新型コロナ 感染者集団「クラスター」の典型例は?

年末年始に移動などによって新型コロナウイルスの感染を拡大させないために、休暇を年末年始の前後にも加えて人が集中する機会を分散できるよう政府に求める提言を政府の分科会がまとめました。

そのうえで政府が民間企業と連携して旅行は、時期や場所などを分散して、小規模なグループで楽しむことを推進するとともに会食の機会が増える年末年始に向け、クラスターが発生している典型的な場面を具体的に示し、感染リスクを下げながら会食を楽しむ方法について、発信するよう求めました。

感染者集団「クラスター」が発生した事例とは?

23日の会合では、全国各地で発生した感染者の集団=クラスターについて、国や専門家が行った分析や12の自治体の担当者へのヒアリング調査などの結果が報告され、この中では実際にクラスターが発生した事例を参考に具体的な場所や状況などのイメージとして14の例が示されました。

このうち、接待を伴う飲食店で起きたクラスターの場合は、発症日の前後に複数の店を訪れた客からそれぞれの店の従業員やほかの客などに感染が広がるケースが紹介されました。

感染は、店にとどまらず、客の家族や一緒に車に乗った人、それに職場にまで次々と感染が広がっています。

こうしたケースに対応した自治体の担当者からは、原因として、
▽マスクをせずに長時間の接待があったことや、
▽ガイドラインが守られていないケースがあったこと、
それに
▽感染が分かってからも店が客を把握しておらず、注意喚起ができなかったことなどが挙げられたということです。

また、ダンスクラブなどでのクラスターについては自治体の担当者から、大音量で音楽が流れていたため、大声での会話があったことなどが原因の1つとして指摘されたということです。

大学生の懇親会に関連したクラスターでは、3月下旬から4月上旬の卒業の時期に、感染した学生が、次々と飲み会や交流会に参加することで感染が広がっていくイメージが示されました。

この時期、短期間に集中的に飲み会が行われたことが原因とみられ、自治体の担当者へのヒアリングでは、
▽感染拡大の早期把握や
▽大学側と連携した対応などが必要だという声があったということです。

さらに、訪問介護を通じたクラスターでは家族から感染したスタッフから、在宅介護の利用者や別のスタッフなどに感染が広がったケースが示されました。

自治体の担当者からは原因として、
▽入浴の介護をする際に利用者が補聴器を外すため、スタッフがマスクを外して大きな声で話しかける必要があったことや
▽人手不足から、スタッフが体調不良でも介護を続ける環境があったことなどが指摘されたということです。

会合のあと会見を開いた分科会の尾身茂会長は「人々にクラスターで感染が拡大する具体的な例を知ってもらい、リスクを避ける行動をとってもらうことが大事だが、合わせて保健所などの行政機関や医療機関でクラスターの発生を早期に見つけて介入し、感染の連鎖を防ぐことも極めて重要だ。この2つの側面を感染対策の両輪として、進めていってもらいたい」と述べました。

感染リスクを下げる方法は?典型的な「5つの場面」で注意を

政府の分科会は飲酒を伴う懇親会など、会食を通じたケースが多いため、感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫も示して注意を呼びかけています。

分科会では、感染リスクが高まる典型的な場面について、
▽「飲酒を伴う懇親会」、
▽「大人数や長時間に及ぶ飲食」
▽「マスクなしでの会話」、
▽「狭い空間での共同生活」
▽「居場所の切り替わり」の5つにまとめて示しました。

このうち、「飲酒を伴う懇親会」については、
▽飲酒をすると気分が高揚して大きな声になりやすく、
▽区切られている狭い空間に大人数が滞在したり、
▽回し飲みや箸などを共有したりすることで感染リスクが高まるとしています。

また、「大人数や長時間に及ぶ飲食」については、接待を伴う飲食や深夜のはしご酒などでは、短時間の食事に比べて感染リスクが高まり、たとえば5人以上の飲食では大声になって飛まつが飛びやすくなるとしています。

さらに、マスクなしで近距離で会話をすることで飛まつやマイクロ飛まつによる感染リスクが高まるほか、車やバスで移動するときの車内での会話にも注意が必要だとしています。

そして、「狭い空間での共同生活」は、長時間にわたり閉鎖空間が共有されるため、感染リスクが高まるとしていて、これまでにも寮の部屋やトイレなどの共用部分での感染が疑われる事例も報告されているとしています。

最後に「居場所の切り替わり」として、休憩時間に入ったときなどには気が緩んだり、環境が変化したりして、感染リスクが高まることがあるとして、休憩室や喫煙所、更衣室での感染が疑われる事例が確認されているとしています。

その上で分科会は、会食の際に感染リスクを下げる工夫についても示し、飲酒をする場合には
▽少人数・短時間で、
▽なるべく普段一緒にいる人と、
▽深酒は控え、適度な酒量で楽しむことを挙げています。

また、
▽席の配置はなるべく正面や真横を避けて斜め向かいにすることや、
▽会話をするときはなるべくマスクを着用し、フェイスシールドやマウスシールドはマスクに比べて感染防止の効果が弱いことに留意することが必要だとしています。

分科会の尾身茂会長は「行動に関わる人々の意識を変えるということが、感染拡大を防ぐうえで非常に重要だということがこれまでの分析でもわかってきている。政府には、より多くの人に伝わるよう、わかりやすくメッセージを発信してもらいたい」と話しています。