コンビニを変えるか 業界4位からの挑戦

コンビニを変えるか 業界4位からの挑戦
「過去40年間、適切な契約の改正をしてこなかったことを反省している」

9月、コンビニ業界に一石を投じる発表がありました。会見場に姿を現したミニストップの藤本明裕社長の口から出たのは、痛切な反省のことば。コンビニ本部が加盟店と結ぶフランチャイズ契約を抜本的に見直し、来年9月から、「パートナーシップ契約」と名付けた、新たな仕組みを導入すると明らかにしたのです。コンビニ業界は今、大きな転換点を迎えています。増加を続けてきた店舗数が減少に転じ、フランチャイズのオーナーの過剰な負担も問題となっています。業界4位のミニストップが打ち出したビジネスモデルの抜本的な見直しは、その解決策になるのか。オーナーと本部、双方の声から探ります。(経済部記者 嶋井健太)

店舗経営を苦しめる人手不足の深刻さ

現場で何が起きているのか。私は、あるコンビニオーナーを取材しました。

斉藤保正さん(65)は、17年前にミニストップのフランチャイズのオーナーとなり、今は千葉県内で2店舗を経営しています。
斉藤保正さん
「昔は(アルバイトの)応募がたくさんあって、シフトがあふれるほどだった」
こう語りながらシフト表をめくる斉藤さんの手もとを見ると、何度も線表を手直しした跡が。取材した店舗で働く従業員は17人。本来なら早朝から深夜の4つに分けた時間帯を、それぞれ4人程度で回したいところです。
しかし、今の人数ではその余裕はなく、もう1店舗から応援を入れてなんとか回している状況です。

ただ、その店舗でも、新型コロナウイルスの感染拡大以降、感染リスクを恐れる家族から言われて辞めていったアルバイトもいたそうです。
さらに、人手不足に伴う人件費の上昇も深刻です。今年度の千葉県の最低賃金は925円。斉藤さんがコンビニ経営を始めた2003年度の677円より248円上昇していますが、時給を上げてもアルバイトはなかなか集まりません。
斉藤さん
「従業員さんにとってはいいことですが、私たちからするとかなりの負担になります。かつては学生バイトも大勢いて、誰に出勤してもらうか割りふるほど大変でした。今は空白になる時間帯も出てしまうので、シフトを組むのも一苦労です」

本部もリスクを負う仕組みに

この数年、オーナーを悩ませている人件費の上昇。実は、今のフランチャイズ契約では、増えた負担はオーナーが担う仕組みになっているのです。
オーナーは、売り上げから商品の仕入れ原価を除いた粗利から、一定の割合を「ロイヤリティー」や経営指導料と呼ばれるお金として本部に支払う仕組みとなっています。

オーナーは、粗利からロイヤリティーを引いた残りから、人件費や売れ残り商品の廃棄費用などを負担します。ロイヤリティーは店が赤字の場合も支払わなければなりません。

さらに、この数年の人件費の上昇に伴う負担の増加がオーナーを苦しめています。

公正取引委員会が9月に公表したコンビニ業界の実態の調査では、5年前と比べてオーナーの1店舗当たりの収入は190万円減少したという結果が出ています。その理由について公正取引委員会は、「売り上げの減少」とともに「人件費の増加」を挙げています。

新契約で何が変わる?

ミニストップが導入する「パートナーシップ契約」では、このロイヤリティーを見直します。
売り上げから人件費や固定費など必要な経費を差し引いた分を「事業利益」として算出。そのうえで、「事業利益」を本部とオーナーで分け合う仕組みに改めます。

人件費の上昇などに伴う負担の増加を、実質的に本部も負担することになります。従来、赤字でも支払っていたロイヤリティーはなくなり、オーナー負担の軽減につながるとしています。

なぜ、抜本的な見直しに踏み切ったのか。藤本社長に改めて取材しました。ねらいは、あくまでも売り上げをアップさせることにあると話しています。
藤本社長
「売り上げが変わらなければ、お互いの取り分はほぼ一緒であるという設計をしているので、制度を変えたからといって、業績がいきなり上下することはそんなにないと思っています。ただ、店舗の売り上げが上がると、加盟店(オーナー)の手取りは当然増えるので、それがインセンティブになって加盟店と本部一緒に売り上げを上げて、なおかつ経費を効率化して、取り分を最大化することがお互いのメリットになるというようなことを目指しています」

“難易度は高い”

ミニストップは昨年度まで3期連続の最終赤字となる厳しい経営が続いています。

私が取材したオーナーの中には、今回の新しい仕組みについて「本部側は踏み込んだとは思うが、本部が赤字なのに本当に大丈夫なのか不安だ」と話している人もいました。

こうした声に対して、藤本社長は次のように話しています。
藤本社長
「全く勝算がなくて、始められることではありません。いろんなシミュレーションをした中で、この仕組みであれば、売り上げがこれまでどおりであれば、お互いの取り分は変わらないという設計をしています」
「パッケージを変えたことですべてを解決するとは思ってないんです。新しい制度を取り入れると同時に、セルフレジを導入したり、ローコストオペレーション(より低コストな店舗運営)も進めていかなければいけない。そこで出てきた原資を、商品の投入や投資に回さなければいけない。そうしないと、事業としてはうまくいかないと思ってます。難易度は高いと思います」

ミニストップとコンビニの未来は

コンビニ経営は、ここ数年、社会的な問題になってきました。最大手のセブン‐イレブンをはじめ、ファミリーマート、ローソンもさまざまな見直しを進めています。

コンビニの象徴とも言える24時間営業をやめる店も少しずつ増え、ロイヤリティーの引き下げなど、オーナー側に配慮した施策もとられています。それでも、コンビニの在り方をめぐる議論が絶えないのは、問題の根深さを物語っています。

ミニストップの新たな仕組みも、詳細の詰めはさらに時間がかかり、本当にうまくいくかは、まだ見通せません。インタビューの終わりに、藤本社長はこんなことを話していました。
藤本社長
「これまではトップランナーについていけば何とかなったんですよね。でもそれはもう通用しなくなってきた。やっぱり違うこと。われわれはもともと(店内調理の)ファストフードを持っていますから、そういったものを磨いて、お客様に違うサービスを提供できれば復活できると思います」
コンビニは半世紀近くの時間をかけて日本の消費社会の柱となってきましたが、どのチェーンも同じようなサービスや商品をそろえることに心血を注いできた歴史でもあります。

その経営を屋台骨として支えてきたオーナーとの関係の見直しが始まったことは、それぞれのチェーンが、横並びの競争から、独自の特色を生かして進化する過渡期にあることの1つの現れなのかもしれません。
経済部記者
嶋井 健太
平成24年入局
宮崎局、盛岡局を経て現所属