来春就職 高校生の採用試験始まる コロナ影響で1か月遅れ

来春就職 高校生の採用試験始まる コロナ影響で1か月遅れ
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来年の春に就職を希望する高校生の採用試験が、新型コロナウイルスの影響で例年よりも1か月遅れて16日から始まりました。
首都圏を中心に126店舗のスーパーマーケットを展開する横浜市の会社でも採用試験が行われ、午前中から高校生が次々に訪れてました。

生徒たちは、感染を防ぐために手の消毒や検温をしたあと、大きな会議室に分散して座り筆記試験などを受けていました。

厚生労働省によりますと、来年の春に就職を希望する生徒に対して、企業などからの求人は、7月末の時点で去年の同じ時期よりおよそ24%減少しています。

生徒1人当たりの求人数を示す求人倍率は、全国平均で2.08倍と、去年の同じ時期を0.44ポイント下回り、2010年以来の低下となっています。

この会社では、茨城県や群馬県などの高校から初めて採用試験についての問い合わせがあり、会社説明会には去年の2倍以上の応募があったということです。

会社では今後、新たに店舗を増やす計画があることなどから昨年度よりも採用人数を増やす予定です。

スーパーマーケットチェーン「オーケー」人事総務部の羽鳥慎一採用・教育チームリーダーは「採用環境に変化を感じています。新型コロナウイルスの影響でさまざまな逆境がある中でしっかりと前を向いている高校生を採用し、育成していきたいです」話していました。

茨城 日立 中小企業に志望者

日立製作所やその関連企業などが多く立地する茨城県日立市にある金属加工会社でも16日、高校生の採用試験が行われました。

この会社では毎年、技術の継承のために高校生を採用しようと募集を出していますが、志望者がいない年もあり、十分な採用ができない状況が続いていました。

しかしことしは6年ぶりに2人の志望があり、16日は生徒が面接で自己アピールをしたり、筆記試験を受けたりしていました。

茨城労働局によりますと、ことしは大手メーカーやその関連企業などの求人が減り、県内の製造業の求人は7月末の時点で去年の同じ時期より22.5%減少しているということです。

金属加工会社の庄司剛社長は「事前の見学会の参加者も前年の倍になるなど、ことしは例年の採用活動と大きく異なっていて、新型コロナウイルスが生徒たちが地元企業に目を向けるきっかけになったと感じています」と話していました。

去年と変わらない数の求人確保の学校も

新型コロナウイルスの影響で高校生の求人が減る中、茨城県高萩市に学校と企業が交流を続けて信頼関係を築いてきたことで、去年と変わらない数の求人を確保している学校があります。

高萩市にある県立高萩清松高校では、生徒が1年生のころからインターンシップに参加するなど地元企業と交流する機会を積極的に設け、企業との信頼関係を築いてきました。

16日はこの高校の生徒が北茨城市の油脂メーカーの採用試験に臨みました。

この油脂メーカーでは、8年前から高萩清松高校の生徒をインターンシップで受け入れ、実際に採用した生徒もいて、現場からは「学校と長年のつながりがあるので、いい生徒が来てくれるだろうという安心感がある」という声があがっているということです。

こうした取り組みもあり、この高校には、新型コロナウイルスの影響で企業に高校生の求人を控える動きが出ているなか、企業から去年と変わらない数の求人が来ているということです。

高萩清松高校の志賀栄文学年主任は「地域の企業と生徒が早い時期から交流し、信頼を得られたことで、コロナの影響があっても去年と変わらない求人数を頂くことができたと考えている」と話していました。

求人減で希望変更の生徒も

長野県では、新型コロナウイルスの影響で企業からの求人が減る中、当初希望していた会社の求人がなく、別の会社への就職を目指さざるをえなくなった生徒も出ています。

新型コロナウイルスの影響による業績の悪化などから、長野県では7月末時点の高校生の求人数は前の年の同じ時期に比べて17.1%減少していて、高校生側の選択肢が狭まる状況になっています。

こうした中、例年およそ7割の生徒が就職を希望する池田町にある県立の池田工業高校は、企業からの求人が去年から2割ほど減り、当初希望していた会社ではなく別の会社への就職を目指さざるを得なくなっている生徒が出ています。

機械科の勝野建さんは、小さいころから見学に行くなどして親しみがあった半導体の部品などを作る大手化学メーカーへの就職を希望していましたが、ことしは求人がなく、車のエアコンの製造を手がける別の会社に希望を変更しました。

勝野さんは、説明会などを通じて変更先の企業の魅力にふれて気持ちを切り替えられたということで、「新型ウイルスの影響で求人が少ないのは仕方がないと思うので、希望する会社に就職できるよう頑張っていきたい」と話しています。

大学入試の準備と重なり担当教師の負担増も

高校生の採用試験が例年より1か月遅れて始まったことで長野県の高校では大学の推薦入試の準備と時期が重なったことから、担当教師の負担が増えています。

長野県池田町にある県立の池田工業高校では例年7割ほどの生徒が就職を希望しますが、残り3割が大学などへの進学を希望します。

ことしは高校生の採用試験が来月から始まる大学の推薦入試の準備と時期が重なったため、進路指導を担当する教師は就職と進学の両方で面接の練習や履歴書の添削をすることになり、負担が増しています。

このため高校では校長をはじめ、すべての教師が生徒たちへの指導に当たり、希望する進路への後押しを行っているということです。

池田工業高校で進路指導を担当している両角平一さんは「面接指導は時間がかかるので生徒たちには順番待ちをしてもらっている状況です。大変な中ではありますが、きょうから採用試験に臨む生徒にはなんとか第1希望の会社に受かってもらいたいと祈るような気持ちです」と話しています。