今回の調査結果について、産前産後のメンタルヘルスなどが専門の国立成育医療研究センターの立花良之医師は、「『産後うつ』は出産後しばらくすると少なくなる傾向にありましたが、今回の結果は一定の高い割合で持続しているという衝撃的な結果です。コロナの影響で子育ての不安や疲れ、ストレスが長引き、非常に多くの人に問題が出ている可能性があります」と話していました。
立花医師は、苦しいと思ったら保健所などへの相談や医療機関の受診を考えてほしいとしたうえで、母親本人がみずから声をあげないケースも多いとして、家族や身近な人たちが支援につなげることも大切だと呼びかけています。

「産後うつ」割合 出産後1年近くにわたり同水準 コロナ影響か
主に出産直後の女性が発症し、徐々に減少していくとされる、「産後うつ」が長期化しているおそれが明らかになりました。今月行われた研究者の調査で、産後にうつ症状がある女性の割合が、出産後1年近くにわたり減少せず、同じ水準で推移していることがわかりました。新型コロナウイルスによる外出の機会の減少などが影響しているとみられています。
調査は、公共政策が専門の筑波大学の松島みどり准教授と助産師が、子育て関連のアプリを提供する会社を通じて今月行い、イギリスで開発された専門の質問票を用いて最近の心理状態を尋ね、出産後1年未満の女性からは2132人の回答が得られました。
「産後うつ」は出産後の女性のうち10%前後が発症するとされていますが、今回の調査の速報値では、「産後うつ」の可能性がある人の割合は20%余りと倍以上になっていることが明らかになっています。
さらに、出産から何か月たっているかに分けて、うつ症状がある女性の割合を分析したところ、産後0か月から11か月にかけて大きく減少することはなく、ほぼ同じ水準で推移していることがわかりました。
国立成育医療研究センターなどが過去に行った調査では、「産後うつ」の可能性がある女性の割合は、産後2週間をピークに徐々に減少し、3か月で6%から7%程度になるとされていました。
新型コロナウイルスの影響で、子どもの成長とともに増えるはずの外出の機会が減少していることや、収入の落ち込みによる経済的な不安などが背景にあるとみられています。
松島准教授は今後も継続して調査を行い、行政や医療機関に情報を提供する方針で、今後の対策に活用してほしいとしています。