【データで読む】いじめ 不登校 暴力行為 過去最多 低年齢化も

全国の学校が把握した昨年度のいじめの件数は初めて60万件を超え、不登校の子どもはおよそ18万人と、暴力行為を含めて過去最多となったことが文部科学省の調査で分かりました。この5年を見るといずれも小学校の増加率が高く文部科学省は低年齢化が進んでいると見ています。

文部科学省は、全国の小中学校と高校、それに特別支援学校を対象に、いじめや不登校などの状況を毎年調査していて、22日、昨年度の結果を公表しました。

いじめ 小学校はこの5年で約4倍に

それによりますと認知されたいじめの件数は、
▽小学校が48万4545件、
▽中学校が10万6524件、
▽高校が1万8352件、
▽特別支援学校が3075件で、
合わせて61万2496件と、前の年度より7万件近く増えて過去最多となりました。小学校はこの5年でおよそ4倍になっています。

「重大事態」20%増

「重大事態」と言われる命や身体に被害が生じたり、長期間欠席を余儀なくされたりするケースは全体で723件と、前の年度から20%増えこれまでで最も多くなりました。

不登校 小学生は2.1倍 1000人あたりを5年前比で

また、小中学校を30日以上欠席した不登校の状態にある子どもは、
▽小学生が5万3350人、
▽中学生が12万7922人の合わせて18万1272人と、7年連続で増加し、こちらも過去最多となりました。

1000人あたりの人数を5年前と比較すると、中学生が1.4倍に増えているのに対して、小学生は2.1倍と、より増加傾向にあります。

暴力行為 小学校 4倍近くに増加 この5年で

このほか、小中学校と高校の暴力行為の発生件数は7万8787件で、統計を取り始めてから最も多くなりました。この5年で、中学校は減少している一方、小学校は4倍近くに増えています。

文部科学省は、学校現場がいじめを積極的に認知するようになったことも背景にあるとしていますが、いじめや不登校、暴力行為の低年齢化が進んでいるとみています。

いじめの状況は

昨年度、全国の学校で認知されたいじめの件数、特に小学校はこの5年でおよそ4倍になっていて、小学1年生から3年生でそれぞれ9万件前後と多くなっています。

いじめの状況としては、
▽「冷やかしやからかい、悪口を言われる」が最も多く小中学校、高校でそれぞれ60%を超え、
▽続いて「軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたりする」が小学校と特別支援学校で20%を超え、
▽「パソコンや携帯電話で誹謗中傷や嫌なことをされる」は、高校で19%でした。携帯などでの誹謗中傷は、この5年で2倍以上に増加しています。

文部科学省はいじめを初期段階で積極的に認知して解消に取り組むよう求めていて、いじめを認知した学校の割合は、5年前の57%から83%に増えています。

不登校の主な要因は

不登校の状態にある子どもは、いまの調査方法になった平成3年度以降、最も多くなりました。

1000人あたりの人数は、中学校で39.4人、小学校で8.3人と中学校が多くなっていますが、5年前と比較すると、中学校が1.4倍に増えているのに対して、小学校は2.1倍と増加率は高くなっています。

不登校の主な要因として、
▽最も多かったのは、小中学校ともに「無気力・不安」で40%程度でしたが、続いて多かったのは、
▽小学校では「親子の関わり方」で17%、
▽中学校では「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が17%となっています。

全体では、欠席日数が年間90日を超える子どもは56%を占め、長期に及ぶケースが多い一方、このうち、スクールカウンセラーや教育支援センターなど相談や指導を受けていない児童生徒は2万7000人を超えています。

一方、不登校以外で長期欠席している子どものうち、病気などの理由ではなく、
▽保護者の無関心や家族の介護のためといった家庭の事情や、
▽連絡先が不明なまま休んでいるケースなどは2万5515人に上っています。

専門家「大人も社会も余裕がなく それが子どもに反映か」

子どもたちの居場所づくりに取り組んでいる「NPO法人フリースペースたまりば」の西野博之理事長は、「いじめも暴力も不登校も軒並み数字が上がりしんどいデータが出てきているという実感だ。いじめの件数が上がったことは学校が隠さずに報告している流れで歓迎すべきだが、命に関わるようないじめが増加しており重大なことが起きていると感じる。いま本当に子どもたちが低年齢でストレスをためている。しっかりやれ、みっともない、恥をかかせるなといった圧の中で子どもの生きづらさがどんどん増している。大人も社会も余裕がなくなり、それが全部子どもに反映しているのではないか」と指摘しています。

そのうえで、「コロナ禍でさらに余裕がなくなり、来年はより深刻なデータが予想される。一方で、従来の学校が制度疲労を起こしているということは誰もが気づいていて、集団の中で一方的に先生から教わる形は変化せざるをえない。コロナの影響で分散登校やオンライン授業が導入され、学校に通いにくかった子どもが関わりやすくなったケースも見られた。ピンチをチャンスに変えて1人1人の子どもに合わせた学びや、学校の中に安心できる居場所を作ることが求められている」と話しています。

専門家「数を出して終わりではなく改善を」

いじめ問題に詳しい藤川大祐千葉大学教授は、「今回特に小学校低学年での増加が顕著で、少しふざけただとか、嫌なことをしたというケースも早めにチェックして対応する必要があることから、少しでも認知をしようという動きが進んでいる。一方でいじめの重大事態が増えているが、潜在的には要件を満たしているいじめ案件というものはもっとあるはずで、さらにしっかりと対応することが求められる」と指摘しています。

その上で、「いじめ防止対策推進法ができて7年がたち、積極的にいじめを認知し対応することは進んできた。他方で、この件数は学校がどれだけ認知をして努力をしたかという数値になっており、いじめの広がりや深刻さの変化を示す指標がないというのが現状だ。調査をして数字を出すことは大事だが、数を出して終わりではなく、事案を踏まえて改善につなげていくことが文部科学省には必要とされる」と話しています。