密談は庭を散策しながら? 国際会議の“京都モデル”とは

密談は庭を散策しながら? 国際会議の“京都モデル”とは
古くは、平成9年に開かれた地球温暖化防止の国際会議「COP3」。去年は国際博物館会議やユネスコの観光に関する会議。来年は国連の犯罪防止刑事司法会議。京都は、“日本文化を堪能できる都市”を売りに国際会議の誘致を進め、去年は5年前の2倍となるおよそ400件と、過去最多を記録しました。しかしことしは一転、多くが中止や延期、オンライン開催となり、2月末以降、ゼロのままです。それでも、新型コロナと向き合いながら国際会議の誘致を進めていく。京都市などが打ち出したのは、地の利と文化の利を生かした“京都モデル”です。(京都放送局記者 海老塚恵)

オンライン開催には限界も

ことし9月に京都で予定されていたレーザー分析に関する国際会議も、オンライン開催となりました。
京都行きを楽しみにしていた海外からの参加者に、せめて伝統文化を疑似体験してもらおうと、地元の旅館支配人が祇園の街を案内するオンラインツアーや、お座敷で芸妓が踊りを披露する生配信もプログラムに組み込まれました。

研究者たちには好評でしたが、主催者は「会議の合間の休憩やレセプションなどで、ふだん接することのない研究者と話をすることで、新たなコネクションが生まれたりアイデアがわいたりする。リアル開催の体験とは代えがたい」と話していました。

数百人、数千人規模の国際会議は、宿泊、飲食、観光、交通、農業、水産業といった多様な業種への経済効果が期待できます。

「世界トップクラスの開催地」を掲げる京都。開催件数は年々右肩上がりで、去年は過去最多のおよそ400件と5年前の2倍にまで増え、会議で訪れた人も、海外からのおよそ3万2000人を含め、19万4000人に上りました。
しかし、ことしは1月と2月に39件が開催されただけです(オンライン開催などを除く)。オンラインの会議は、議論を補うことはできても、経済効果までは期待できません。

国際会議の新しい在り方を探る“京都モデル”

やはり集う意味がある。動き始めたのは、京都で国際会議の開催や誘致を担う「京都文化交流コンベンションビューロー」です。

コロナと向き合いながら、京都で国際会議を開催するために何ができるのか。関連業界の代表などとの議論を踏まえて提案したのが、感染対策に配慮した新しい会議の在り方「京都モデル」です。
感染対策を徹底して安全性を担保する、かつ、より魅力的な開催方法を提案する。この2つを同時に満たそうというものです。

会議の出席者や運営スタッフなどが接触する頻度を減らすため、基本的な対策を盛り込んでいます。
・出席者の入退場の時間をずらす
・受付を通さず出欠をオンラインで登録・管理する
・会議資料などを電子化する
こうした対策のどこが「京都」なの?その答えは、京都だからこそ実現する会場選びにあります。
「京都市内各地にある世界遺産の寺や神社などを会場に」

コンベンションビューローの丁野良太さんは、再来年に京都で「国際膵臓学会」が予定している会議の事務局メンバーが視察に訪れる機会にあわせて、「京都モデル」の提案を兼ねて同行することにしました。

どのようなニーズがあり、どのような課題があるのか、生の声を聞くためです。

1.基調講演は屋外で(京都市京セラ美術館前)

京都モデルの柱は、できるだけ密を避けること。

京都市京セラ美術館では、建物正面にある広場の開放的な空間で基調講演やレセプションなどを「屋外開催」することを提案しました。
れんが造りの和洋折衷の建物は、国の登録有形文化財に指定された重厚な造り。広場のすぐそばには、平安神宮の赤い大きな鳥居がそびえ立ちます。

この場所でピアノのコンサートなどが催された実績や、密を避けて屋外で開催する魅力について説明を受けると、国際膵臓学会のメンバーたちは「1人2メートルずつソーシャルディスタンスをとったら何人入れるのか知りたい」と、関心を寄せている様子でした。

2.密談は庭を散策しながら(平安神宮)

美しい庭も、絶好の会場になります。

平安神宮で案内したのは、国指定の名勝となっている庭園です。国際会議では、真の交渉は会場の外で行われ、真の情報は会場の外で得られる、と言います。

密を避けて外へ。大きな池を囲む美しい緑の中を散策しながら相手と話をすれば、より大きな成果を得られるかもしれません。

3.レセプションは世界遺産で(二条城)

「世界遺産でレセプション」も、京都の強みです。

二条城の敷地内に、テーブルに料理を並べ、日本酒やワインを楽しんでもらう。二条城が大政奉還の舞台となったことを知らなくても、色鮮やかな唐門を仰ぎ見ながら食事ができれば、外国人はきっと満足してくれるーー国際膵臓学会のメンバーもそう感じたようです。
竹山教授
「京都の魅力というのは、ひいては日本の魅力ですから、いろいろな会場を視察しています。医療従事者の会がクラスター発生の原因になることは絶対許されません。季節的なことはありますが、屋外も使ってできるだけ密を避け、細心の注意を払って開催したいと考えています」

京都全体を会場に

例えば、初日は寺で、2日目は神社で、3日目は城で。

京都市全体を会場ととらえて会場の選択肢を増やしていくことが、「京都モデル」普及の鍵になるーーコンベンションビューローは、京都モデルの改良を重ねていくことにしています。
丁野さん
「直接、顔を合わせ意見交換をする中で、新しいネットワークが生まれる効果がありますし、それを楽しみにしている方がおられます。実際に候補地を視察して聞かせてもらう声は、私たちが京都モデルを展開し実践していく中で、力強い支援の声にもなると考えています」
「COP3」の会場となった国立京都国際会館は、ホールに一度に収容できる人数をこれまでの2倍、最大5000人に増やすため、拡張工事を計画しています。

「京都モデル」はコロナとつきあいながら国際会議を開くための提案ですが、その過程で魅力的な屋外会場での実績が積み重なれば、コロナ後には屋内会場と組み合わせた“ハイブリッド”な京都モデルが生まれるかもしれません。
京都放送局記者
海老塚 恵
平成30年入局
京都府警を担当するかたわら、国際会議やオーバーツーリズムの問題なども取材
9月から丹後舞鶴支局