新型コロナワクチン 一般の人たちに接種へ 懸念の声も ロシア

新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、ロシア政府は、世界に先駆け2種類の国産ワクチンを相次いで正式に承認し、首都モスクワでは早ければ来月から広く希望する一般の人たちに接種したい考えです。いずれのワクチンも臨床試験が終了していませんが、すでに医療従事者や学校の教師への接種は始まっていて、広く国民への接種が始まることに懸念の声も上がっています。

ロシアのプーチン政権は、モスクワにある国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所が開発した新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」をことし8月に正式承認したのに続き、10月には国立ウイルス学・生物工学研究センターが開発したワクチンも正式に承認したと明らかにしました。

いずれのワクチンも3段階ある臨床試験が終わっていませんが、「スプートニクV」についてはすでに感染リスクの高い医療従事者や学校の教師への接種が始まっています。

モスクワの医療機関では医師たちがワクチンの接種に訪れ、医師の男性はNHKの取材に対して「まず医師が免疫をつけるべきです。周囲に副作用を訴える人もいないことがワクチンの安全性を十分に示しています」と話していました。

ロシア政府はワクチンの大量生産が順調に進めば、首都モスクワでは早ければ11月から世界に先駆けて接種の対象を希望する一般の人たちにも広げたい考えですが、ロシア国内の専門家からも安全性などを懸念する声が上がっています。
今月行われた世論調査によりますと、ワクチンを接種するつもりだと答えた人は22%にとどまり、44%が接種しないと回答していますが、学校などの教育現場では教師がワクチンの接種を求められるところもあるということです。

ロシアでは実在する検査機関のものとそっくりのPCR検査や、抗体検査の偽の陰性証明書がインターネットで簡単に購入することができ、ワクチンについても偽造の接種証明書が出回ることが懸念されています。

こうした事態が起きれば感染対策を進める上でも混乱を招きかねず、専門家は「ワクチンの接種を強制することは絶対あってはならない」と強調しています。