進員」がカフェの開設などの役割を担うことになりました。

今年度末までに全市町村に設置することが目標として掲げられています。厚生労働省によりますと、自治体が把握しているだけで、平成27年に2253か所だった認知症カフェは増加の一途をたどり、おととしの時点で、1412の自治体に7023か所設置されています。

一方で、統一的な設置基準などはなく、人材や運営資金をどう確保していくか、課題を抱えているところも少なくありません。

休止続ける認知症カフェは

東京 葛飾区にある認知症カフェ「ふれんど水もと」も、新型コロナウイルスの感染が拡大した3月に休止を余儀なくされ、いまだ再開に踏み切れていません。

区の委託を受けた社会福祉士などが5年前に開いたこのカフェ。月に1回のペースでお茶会やイベントを開催して、多い時には認知症の人とその家族らおよそ60人が利用していました。

認知症の夫とカフェを利用していた稲葉陽子(71)さんは、夫婦そろって訪れるのが楽しみでした。夫は、カフェに来るとベイゴマをしたりして生き生きしていたと言う稲葉さん。この半年間で物忘れがひどくなるなど夫の症状が進んでいるように感じています。

稲葉さんは「夫の介護をしていると大変なことがたくさんありますが、カフェでは同じ気持ちの人と交流や相談もできたので、帰宅すると夫への接し方も違っていました。こうした場所がないのはつらいです」と話していました。

再開を待つ利用者が多い中、カフェでは、先月の再開を目指していましたが、諦めました。運営に当たっている社会福祉士の重原真理子さんは「認知症カフェは集まってお茶をしたり話をしたりする場なので再開へのハードルは高い。再開するにしても広い部屋を新たに確保し、時間も短くして人数も絞るしかない」と、踏み切れない事情を話していました。

重原さんらは、屋外やオンラインでの再開も模索しましたが、利用者に手紙で意見を聞いたところ、屋外だと暑さ・寒さや周りの目が気になる、インターネットを使えずオンラインでの参加は難しいといった声が寄せられたということです。

重原さんは「1人暮らしの人が特に心配です。認知症カフェのような生き生きできる場が作れず悔しい。再開するかどうかは施設自身で判断するしかなく、迷うくらいならやめたほうがいいと考える施設も多いのでは」と、もどかしさをにじませていました。

再開決めた認知症カフェは

一方、再開に向けて動き始めた「認知症カフェ」もありますが、当事者への支援と感染対策をどう両立させるか、課題は残っています。

4年前からボランティアで認知症カフェを開いてきた東京 新宿区の「えんがわ落合」は新型コロナウイルスの影響で3月にカフェを休止しましたが、先月、試験的に再開しました。

感染対策で、これまで使っていた高齢者施設の部屋が借りられなくなったため、今月は何とか近くの区の施設を確保して開催することにしています。

また、自由参加で30人ほどが集まっていた形式を変更。人数を制限し、より支援が必要だと判断した人に直接声をかけ、8人に絞ることにしました。

代表の栗原千恵子さんは「外出を控えるよう言われ、体調を崩した人が非常に多いと感じました。やはり、ある程度、通いの場や外出の機会があることが大切だと思い再開を決意しました」と話していました。

ただ、3密にならない場所を継続して確保するのは容易ではありません。栗原さんは「10人までしか使えなかったり、段差があったりと、バリアフリーで、かつ、3密を避けられるところがなかなか見つかりませんでした。できれば前と同じ場所で再開したいですが、今はそれが難しいので、比較的近くで通いやすい場を区が確保していただけたら」と話していました。

人数制限によって利用できない人が出てくるのも課題です。参加者の1人で、運営の手伝いもしてきた進藤正仁さん(85)。認知症の予防をかねて毎月、カフェに参加し、趣味のハーモニカの演奏を披露してきました。

「同世代の人が集まるカフェでお互いが知っている歌や共通の話題を話せることに喜びを感じています。外へ出て、話をする、歌を交えて笑う、というのが何せ楽しい。生きがいです」。そう話す進藤さんですが、先月の集いには参加できませんでした。

進藤さんは「以前のような形でカフェが再開してくれれば。楽しいですもん、みんなと会えるのが。またそんな日が来るのを心から願っています」と話していました。