アメリカ大統領選挙 期日前投票が異例のペースで増加

アメリカ大統領選挙 期日前投票が異例のペースで増加
アメリカ大統領選挙は、およそ2週間後の投票日を前に、期日前投票をした人が少なくとも2200万人と、前回2016年の大統領選挙の期日前投票全体の4割近くに上り、異例のペースで増えています。
今回の大統領選挙では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くの州で郵便投票の制度が緩和され、期日前投票を利用しやすくなっています。

全米の多くの州では期日前投票の受け付けが始まっていて、AP通信のまとめでは今月16日の時点で全米で郵便投票で投票した人は少なくとも1700万人で、投票所で投票した人を合わせるとすでに2200万人以上が投票を済ませたということです。

これは前回2016年の大統領選挙での期日前投票全体の38%にあたるということで、今回は異例のペースで増えています。

また期日前投票をした人を党派別で見ますと、
▽共和党員として有権者登録をしている人は全体の24%だったのに対し、
▽民主党員として登録している人はその2倍以上の55%となっています。

ただ感染拡大を受けた急な制度の変更もあり、各地で投票用紙を別人に郵送するなどのトラブルも相次いでいるうえ、州によっては期日前投票を受け付ける態勢が十分整備されておらず、投票所に長い列ができて、数時間待って投票する有権者の姿も見られています。

今回の選挙戦では、民主党のバイデン陣営が期日前投票の積極的な利用を呼びかけ、トランプ陣営も郵便投票には反発する一方で早めの投票を呼びかけていて、今後、期日前投票がさらに増える可能性があります。

ただ、州の中には投票日の消印を有効としているほか、大量の郵便投票を受け付けるのは今回が初めてというところも少なくなく、開票作業が大幅に遅れることも懸念されています。

増加の要因は郵便投票の拡大 コロナも影響

アメリカの期日前投票では、決められた投票所などで直接投票する方法のほか、郵送されてきた投票用紙に記入して返送したり、専用のポストに投かんしたりする郵便投票でも投票できます。

期日前投票が大幅に増加した大きな要因が郵便投票の利用の拡大です。

アメリカでは郵便投票の制度は州によって異なりますが、各種調査によりますと、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、全米の30以上の州で感染の防止対策として郵便投票を利用しやすくする措置をとっています。

具体的には、これまで仕事や病気などやむをえない事情がある場合にのみ認めていた制度を、感染防止対策が理由であれば誰でも利用できるようにしたり、有権者登録をした人は全員無条件で利用できるように緩和したりしています。

また有権者登録をした人全員に自動的に郵便投票の投票用紙を送ることができるようにした州は、前回2016年の大統領選挙では3州でしたが、今回は10州と首都ワシントンに広がっています。

郵便投票 トラブルや訴訟も

郵便投票の制度の急な変更や利用者の大幅な増加で、各州でトラブルも相次いでいます。

激戦州の東部ペンシルベニア州では今月、およそ3万人の有権者に送られた投票用紙に別の人の有権者情報が記載されていたことがわかりました。

またペンシルベニア州では、郵便投票の返送の際、個人情報を保護するため投票用紙を規定の2つの封筒で二重にして送り返すことを求めていますが、トランプ陣営などが訴えを起こす中、州の裁判所は、二重にしていない場合、有効票として認めない判断を示し、10万票が無効になるおそれも指摘されています。

ほかにもニューヨーク州やオハイオ州で投票用紙や返信用封筒に印刷された内容に誤りが見つかり、送り直す手続きがとられています。

混乱が広がる中、訴訟も相次いでいて、全米の訴訟の状況をまとめているウェブサイトによりますと、今月15日の時点で郵便投票の制度の変更などをめぐる訴訟は、45の州などで287件起きているということです。

開票や態勢にも問題点 選挙結果めぐり裁判に?

また来月3日の投票日以降の開票に関しても混乱が予想されています。

各種調査によりますと、全米の少なくとも20以上の州が投票日やその前日の消印を有効として投票日以降の到着を受け付けるとしていて、中には20日後まで受けつける州もあります。

さらに、郵便投票の集配を担う郵政公社の態勢の問題点も指摘されています。

郵政公社では経営改革のもと経費を削減するとして、郵便物を仕分ける機械の削減などが進められていました。

この影響で大量の郵便投票の到着が期日に間に合わず、無効になるおそれも指摘されています。

トランプ大統領は繰り返し、郵便投票が不正につながると主張していて、選挙結果をめぐる法廷闘争が起きれば、長期にわたって結果が確定しない可能性もあります。