支援策でも線引き 苦境が続く“夜の街”

支援策でも線引き 苦境が続く“夜の街”
Go ToトラベルやGo Toイート、それに地域ごとの商品券。
新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済を活性化させようとさまざまな対策が始まっています。おかげで一息ついた、仕事が戻ってきたという人がいる一方で、取り残される人たちも。
取材の始まりは、ある自治体が発行する商品券への疑問の声。どんなに感染予防の対策をしても、いわゆる“夜の街”では利用対象から外される店があるというのです。
(長野放送局 記者 安藤公彦・古川幹子/ネットワーク報道部 記者 林田健太・大窪奈緒子)

スナックやバーもOKのはずが…

コロナの影響で落ち込んだ地域経済を盛り上げようと各自治体が発行しているプレミアム付き商品券。

このうち長野市の「ながのビッグプレミアム商品券」は購入金額に50%が上乗せされるお得感から、今月1日の購入の申し込み開始以降、早くも5万5000世帯以上から申請があったといいます。
この商品券、さまざまな店で使うことができ、スナックやバーでも使えるルールのはずなのですが…。
ある店を訪れてみると、電話で残念そうに話すお店のママの姿が。
「対象外みたいなんです…」
話を聞くと、風俗営業法いわゆる風営法に基づく営業許可を受けている店は対象外とするルールで、客は商品券を利用できないのだとか。
「ちゃんと感染対策ができてるところは、商品券を利用する店としての登録が認められるよう差別なくやってほしい。今まで税金もしっかり払ってきているわけですし、そのへんはやっぱりおかしいんじゃないかなって疑問に思います」

どこが違うの?なんでダメ?

実はスナックやバーの中には、風営法の営業許可を得ている店とそうでない店があります。

許可が必要かどうかは、接待を行っているかどうかや店内の明るさなどで基準が設けられていますが、あいまいな部分があって同じような店でも許可を受けていたり受けていなかったりするのです。
長野市によると商品券が利用できる店の一覧には「スナック、バー」の業種で今月20日現在56店舗が掲載されていますが、これと同じぐらいの数の店が風営法を理由に除外されたということです。

長野市の担当者はスナックやバーが大変な状況にあること、風営法の運用があいまいだということも認識したうえで、速やかに事業に乗り出す必要があり、新型ウイルスと関係ないこれまでの商品券事業と同じ基準をそのまま用いたといいます。
長野市の担当者
「商品券の事業は過去にもやっていますが、過去と同じような基準でやらせてもらっています。感染症対策をとっているとか、飲食店とスナックと何が違うんだというところはあるかと思いますが、市民の皆様の社会通念上といいますかそういうのも考えると、税金を使う事業になりますので理解を得られるかどうかが、1つの線引きになると思います」
しかしこの線引きに、スナックやバーなどで作る組合は納得がいかないと訴えます。
長野県社交飲食業生活衛生同業組合 森田義一理事長
「新型ウイルスの影響で苦しんでいるのはどの店も同じで、風営法だけをもとに対象店舗を線引きされるのは納得できない」
こうした疑問の声をニュースで伝えたところ、長野市は基準を見直して風営法の許可を受けたスナックやバーなども対象にすると発表しました。
長野市 加藤市長
「過去の商品券事業と同じ基準にしていたが、経済状況が全く異なり商品券への期待も大きい中で除外された店の人には残念な思いをさせてしまった。できるだけ多くの店に恩恵が行き届くことが大切だ」

“線引き”ほかの支援策でも

こうした線引きは長野市ではなくなりましたが、他の支援策でもあります。

例えば、さいたま市が発行するプレミアム付き商品券は、1万円で額面1万2000円の商品券が購入できます。
スナックやバーも利用対象としていますが、風営法の許可を得ている店は除外しています。
さいたま市の担当者
「税金を使って発行する商品券なので、市民の理解が得られることが前提です。しかし、対象にふさわしい店かどうか1店舗ずつチェックするのは現実的ではなく、スピード感をもって実施できない可能性がある。このため過去に商品券を発行した時と同様に、風営法の許可を得ている店を一律に対象外としました」
一方、国が実施している「Go Toイート」。
こちらもキャバクラやショーパブ、ガールズバー、ホストクラブ、スナック、接待を伴う場合の料亭は利用対象に含まれていません。
農林水産省の担当者に聞くと、業態で対象外としたわけではなく、あくまで感染症対策が判断基準とのこと。新型コロナウイルス対策を検討する政府の分科会の議論を踏まえ除外を決めたということです。

しかし、接待を伴う飲食店では感染リスクの指摘を受けて対策に力を入れているところもあります。そうした努力とは関係なく、風営法の許可の有無や業態で一律に線引きされるケースがあるのです。

“夜の街”働く女性たちは深刻な現状

こうした状況を知って気になったのは、そこで働く人たちはどうしているのかということ。

都内のナイトクラブなどで働く女性たちの団体「日本水商売協会」の甲賀香織代表理事を訪ねました。

コロナの影響が広がる中、甲賀さんはこれまでも業界にはシングルマザーも多くセーフティーネットとしての機能があること、多くの失業者が出てしまうことなどを訴えていました。
苦境は今も変わっていないといいます。
日本水商売協会 甲賀香織代表理事
「“夜の街”として名指しされた新宿・歌舞伎町では、今でも客が1日に1組とかゼロという店もあります。銀座の老舗の高級クラブもいくつか閉店すると聞きました。この業界はシングルマザーで生活のために働くという人も多いですが、辞めて実家に帰らざるをえない人もいます。またうつ病になる人が急増している印象です。休業手当がもらえず、『来月から給料がゼロになる』と言われ、先が見えなければそうなってもしかたない」

本当に必要な支援とは

国や自治体の支援策から除外される店があることについて聞くと、支援策の恩恵が受けられないこと以上の弊害があると話してくれました。
日本水商売協会 甲賀香織代表理事
「融資にしても補助金にしても、いつも対象から省かれている。だからもともと期待していない、自分でなんとかするという考えの人も多いんです。ただ今は、それすら邪魔されてかなわないような状況。国は感染リスクを考慮したというけれど、どこにいても三密の条件がそろえば危険なのは当たり前。それなのに風評被害と実際のリスクがごっちゃにされ夜の街は危ないという印象を植え付けられたと感じています」
こうした状況を変えていくためには、国や自治体が実態調査をして感染リスクを科学的に検証し、どうすればリスクを下げられるのか指標を示すべきだといいます。
日本水商売協会 甲賀香織代表理事
「例えば換気をどのくらいすればいいのか、実際の店舗で空気の流れを調べて検証するようなことは行われていない。リスクがわかればいくらでも改善するし、そのための調査にも協力します。“夜の街”か、それ以外の飲食店かはリスクとは関係ないはずです。国や自治体と根本的な解決のための話し合いをしたい。それがないと結局、同じ事を何度もくり返して社会に大きなダメージを与えると思う」
コロナ禍で大きな影響を受け続けている飲食業界。「国や行政の支援は期待していない。自分でなんとかしたいがそれすらかなわない」ということばに本当に必要な支援とは何なんだろうと改めて考えさせられました。