社会

女性の自殺 7月以降増加「新型コロナの影響で悩みなど深刻化」

ことし7月以降、全国で自殺する女性が増えていることについて、厚生労働省から分析を依頼された団体が会見を開き、「新型コロナウイルスの影響で配偶者からのDV=ドメスティック・バイオレンスや子育ての悩みなどが深刻化している」と指摘しました。
警察庁によりますと、全国で自殺した人は、ことし7月以降、去年の同じ時期より増加し、特に8月は1854人と去年を16%上回りました。

このうち女性は651人で40%も増加しています。

これについて、厚生労働省から自殺の傾向などの分析を依頼された都内の団体が21日、会見を開きました。

それによりますと、7月以降、同居人がいる女性や無職の女性の自殺が増加していて、支援団体に寄せられた相談内容などを分析した結果、新型コロナウイルスの影響で配偶者からのDVや子育ての悩み、それに経済問題などが深刻化していることが要因になっている可能性があるということです。

あわせて芸能人の自殺を伝える報道の影響も見られるとしています。

また、8月に自殺した高校生は42人で、去年の同じ時期の2倍以上に増えました。

臨時休校やオンライン授業などで、環境が変化したことが影響している可能性があるということです。

一方、失業などの影響も懸念されていましたが、団体では、住居確保給付金といった国の支援制度によって、8月の時点では自殺への影響を抑えられていると見ています。

分析をした「いのち支える自殺対策推進センター」の清水康之代表は「今後も自殺者が増加するおそれがある。自殺を防ぐ特効薬はなく、悩みを抱えている一人一人への対策が必要だ」と話しています。

NPOへの相談 30代以下の女性が7割近く

自殺対策に取り組んでいる東京都のNPO法人「ライフリンク」は、おととしからSNSを使った相談の受け付けを始めました。週に6日、1日当たり平均15人から20人ほどの相談員がLINEでメッセージを送ってきた人とやり取りをしています。

ライフリンクによりますと、ことし寄せられた相談の件数は3月まで3000件台でしたが、5月に5000件台に増加し、先月には1万5000件を超えました。

新型コロナウイルスに関する相談が多く、学校が臨時休校になって自宅に居づらいとか、仕事がなくて生活できないという悩みのほか、ストレスによる精神的な不調を訴える人も目立つということです。

相談を寄せる人の7割近くは30代以下の女性で、「ライフリンク」の清水康之代表は「若い人はSNSで相談につながることが多く、そこから対応に結び付けることが大事だ」と話しています。

また、DV=ドメスティックバイオレンスや虐待など、家庭内の悩みに関する相談も増えています。

DV被害に遭っている女性などを支援する横浜市のNPO法人「女性・人権支援センターステップ」にはことし4月から先月末までの半年間でおよそ100件の相談が寄せられ、去年の同じ時期のおよそ2倍に急増しました。

具体的には、外出を自粛している間に夫からの暴力や暴言がひどくなったとか、ストレスがたまって子どもに手をあげてしまったといった悩みなど、新型コロナウイルスによる自粛の影響とみられる相談が目立つということです。

「女性・人権支援センターステップ」の栗原加代美理事長は「ステイホームの影響で、家族の食事や子どもの世話、親の介護と、女性にかかる負担は数倍に増えている。また、夫婦で一緒にいる時間が増えたことで相手の嫌な面が目に付きやすくなり暴力や暴言が増えたと考えられる」と指摘しています。

そのうえで「相談を受けていなければ自分を悪い母親や妻だと責め続けて自殺していたかもしれない人たちもいる。自粛生活の中で、1人で悩んで追い詰められている人が多く、社会とつながれる窓口を作って孤立させないことが必要だ」と話しています。

NPO「相談窓口はパンク状態」

自殺に関する相談の増加で、支援団体が対応しきれないケースも出ています。

東京都のNPO法人「ライフリンク」によりますと、先月、SNSで寄せられた1万5000件余りの相談のうち対応できたのはおよそ1割の1617件でした。相談員を増やしていますが、相談件数の増加に追いついていないということです。

ライフリンクの清水康之代表は「相談窓口はパンク状態で対応できる数をどう増やしていくかが課題だ。相談員の育成もしながら受け皿を確保してしていかないといけない」と話しています。

厚生労働省によりますと、ほかの支援団体の相談窓口でも、電話を受けられなかったり、メールやSNSのメッセージにすぐに返信できなかったりするケースが出ているということです。

厚生労働省は、「一部の窓口に相談が集中する場合もあるので、連絡がつかない場合はほかの窓口にも相談してほしい」として身近な相談窓口を検索できるサイトの利用を呼びかけています。

URLは「http://shienjoho.go.jp/」で、電話のほか、メールやSNS、ファックスなどでも相談を受け付けているということです。

また、厚生労働省は、全国の支援団体や自治体の相談体制を強化するため、相談員を増やす費用などおよそ26億円を来年度予算の概算要求に盛り込むことにしています。

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