コロナの水際対策最前線~いまこうなっています

コロナの水際対策最前線~いまこうなっています
新型コロナウイルスの影響で、世界中で移動の制限が続く中、政府は10月から全世界を対象に入国制限を緩和。ビジネス関係者に加え、中長期の在留資格を持つ外国人の入国を認めました。
今後、さらに段階的に制限は緩和される見通しですが、気になるのは、入国時の検査やその後の健康管理などの水際対策です。いま、どうなっているのか、私自身の体験をもとに紹介します。(ネットワーク報道部記者 小宮理沙 前シドニー支局長)

早くなった検査

9月11日の早朝、私は久しぶりに羽田空港に降り立ちました。オーストラリアでの3年間の支局生活を終えて帰国したのです。

日本では、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、特に流行している国や地域から入国すると、まず検査を受けます。オーストラリアも対象です。

飛行機から降りると、検体の採取場所に誘導されました。検査場所に到着すると、係員から受付番号が貼られたプラスチック容器が手渡されます。
空港でのPCR検査といえば、以前は結果が出るまでに時間がかかり、トラブルにつながることもあったのを覚えているでしょうか。
帰国した当日に結果が出ない場合、帰国した人は、指定されたホテルなどで待機することが認められていました。

しかし、陽性と確認されたのに本人と連絡がつかないケースもあり、感染拡大への懸念が広がりました。
こうした事態を改善しようと、成田空港や羽田空港などでは、7月下旬から唾液を使った抗原検査を導入。結果が出るまでの時間が大幅に短縮されていたのです。
検体の採取場所はまるで投票所のようでした。ブースが複数設置され、容器を受け取った人から1人ずつ順番に利用します。

適切に検査するには、1~2ミリの唾液が必要で、量が少なかったり食べかすなどの不純物が混じっていたりすると、やり直しになることもあります。
おなかが空いていた私は、梅茶漬けやみかんなどの好物を思い浮かべながら、慎重に容器につばを出しました。鼻の奥まで専用の綿棒を入れて採取する検査と違って痛みもなく、予想していたよりも簡単にできました。
容器を提出したら、こんどは検査結果を待つ場所に移動します。陽性とわかった場合は、空港から指定医療機関に搬送され治療を受けることになります。長旅の疲れもあるためか、乗客の間には何とも言えぬ重苦しい雰囲気が漂っていました。

待つことおよそ30分。

受付番号が呼ばれカウンターに行くと、係員から窓越しに結果を告げられました。
「陰性です」

これで日本に入国できると、正直ほっとしました。

続いて、入国審査に進めることが記されたピンク色の紙を渡され、入国後の待機場所や移動手段を確保しているかなどの確認が行われます。
入国審査を終え到着ロビーに出たのは、午前6時50分ごろと到着してから1時間半余り。結果がわかるまで1日以上かかることもあった7月と比べると大幅にスピードアップしていました。

電車もタクシーも使っちゃダメ!

空港を出たあとも気は抜けません。

空港での検査が陰性でも、その後、陽性となる可能性もあることから、入国した翌日から数えて14日間は、自宅やホテルなどで待機することが求められていたからです。

私は家族が住む都内の自宅で待機期間を過ごすことにしました。感染拡大を防ぐため、移動手段は電車やバス、タクシーなどは禁止。使えるのは、厚生労働省の基準を満たしたハイヤーなどに厳しく制限されています。
利用した車には感染対策のため、運転席と後部座席の間に透明の板がありました。

車内の貼り紙には、感染防止のため荷物は客自身が積み降ろすことや、ドアなど車内の設備に触れないことが記載されていました。

万が一に備えて、帰国者の送迎は専用の運転手が担当し、そのほかの送迎は行わないということです。

運転手さんによると、中には10万円以上もかけて東北地方まで乗る人もいるそうです。
実は、帰宅にかかる交通費やホテルの滞在費は、政府の補助はなくすべて自己負担。自宅が遠隔地にある人などは、滞在費や移動費だけで十数万円かかるため、海外にはこの費用が捻出できずに帰国できない人がいまも残されています。

待機中の健康状態は自己申告

自宅に着いても、コロナへの対応は終わりません。

14日間は、地元の保健所などからの電話やメール、LINEアプリによる健康状態の確認が行われます。
私の場合は電話かメールで連絡がくることになっていたのですが、最初のメールが届いたのは1週間が過ぎてからのことでした。
メールでの指示に従い、毎日、発熱やせきなどの有無を保健所に報告。土日祝日以外は、毎日、返信がきました。

幸いにも体調を崩すことはありませんでしたが、油断はできなかったため、最後の報告を終えたときは心がすっと楽になりました。

やっぱり直面したコロナ太り

待機中は当然ながら外出することはできません。体を動かす機会が限られるため、“コロナ太り”に直面しました。
腹筋をしたり足首に重りをつけて筋トレをしたりしてみましたが、回数が少なすぎたのか効果はありませんでした。

そして、外出できるようになったいまも、残念ながら“コロナ太り”は解消されていません・・・。

「動かないと太る」。
当たり前のことを再確認させられた14日間でした。

入国制限緩和に向けて

入国制限の緩和に乗り出した政府。

韓国やシンガポール、ベトナムなどとのビジネス目的の往来は、すでに解禁されています。このうち、韓国とシンガポールから入国する短期出張者の場合は、陰性証明や行動計画を提出などすれば、14日間の待機中でも限定的なビジネス活動が可能です。

こうした外国人のうち、日本語での対応ができない人などは、企業の受け入れ責任者がかわりに体調を報告することになっています。

さらに今後は、どこから入国しても14日間の待機が免除される可能性もありますが、入国時の検査や健康確認などの水際対策は、これまで以上に重要になると感じました。
検査は引き続き、入国するすべての人を対象に行われるとみられますが、万が一、入国後に体調を崩し、再検査で陽性が確認された人が出た場合、行動をともにした人たちへの連絡や自己隔離などが求められます。

いまの制度は、発熱の有無などを正直に申告することが前提となっているため、ひとりひとりの良識が感染拡大を防ぐカギになっています。

これから海外との行き来が少しずつ増えていきますが、水際対策と入国する人たちの利便性のバランスをいかにとっていくかが、大きな課題だと感じました。

※この記事は10月16日時点のものです。これから渡航される場合や帰国される場合は、最新の状況を厚生労働省や最寄りの在外公館などにご確認ください。