利用客66%減の衝撃! 相次ぐ終電繰り上げの影響は

利用客66%減の衝撃! 相次ぐ終電繰り上げの影響は
たかが数十分、されど数十分。JR東日本が発表した終電繰り上げは、NHKのニュースサイトでも多くのアクセスが集まり、注目の高さに驚かされました。戦後の経済発展とともに、時刻が遅くなってきた都市部の終電ですが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、時刻の前倒しを検討する動きは、ほかの鉄道会社にも広がっています。終電の前倒しは、私たちの暮らしをどこまで変えるのでしょうか?(経済部記者 真方健太朗)

最大37分 影響は2万人

JR東日本が21日に発表した首都圏を走る17路線の終電の繰り上げ。

最も早まるのは、高崎線と青梅線で37分程度。高崎線の場合、上野から群馬県の新前橋まで向かう終電が、これまでの午後11時7分から、来年春からは午後10時30分に。終電が午後10時台というと、かなり早まった感があります。

山手線では最大20分程度、中央線快速で最大30分程度。1日当たりの影響人数は2万人に上るということです。

歴史的転換のわけは?

終電の時刻をここまで大幅に早めるのは、JR東日本で初めてのこと。

歴史的転換に踏み切った理由は、大きく2つあります。1つは「深夜の利用客の減少」です。
[深夜帯の乗客数(去年比)]
▼東海道線(午後11時台)61%減
▼山手線(午前0時台)66%減
新型コロナウイルスの感染拡大で、利用客は3割程度減りましたが、深夜だけに限ると6割以上。

テレワークの普及で通勤が減っていることに加え、外出や飲み会を控える動きが利用客の減少に拍車をかけています。そして、こうした傾向は一時的なものではないと、JRは見ています。
深澤社長
「新型コロナウイルスの感染拡大が収まっても、鉄道の利用水準は元に戻らないと考えている」

深刻化する担い手不足

終電を早める2つ目の理由は「作業員の労働環境の改善」です。
鉄道には日々、終電後に線路の点検や保守の作業があります。今でも人手不足が深刻なうえ、今後10年間で担い手の数は1割から2割減少すると見込まれています。一方で、工事の量は、この10年で1割増えているといいます。ホームドアの設置やバリアフリーの対応が進められているからです。

終電を繰り上げることで、1日に作業できる時間を長くとれるようにして工期を短くし、作業員が休みをとりやすくするねらいがあるのです。

長年の懸案が、新型コロナウイルスをきっかけに、改善へと動き始めた形です。

ほかの鉄道会社も

こうした2つの課題は、ほかの鉄道各社にも共通。終電の繰り上げを検討する動きは各地に広がっています。

JR西日本は、来年春から関西の主な路線で午前0時前後に出発する電車48本を削減し、最終電車を最大で30分早めます。

大手私鉄では、西武鉄道が最大30分程度の繰り上げを検討しているほか、東急電鉄、小田急電鉄、京浜急行電鉄、福岡県の西日本電鉄なども終電の繰り上げを検討しています。

繰り上げが及ぼす影響は

たかが数十分。

しかし、終電の繰り上げは多くの人たちの暮らしに影響を及ぼします。その代表例が飲食業。
JR新橋駅の近くで居酒屋を経営する牛島憲一さんは、営業終了の時間を、今の午前0時から30分程度早めることを考えています。

閉店後に食器の片付けやテーブルの消毒をすると、帰宅は深夜1時前の終電。今後は間に合わなくなくなるおそれがあります。ただでさえ、来店客が去年の半分に落ち込む中、営業時間の短縮は痛手だといいます。
牛島さん
「さらに遅い時間まで電車が走ってほしいと思っているので、最終電車が早くなると週末の売り上げに影響しそう」

影響は私鉄にも

終電が早まる影響はJRの沿線だけではなく、JRと接続する私鉄の沿線にも及びます。

千葉県の船橋駅は、都心とつながる「JR総武線」と、郊外を走る東武鉄道の「東武アーバンパークライン」が接続するターミナル駅です。
東武鉄道は、都心から郊外に帰宅する利用者の利便性を高めようと、ことし3月、中間のターミナル駅である柏駅まで行く平日の最終電車を33分遅くしました。しかし、来年春にJRの終電が早まることで、その利便性の一部はそがれることになります。

働き方を変えるきっかけになるか

戦後の経済成長に合わせて、遅くなっていった終電の時刻。

前回の東京オリンピックが開催された昭和39年は、山手線が午前0時38分、中央線が午前0時35分。早朝に出勤し、最終電車で帰宅する「モーレツ社員」が日本の経済成長を支え、半世紀以上にわたって最終電車の時刻は、ほとんど変わりませんでした。
実は、つい最近まで終電はさらに遅くする検討がなされていました。外国人旅行者の急増を背景に、夜の経済=「ナイトタイムエコノミー」を強化することがねらいでしたが、新型ウイルスによって、一転、終電は繰り上げられる結果になりました。

多くの人たちを今なお苦しめている新型コロナウイルスですが、結果的に私たちはこれまでの働き方や生き方を見直す機会を得ることになりました。

JR東日本にとって、事実上初めてともいえる終電の前倒しは、働く人たちの生活スタイルを変える大きな転換点になるのかもしれません。
経済部記者
真方 健太朗
帯広局、高松局、広島局を経て、現在国土交通省を担当