三菱重工ジェット旅客機「いったん立ち止まる」開発費大幅縮小

三菱重工業は国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット」について、新型コロナウイルスの影響で需要の回復が見通せないため「いったん立ち止まる」という方針を表明し、当面は飛行試験を見合わせて開発費を大幅に縮小することになりました。

三菱重工業は30日、来年度から3年間の経営計画を公表し、子会社の三菱航空機が開発している「スペースジェット」について、新型コロナウイルスの影響で航空機の需要の回復が見通せないため、開発は「いったん立ち止まる」としました。

三菱重工としては、開発費をこれまでの10分の1程度に縮小して1年当たりおよそ70億円、3年間で200億円程度とし、当面は飛行試験を見合わせますが、機体の安全性を担保する国の型式証明を取得するための作業は今後も続けるとしています。

スペースジェットは2008年に事業が始まり、日本の航空機産業を育成するプロジェクトとして期待を集めてきましたが、部品の不具合などでこれまで納入の時期が6回、延期されてきました。

さらに、三菱重工もみずからの業績が低迷していて、これまでのように開発資金を投じるのは難しいと判断したとみられます。

会見で三菱重工の泉澤清次社長は「立ち止まるという判断については大変申し訳ないと思っている。これまでの設計技術の整理や3900時間に上る飛行データがあり、課題も指摘されているので引き続き型式証明の取得に向けた作業は続けていく」と述べました。

航空機の需要の低迷はしばらく続くという厳しい見方がある中、国産初のジェット旅客機のプロジェクトは一層厳しい事態に直面しています。

三菱スペースジェットの推移

三菱航空機が開発する国産初のジェット旅客機、「三菱スペースジェット」は、2008年に事業化され、当初、2013年に初号機を納入することを計画していました。

しかし、開発のトラブルなどで納入の延期を繰り返し、ことし2月には設計の見直しなどで6回目の納入延期を発表。

納入時期は、当初の計画から大幅に遅れ「2021年度以降」にまでずれ込むことになりました。

一方で、三菱航空機は機体の安全性を担保する国の「型式証明」を取得するため、アメリカでの飛行試験を進め、ことし3月には愛知県内で最新の機体での試験にも成功。実用化に向け、開発は最終段階に入っていました。

しかし、そのやさき、新型コロナウイルスが航空産業を襲います。アメリカでの飛行試験は中断を余儀なくされ、航空機の需要は消滅。みずからの業績悪化にも直面していた親会社の「三菱重工業」は、ことし5月、今年度のスペースジェットの開発費を、昨年度の半分程度にあたるおよそ600億円に減らす方針を明らかにしました。

さらに三菱航空機の従業員を半数以下に削減するなど、開発体制を大幅に縮小する方針も決めました。

しかし、その後も世界的な感染拡大は収まらず、航空機の需要の見通しが一段と不透明になる中、国産初のジェット旅客機のプロジェクトは厳しい事態に追い込まれていました。