新型コロナにより各国の移民が特に大きな影響 OECDが報告書

新型コロナにより各国の移民が特に大きな影響 OECDが報告書
OECD=経済協力開発機構は、ヨーロッパなど加盟国で暮らす移民の人たちが、その国の出身者に比べ新型コロナウイルスによって仕事を失ったり、高い感染リスクにさらされたりするなど特に大きな影響を受けているとする報告をまとめました。
日本をはじめヨーロッパ各国やアメリカなどが加盟するOECDは19日、新型コロナウイルスによる移民への影響をまとめた報告書を公表しました。

それによりますと、OECD諸国に流入した永住型の移民の人数は去年、530万人にのぼりましたが、新型ウイルスの感染拡大で入国が制限されたため、ことし前半は去年の同じ時期のおよそ半数に落ち込み、ことし1年では過去最低の人数になる見通しだとしています。

また、すでにOECD諸国に移り住んでいる人たちも大きな影響を受けていて、飲食店やホテルなどで働く人の間では、新型ウイルスの打撃で仕事を失う人が増えて、いずれの加盟国でも移民の失業率がその国の出身者を上回っているということです。

さらに市民生活を支える現場で働く、いわゆる「エッセンシャルワーカー」が多いことなどを背景に、新型ウイルスへの感染リスクがその国の出身者の2倍に達しているとしています。

OECDのグリア事務総長は記者会見で、「移民の人たちはパンデミックに弱く支援が必要だ。移民が先進諸国にとっても不可欠な存在であることを再認識しなくてはならない」と訴えました。

仏の人権団体「移民の労働者によって社会が維持」

難民の支援などにあたるフランスの人権団体のイブ・パスクオ氏はNHKのインタビューに対し、新型コロナウイルスへの対応で、ヨーロッパ各国が国境の往来を規制したことなどから、移民や難民の数が制限され、厳しい状況に置かれた人たちが行き場を失っているとして懸念を示しました。

一方でパスクオ氏は、ヨーロッパ各国では、市民生活を支える現場で働く、いわゆる「エッセンシャルワーカー」の多くを移民の人たちが担っていると話しています。

そのうえでパスクオ氏は「最前線で働く移民の労働者によって社会が維持できた。こうした人たちがいなければ、状況はさらにひどくなっていただろう」と述べ、今回のコロナ禍が、移民や難民の受け入れを前向きにとらえるきっかけになる可能性があると指摘しています。