日本学術会議の「提言」 生活に身近なものも

日本学術会議の「提言」 生活に身近なものも
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国会などで議論になっている「日本学術会議」。科学者が専門的な立場から意見を表明する役割を担っていますが、出される「提言」は私たちの生活に身近なものも少なくありません。
日本学術会議が意見を表明する方法のうち、もっとも頻繁に発表されているのが、「科学的な事柄について実現を望む意見」として出される「提言」です。

ゲノム編集技術に関するものなど最先端の科学技術についてさまざまな意見を発表している一方、私たちの生活に身近な提言も少なくありません。

ことし出された提言には、子どもや妊婦の受動喫煙対策を充実させるよう求めるものや心と体の性が異なる「トランスジェンダー」と呼ばれる人たちが暮らしやすい社会をつくるため法整備の必要性を指摘したものなどがあります。

また、新型コロナウイルスの感染が広がる前の去年5月には、感染症の「パンデミック」に備えて、ウイルスなどの微生物や病原体についての教育を充実させる必要があるという提言を出していました。

さらに、おととしには、夏の生活時間を早める「サマータイム」について、長期にわたって健康に影響を及ぼすおそれのあることや必ずしも暑さ対策になるとは限らない点を指摘し、「導入は見合わせるべきだ」と提言しています。

このほか、6年前に発表した選挙の投票率低下への対応策をまとめた提言では、過疎が進んでいる地域で、期日前投票のために投票箱を載せた車が地域をまわる「移動投票所」について、まだ全国的に広がっていない時期に、その必要性に言及していました。

子どもの健全成長へ「空間づくり」も提言

大妻女子大学の木下勇教授は先月まで15年間、日本学術会議の連携会員を務めました。

この2年は子どもの成育環境について考えるグループの委員長を務め、先月、「提言」を取りまとめて内閣府に提出しました。その内容は、貧困対策のほか、学校や保育所の整備の在り方など多岐にわたります。

中でも木下教授が深く関わったのが、子どもたちが健全に成長するための空間づくりについての提言です。

保護者の安全意識の高まりやスマートフォンの普及などによって子どもたちの外遊びの機会が減っていることが問題だと指摘。首都圏、特に東京都内では禁止事項が設けられた公園が多いとして、専門的な知識を持った人が見守る体制を整えたうえで、子どもが危険を伴う遊びにも挑戦できる場所をつくることが必要だとしています。

具体的にあげられているのが、専門のスタッフが子どもたちの遊びを見守る体制が取られている「プレーパーク」と呼ばれる公園です。

東京 武蔵野市にある、NPO法人が運営するプレーパークは、2メートル余りある壁をよじ登るものなど一般的な公園より遊ぶのが難しい遊具があるほか、木登りや火遊びも楽しむことができます。

訪れた保護者からは「普通の公園ではできない遊びも子どもが主体的に楽しむことができ、プレーワーカーも子どもの成長に必要な存在だと思います。こういった場所が増えてほしい」といった声が聞かれました。

木下教授は「研究の成果を国民の生活に役立てることは学術会議の大きなミッションだ。提言の内容が国や地方自治体の政策、それにNPOや地域の取り組みにも反映されることを期待しています」と話していました。

日本学術会議の意見表明とは

日本学術会議が専門的な立場から意見を表明する方法には、「答申」「回答」「勧告」「要望」「声明」「提言」、それに「報告」の7つがあります。

このうち「答申」は政府からの諮問を受けて出され、「回答」は省庁から審議依頼を受けて出されるものです。そのほかの5つは学術会議が自発的に行います。

最も頻繁に出されているのが「提言」です。平成23年から先月末までの10年近くに出された「提言」は277件で、ことしはこの10年で最も多い68件が発表されています。