ファンなら買わないで 「鬼滅の刃」偽物被害どう防ぐ?

ファンなら買わないで 「鬼滅の刃」偽物被害どう防ぐ?
記録的なヒットを続ける「鬼滅の刃」。そのブームの陰で横行しているのが偽物グッズや海賊版です。
「ファンなら買わないで」
関係者やファンからの悲痛な声も聞こえる中、いま現場で何が起きているのか取材しました。
(ネットワーク報道部 記者 田隈佑紀)

炭治郎のニセモノが…

「鬼滅の刃の海賊版や、グッズの偽物が横行している」
9月下旬、こんな情報を関係者から聞きました。

早速ネット通販などのサイトを調べてみると、確かに、登場人物の炭治郎などをデザインした、きちんと許可を得ているのか不明なグッズがあふれかえっていました。
この時はちょうどコミックスの累計発行部数が1億部を突破することが発表され、業界が沸き返っている頃でした。

久しぶりのブームに水を差すような動きが気になり、取材を進めていると、まもなく全国で警察による摘発が相次ぎました。
「鬼滅の刃」の偽物のフィギュア、キーホルダー、それに海賊版のDVD…。

無許可で販売したとして著作権法違反などの疑いで警察に摘発されたのは、9月から10月にかけて、わかっているだけで全国で7件に上りました。

なぜ偽物や海賊版が横行してしまうのか、取材を進めていくと、あるネット通販のサイトにたどり着きました。

海賊版に“おすすめ”タグ

アマゾンに出品されていたのはアニメ「鬼滅の刃」の海賊版DVDです。

国内の正規版は全26話をそろえるとおよそ7万円になりますが、この海賊版は「新品」でおよそ1万円前後と、不自然に安い価格がつけられていました。

一方、購入した人などが評価を書き込むレビューは200を超え、多くの感想が残されていました。

「安く買えた」とか「お得感があった」といった感想のほか、中には海賊版と認識しながら購入したとみられる書き込みも複数ありました。
さらに関係者によると、この海賊版DVDには一時、こんな表示が出ていたといいます。

「Amazon’s Choice」

アマゾン側が「評価が高く、お求めやすい価格の商品」としておすすめするタグです。

結果として、一時的とはいえ、消費者に誤った印象を与える状況になっていました。

通販サイトやフリマアプリは、偽の商品を削除したり、不正なアカウントを閉鎖したりといった対策をとっているということですが、それでも次々と出品される偽物に十分に追いついていないのが現状です。

削除依頼も… 対応に追われる企業

偽物の横行に企業はどのように対応しているのか、鬼滅の刃の漫画を出版する集英社を訪ねました。
「これらはすべて無許可で販売されている商品です」担当者が見せてくれた通販サイトやフリマアプリには、鬼滅の刃のキャラクターがデザインされたバッグや財布、シールなどのグッズの数々が出品されていました。いずれも許可なく販売されているものだということです。

最近はハロウィーンを前にキャラクターを模した衣装の出品も増えているといいます。

主にサイトを見た人などからの通報を受けて連日、確認作業を行い、そのつど削除依頼を行っているということですが、非正規品の出品は後を絶たないということです。

集英社で権利侵害対策を担当する冨重実也さんは、次のように話します。
冨重さん
「自分で作って使用する分には問題ありませんが、許可なくキャラクターやロゴを使用して販売した場合は、著作権法違反や商標法違反に問われる可能性があります」
「人気作品が現れては模倣品を作り多額の収益をあげる悪質な業者もいますが、最近ではフリマアプリなどの普及で、売る人も買う人も軽い気持ちでやってしまう人が増えているのを感じます」
さらにいま危機を感じているのが、偽物と疑われる海外からの輸入品の急増だといいます。
冨重さん
「税関からの問い合わせで、偽物かどうか鑑定したのが、去年は1年間で20件くらいでしたが、ことしは先月末の時点で『鬼滅の刃』だけで100件を超えています。非常に危機感を持っています」

「根元から絶つ」海外拠点摘発の動きも

流通と水際の対策だけで偽物を食い止めるのはなかなか難しいのか…と思い始めていたところ、水面下で新たな対策が進んでいることがわかってきました。

関係者によると、この夏、中国で偽のフィギュアを製造する拠点が現地当局に摘発され、「鬼滅の刃」関連を含む数万点の偽物が押収されたということです。

この摘発に向けて、「鬼滅の刃」に関連する権利を持つ日本企業と現地の調査会社が連携して、当局に働きかけていたということです。

この中では、調査会社が製造拠点の場所や、偽物を製造している証拠を独自に集めて、情報提供していたということです。

偽物を根元から絶つため、海外の法執行機関と連携していく、そんな抜本的な対策を迫られる日本企業の姿が見えてきました。

日本のコンテンツ守るため 国際連携を

「個々の企業の取り組みだけでは限界があり、国を挙げた国際的な連携が欠かせません」
そう話すのは、海賊版対策などに取り組む「コンテンツ海外流通促進機構」の代表理事、後藤健郎さんです。
「鬼滅の刃」関連の摘発などをみても、海賊版DVDの輸入元はマレーシア、フィギュアの製造拠点は中国、日本からのアクセスの多い漫画の海賊版サイトは主にベトナムのサーバーが使われるなど、不正の拠点となる場所は世界中に広がっています。
後藤代表理事
「海賊版業者は、著作権の意識の甘い国、自分たちが安全な場所にいて、取り締まりが強化されたらまた別の国に逃げるというイタチごっこが続いています。著作権に甘い国に対しては、しっかりとした証拠を提示して『あなたの国の誰それが罪を犯している。取り締まってください』という確たる証拠を提出するということが必要です。政府、民間、一丸となってその対策に注力すべきだと思います」

「鬼滅の刃」に続くヒット作を生むために

そこまでして、何とか日本のアニメや漫画などを偽物の被害から守りたいという思いはどこから来るのか。改めて集英社の担当者に聞きました。
冨重さん
「ヒット作が誕生したときに、ファンの方々が応援したいとその作品の商品を買っていただくことで、より新しい作品や、『鬼滅の刃』に続くおもしろい作品を世の中に生み出すための源になっていきます。さらには便乗した商売をされることで、コンテンツ産業の弱体化にもつながりかねません。大好きな作品だからこそ、その商品を買いたいという気持ちがあると思いますので、お金が原作者などに回るように応援していただくためにも、正規品の市場は大事だと思います」

私たちにできることは

「好きな作品のグッズが欲しい」
ファンとして当然のことですが、もしそれが偽物・海賊版だったら、作り手の権利を侵害する行為に手を貸すことにもなりかねません。

最近では一目で不正なものと見分けがつきにくい商品があり、難しい状況になっていますが、不正な市場は買い手がいて成り立つものでもあります。

「鬼滅の刃」のような作品を将来も楽しめる環境をつくるため、私たちひとりひとりが偽物や海賊版に手を出さない心がけが必要だと、改めて感じました。