新型コロナ 政府の分科会 歓楽街での感染対策 PCR検査など議論

新型コロナウイルス対策を話し合う政府の分科会が開かれ、接待を伴う飲食店が集まる歓楽街での感染対策や、自費で受けるPCR検査のあり方などをめぐって、意見が交わされました。

分科会の会合には、西村経済再生担当大臣や田村厚生労働大臣が出席しました。

会合では、接待を伴う飲食店が集まる歓楽街での感染対策について、ワーキンググループがまとめた報告書の案が示され、意見が交わされました。

これについて、西村大臣は、「感染が広がる前から事業者と信頼関係を作り、気軽に相談できる態勢を構築しておくことが大事だ。また、感染者が増えてきた場合、地域や業種を絞って営業時間の短縮や休業の要請をすることも重要だと分析されている」と述べました。
また、会合では、入国制限措置の緩和や自費で受けるPCR検査のあり方なども議論され、田村大臣は、「自費で行うPCR検査を納得して受けてもらうための方法を議論してもらっているが、オープンデータ化して価格や精度がどうなっているのかを開示したり、陽性が出た場合の対応を示したりすることを考えている」と述べました。

西村経済再生相 “歓楽街での感染対策 地方でも”

西村経済再生担当大臣は、記者会見で、歓楽街での感染対策について、「地方都市の繁華街でもクラスターが見られており、今回まとめた対策を全国知事会や市長会、町村会などと共有したい。また、ワーキンググループの先生方には、今後、冬の感染対策を含め、地方自治体への指導やサポートに当たっていただければと思う」と述べました。

また、西村大臣は、分科会で、外国人が集まる場でのクラスター対策を求める意見が出されたとして、各地の外国人向けの相談窓口と連携し、感染防止策の周知を図る考えを示しました。

自費検査の考え方示す

29日開かれた政府の分科会では、新型コロナウイルスの検査の考え方についても取りまとめられました。

政府の分科会ではことし7月に検査の考え方を示し、症状がある人や濃厚接触者など感染リスクが高い人については迅速な検査を優先するとし、それ以外の人については自費で検査を受けることなどが示されていました。

これについて29日の分科会では、最近、仕事や出張などのために自費で検査を受ける人が増えてきていることなどから、新たな考え方が公表されました。

この中では、症状が無く、感染のリスクも高くない人に対する検査は広く一般に推奨されるわけではないとした上で、個別の事情などで検査を受ける際には検査の内容や注意事項を理解しておくことが重要だとしました。

そして、こうした人が検査を受けるメリットとして、▽気がついていない感染者を見つけ出し、適切な対応をとれること、▽陰性の場合は、その時点での感染の可能性は低く、安心感が得られること、そして、▽海外渡航や興業などで陰性であることを示すことができることなどを挙げました。

一方、留意する点として▽感染している確率の低い人に検査をすると一定程度、誤った結果が出てしまうことや▽広い地域で一斉に何度も検査するのは極めて難しいこと、それに▽国際的にも無症状の人に広く検査を行って感染制御に成功したという科学的な根拠がないことなどを挙げました。

その上で、分科会の見解として、海外渡航をする場合や、興業を行うなどの事情で自費で検査を受ける場合は、▽検査機関が、費用や陽性が出た場合の対応など適切な計画を立てておくことや▽質を確保すること、それに▽検査を受ける人が検査の内容や注意点などを十分に理解しておくことが重要だとしました。

分科会の尾身茂会長は「検査というものに、多くの人たちが期待しているのは確かだと思う。民間検査も広がってきているが質や価格が適正なのかなど検査を受ける人がしっかりと理解をすることが重要だ。経済活動を進める上で検査が必要な場面がこれからも増えると思うので、どんな場合に検査を受けることが妥当なのか分科会としてもさらに議論していきたい」と述べました。

クラスター対策強化を提言

新型コロナウイルスの感染者の集団=クラスターが各地で発生していることから、政府の分科会は、大規模なクラスターの発生を防ぐため、クラスター対策の強化を国に求める提言をまとめました。

提言では、クラスター対策が遅れる理由として▽歓楽街などで、調査が難航して濃厚接触者の確認ができないことや▽無症状や軽症者が多い若者や一部の外国人のコミュニティーなどでクラスターが発生すると把握が難しいことなどを挙げました。

その上でこうした課題に対応するため、▽歓楽街で関係者が気軽に相談や検査ができる環境をつくるなどの対策を推進することや▽早期にクラスターの発生を検知できる体制の強化、▽外国人など情報の届きにくい人たちへの情報提供を行うこと、それに▽クラスター対策に当たる保健所や医療機関への支援を行うことや▽これまで効果があった対策の事例を集めて共有することといった対策を政府に求めました。

会合のあとの会見で分科会の尾身茂会長は、「クラスター対策では、なるべく早く発生を検知して対応することが大切だ。検査で確定していなくても医療機関で発熱患者が増えているなど、いつもと違うことが起きた場合には、すぐに行政と情報共有することが早期発見の鍵になると考えている」と述べました。

尾身会長「水際対策 現地の情報収集必要 国内対応も同時に」

政府の分科会の尾身茂会長は、29日の分科会のあとの記者会見で、海外からの入国制限の緩和について、「水際対策では、海外各国の感染状況の把握が極めて重要で相手国の公表している情報をただうのみにするのではなく、大使館などを通じて現地の詳しい情報を収集することが必要だ。また、海外の人が入国する際には日本の感染対策について伝えると同時に入国してからも万が一体調が悪い場合などに相談できるよう専用の窓口やコールセンターをつくるなど、水際と国内での対応を同時に進めていくべきではないか」と述べました。

尾身会長「寒い時にどう換気するか 極めて重要な問題」

また、政府の分科会の尾身茂会長は、北海道や東北などの北日本でクラスターの発生などが相次いでいることについて、「北部から気候が寒くなってきて、感染対策として重要な換気をしづらくなってきている。寒い時にどのように換気をするかはこの冬を乗り越えるために極めて重要な問題だ。分科会の専門家として知恵を絞って議論し、どんなことが提言できるのか考えたい」と述べました。