日本ーベトナム首脳会談 菅首相 中国を念頭に緊密連携を確認

日本ーベトナム首脳会談 菅首相 中国を念頭に緊密連携を確認
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ベトナムを訪れている菅総理大臣は、フック首相と首脳会談を行い、南シナ海への進出を強める中国を念頭に、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて緊密な連携を確認し、安全保障分野の協力強化で一致しました。また、出張など短期滞在者を対象とする往来を再開させることで合意しました。
就任後初めての訪問国、ベトナムを訪れている菅総理大臣は、首都ハノイの首相府で、日本時間の午前11時前から1時間余りフック首相と首脳会談を行いました。

この中で、両首脳は、南シナ海などへの進出を強める中国や北朝鮮問題など地域の諸課題について意見を交わし、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた緊密な連携を確認しました。

そして、防衛装備品の移転や技術協力の促進に向けた協定の締結で実質合意するなど、安全保障分野の協力をさらに強化することで一致しました。

また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が続く中、日本へのマスクなどの物資の供給網、いわゆるサプライチェーンを強化するほか、日本産温州みかんの輸出や、官民をあげたインフラ投資の促進など、経済面での協力の進展を図ることを確認しました。

さらに、入国制限措置を緩和し、出張など短期滞在者を対象とした往来や、日本とベトナム間の旅客機の運航の再開で合意したほか、日本国内で生活に困窮するベトナム人の技能実習生や留学生などの支援を行っていくことで一致しました。

会談のあと菅総理大臣は、フック首相との共同記者発表に臨み、「本年のASEAN議長国を務めるベトナムは、自由で開かれたインド太平洋を実現するうえの要であり、大切なパートナーだ。日本はインド太平洋国家として今後とも、この地域の平和と繁栄に貢献していく」と述べました。

菅首相「自由で開かれたインド太平洋」へ貴重な一歩

菅総理大臣は19日夜、ハノイ市内で記者団に対し、フック首相との会談について「インド太平洋地域の平和と発展に貢献していくことを共有できた」と述べ、日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた貴重な一歩だと成果を強調しました。

この中で、菅総理大臣は「フック首相と往来の再開やサプライチェーンの促進をしっかりと確認できた。さらに日本とベトナムが、インド太平洋地域における平和と発展に貢献していくことを共有することができた。このことは、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けて、ある意味での貴重な第一歩だ」と成果を強調しました。

そして、20日、インドネシアで予定されているジョコ大統領との首脳会談について「基本的価値を共有する戦略的パートナーとして、新型コロナウイルス問題や経済を中心とするさまざまな問題でしっかりと連携していく関係を構築したい」と述べました。

フック首相「日本が地域の平和に貢献 歓迎」

フック首相は中国と領有権を争っている南シナ海について言及し「平和と安全、航行の自由などを確かなものにするため、武力ではなく平和的な手段で争いを解決することの重要性を再確認した」と述べました。

そのうえで、「国際的に大国である日本が引き続き役割を発揮し、地域と世界の平和と安定に積極的に貢献していくことを歓迎する」と述べ、首脳会談の成果を協調しました。

また、経済分野については「投資や貿易、人材での協力の強化を確認した。ベトナムは、日本企業がわが国への投資で成功するための有利な条件を準備している」と述べ、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済を活性化させるため、日本からのさらなる投資を呼びかけました。

そして「菅総理大臣が最初の訪問先としてベトナムを選び、首脳会談が成功したことを歓迎し、高く評価する」と述べました。

短期滞在者の往来再開 官房長官「早期再開目指し協議」

加藤官房長官は、首脳会談で出張など短期滞在者を対象とする往来を再開させることなどで合意したことについて、午後の記者会見で「早期の再開を目指して、ベトナム側と詳細を協議することになっている。ビジネスでの往来の開始は、ベトナムが3か国目になる」と述べました。

また、防衛装備品の移転や技術協力の促進に向けた協定の締結で実質合意したことについて「移転される防衛装備品や技術の適正な管理が確保され、わが国の防衛産業基盤の維持向上や安全保障に資することが期待されている。さまざまな可能性を検討しており、具体的にどの防衛装備品で協力を行えるかを含め、現時点で申し上げる状況にはない。また、協定は、特定の国や地域を念頭においたものではない」と述べました。

介護関係者からは期待の声

菅総理大臣とベトナムのフック首相が新型コロナウイルスの影響で制限を受けている両国間の往来について、一層緩和させる方向で一致したことを受けて、ベトナムから技能実習生を受け入れている大分県内の介護関係者からは期待の声が聞かれました。

大分県由布市の介護施設、「情和園」では、これまでにベトナムから6人の技能実習生を受け入れていますが、ことし3月から新たに受け入れる予定だった実習生1人の入国のめどがたっていません。

3月の時点で、入国制限のため来日できなくなり、その後、ベトナムからの実習生は、順次、入国が認められるようになりましたが、両国間の旅客便がほとんど運航されていないうえ、ビザの手続きも進んでいないためです。

こうした中、菅総理大臣が19日、フック首相と会談し、新型コロナウイルスの影響で制限を受けている両国間の往来について、旅客機の運航再開など一層緩和させることで一致しました。

この介護施設でベトナムからの実習生は、丁寧な仕事ぶりに利用者からの評価も高いということです。

介護施設の施設長を務める土師寿三さんは「両国が制限緩和で一致したことは、大きな進展になる。連携を密にして技能実習生の受け入れを一層加速させてほしい」と話し、期待を寄せていました。