インフル、予防接種は“時短”で

インフル、予防接種は“時短”で
今月からインフルエンザワクチンの接種が全国で始まりました。
ことしは、新型コロナウイルスとの同時流行を心配し、混雑するクリニックも出ているのでは?
調べてみると、いつもと違う光景があちらこちらに…
キーワードは「時短」。その試行錯誤を探ってみました。
(ネットワーク報道部記者 玉木香代子 杉本宙矢 田隈佑紀)

医療機関に行列も

今月1日から始まったインフルエンザワクチンの接種。
ツイッターには、さっそく投稿が。
医療機関が混雑して、行列までできているという投稿も多くあがっています。

過去5年で最多の供給へ

需要の増加を見込んで、厚生労働省は今年度、過去5年で最も多い約6300万人分のインフルエンザワクチンを供給する予定です。
厚生労働省担当者
「現時点で供給されているのは予定量の半分程度で、今後11月ごろにかけて供給量を増やしていく方針です」
まずは「より必要な人に届くように」と、今月1日から25日までの期間に接種を呼びかけているのが、感染時のリスクの高い65歳以上の高齢者や60歳以上で心臓などに持病がある人。そのほかの人は26日以降にするよう協力を求め、中でも医療従事者や基礎疾患のある人、妊婦や子どもで希望する人は、早めに接種するよう呼びかけています。

ただ、厚生労働省によると日程はあくまで目安で、前後しても接種は可能。小児科専門のクリニックなどもあり、実際には医療機関の裁量に任されているということです。

混雑避ける工夫も

「接種希望者で混雑」という情報を受けて、今月8日、記者(玉木)も実際に東京都内のクリニックに行ってみました。すると、小児科ということもあって親子の姿が多かったものの、想像以上にスムーズに接種が進んでいる様子でした。

印象的だったのは、看護師たちが保護者の荷物やベビーカーを持ってきびきびと動く姿。待合室での滞在時間が少なくなるよう医療スタッフの人たちの工夫があると感じました。

「医療機関もさまざまな対策をとっているかも」。調べてみると、各地でいろんな工夫が見つかりました。

券売機も登場

その1つ、広島市にある藤元内科ファミリークリニック。0歳児の赤ちゃんから100歳のお年寄りの患者も通っています。

ことし初めて導入したのは、なんとインフルエンザワクチン専用の券売機。場所は、待合室にある受付のすぐ隣です。
よく見ると、「インフルエンザワクチン1人分」「2人分」…ラーメン店などでよく見る、あの券売機です。
最初に接種券を購入してもらうことで、接種後に待合室で会計を待つことなく帰れるよう導入されたこの装置。

なんでも、院長の藤元貴啓さんが近くのラーメン店でひらめいて、流行期を考えて年内いっぱい、レンタルしたそうです。
藤元院長
「インフルエンザワクチンの接種が推奨される中で例年よりも前倒しで混雑が始まるのは避けられない。万が一にもクリニックで新型コロナウイルスがうつってしまうことがあってはいけないと思いました。なんとかして待つ時間を減らせないかとスタッフの間で8月終わりから何度も話し合ってきたんです。策に行き詰まっていたところで休みの日にラーメン店でこれだ!と思って。作業を単純化することがいちばんいいだろうと」
このほか診察室の入り口には、看護師さんが描いた“遠山の金さん”のイラストで事前の腕まくりを呼びかけ。
問診票も事前にホームページ上でダウンロードし、記入してきてほしいとして、スピーディーな接種を目指しています。

今月半ばまでに、ワクチンの接種をした人は例年の5倍にものぼるということですが、接種の時間は10分もかからず、待合室で待つ人の数は半分以下に減っているということです。

屋外テントで密回避

続いては神奈川県鎌倉市にある「信愛クリニック」。
「屋外テントで密を避けて、短時間で受けられる」と聞いて、記者(杉本)が行ってみました。

地図にしたがって近づいていくと、駐車場に真っ白なテントを発見。近くには商業施設があり人通りも多いところですが、目立ちます。
広報担当の方が出迎えてくれました。
広報担当
「当院は多くの方に受けていただこうと、予約不要にして、土日や夜も対応しています。場合によっては少しお待ちいただくこともありますが、できるだけスムーズに受けられる態勢を整えています。
今はすいているので試しに受けられても大丈夫ですよ」
たしかにテントが目立つわりには患者の列ができているようには見えません。実際どれほどの時間がかかるか調べるためにも、タイマーで計りながら接種を受けてみることにしました。

まずテントに入ると、問診票を書くスペースがあり、専用の受付で対応してもらえます。
検温もその場で行ってくれて「ピッ」とすぐに結果が出ます。
事前にホームページからダウンロードして記入し、体温も測ってくるとこの過程も省けるとのこと。さらに先に会計を済ませ、注意事項を受けるところまで、換気もよく密をさけられるテント内で行います。

そして、クリニックの中へ。ここまで3分ほど。入り口で消毒をし、顔認証の検温器を通過すると、受付で待つことなく奥まで進みます。いちばん始めに見えてくる部屋の前で問診票を看護師に手渡すと、医師がその場で内容を確認。
忙しいときには臨時で医師を雇うこともあるということです。そしていざ、ワクチン接種の部屋に。

「では腕を出してください」。

専属の看護師が手際よく進めます。
チクッとしたかと思ったところで、終了。

「お疲れ様でした」といわれ、部屋から出ると、待合室にとどまることなくそのままクリニックの外へ出ました。

外に出た時点でタイマーを止めると、ここまでほぼ「7分」。こんなに待たない接種は初めてで、感覚としては「ドライブスルー」といったところでしょうか。事前の準備があれば、5分を切っていたと思います。

この日も、親子連れやお年寄りの人たちが次々と訪れていました。
30代の夫婦
「たまたま通りがかって車からテントが目につき、予約不要ということで受けに来ました。3人でも中にいたのは5分ほどだったでしょうか。ワクチンが足りないという話も聞いていましたが、すぐに受けることができ安心しました」
以前から予防接種に力を入れてきたというこのクリニック。今回の対応の背景には、井出広幸院長の経験もあるそうです。
井出院長
「以前勤めていた病院で同僚の小学生の娘がインフルエンザ脳症で亡くなりました。いたましい“事件”を少しでも減らすには、地域全体で予防接種を行っていかなければなりません。コロナ危機に際して少しでも重症化を防げるよう、地域の医療機関としてできる最大限のことをしていきたいです」
ことしは例年の2倍以上の人が訪れているということですが、状況に応じてスタッフやテントの配置を変えながら対応したいということです。

これから受ける人も…

コロナ時代にも安心できる診療体制を維持しようと模索する地域のクリニック。

冬のインフルエンザ流行期に備えてこれから接種する人も多いと思います。

今回の取材では、ワクチンを接種する私たちの側も、混雑する曜日や時間帯を避けたり事前に問診票を書いたりと、協力できることがたくさんあると気付かされました。

“時短”を目指す医療機関の頑張りに応えられるよう、少しでも密を避けられる手だてがないか、考えてみたいですね。