イスラエル レバノン 海洋境界線で協議開始 ガス田開発思惑も

イスラエル レバノン 海洋境界線で協議開始 ガス田開発思惑も
長年、対立するイスラエルとレバノンが海洋の境界線の画定に向けた協議を始めました。ガス田の開発をそれぞれに進めたい両国の思惑が一致したと見られ、イスラエル側はおよそ30年ぶりの協議だと意欲を示していて、合意に至ることができるかが焦点となります。
イスラエルとレバノンは14日、レバノン南部のナクーラにある国連施設で東地中海の境界線の画定に向けた代表者による初めての協議を開きました。

協議は2010年から両国と話し合いを進めているアメリカの仲介で実現し、1時間半ほどで終了したということです。

今回の協議についてアメリカ政府は「生産的な協議をした」と評価し、両国のメディアは今月28日にも2度目の協議の場を設けることで一致したと伝えています。

両国はイスラエルの建国に端を発した第1次中東戦争以降、たびたび戦火を交え、2006年にはイスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの間で大規模な戦闘が起きていますが、その後は休戦状態となっています。

一方、両国が面する東地中海ではガス田が相次いで発見されていて、今回、開発をそれぞれに進めたい両国の思惑が一致したと見られています。

協議についてイスラエル側は政治的な協議としてはおよそ30年ぶりだとして合意に意欲を示していますが、レバノン国内ではヒズボラなどが反発していて、今後、合意に至ることができるかが焦点となります。

レバノンに変革を求めるイスラエルと米の思惑一致

イスラエルの専門家は、長年に渡り対立してきた両国の協議が実現したことについて、政治や経済が不安定なレバノンに変革を求めるという点で、イスラエルと仲介役のアメリカとの間で思惑が一致した結果だとしています。

イスラエルの元政府高官で、イスラエル国家安全保障研究所のオルナ・ミズラヒ上級研究員は、NHKのインタビューに応じました。

この中で、ミズラヒ上席研究員は「アメリカは、地域の安定やレバノンの政治システムの変革を求めており、イスラエルにとっても不安定なレバノンは危険な状況だ。そうした思惑が、協議開始を決定づけた」と述べ敵対するイランとつながりのある政治勢力がレバノン国内で影響力を増す中、協議を始める必要があったとしています。

また、イスラエルとしては協議を通じて東地中海でのガス田の発掘と開発を進めたいというねらいがあると指摘しました。

一方、レバノン側の事情については、「ベイルート港での爆発もあり、経済状況が深刻になっている。経済の改善を求める声があがり、外部の支援が必要となるなか、イスラエルと協議するという結論に至ったのだと思う」として、仲介役のアメリカの要請に応じ、対立してきたイスラエルとの対話を受け入れざるをえない状況にあったという見方を示しました。

今後については、「他の分野での理解促進や合意につながる可能性もある」と述べ、海上の境界線以外についても協議が行われ、幅広い分野で関係改善につながるかが焦点だとしています。

イスラエルとレバノン 対立の歴史

国境を接するイスラエルとレバノンは、1948年のイスラエル建国以来、たびたび戦火を交えてきました。

イスラエルの建国に端を発した1948年の第1次中東戦争でレバノンは、アラブ諸国のエジプトやシリアなどとともにイスラエルと戦争し、70万人とも言われるパレスチナ人が難民となりました。

1970年代に入ると、パレスチナ難民の一部が武装化したうえでレバノンに拠点を構え、イスラエル側に攻撃を仕掛けるようになり、緊張が高まりました。

1978年には、攻撃を仕掛けられたイスラエルが報復としてレバノンの南部を占領しました。

これをきっかけに国連が仲介に入り、UNFIL=国連レバノン暫定軍がレバノン南部に駐留するようになりました。

1982年には再び、両国の間で緊張感が高まり、イスラエルは、ゲリラ対策としてレバノンに侵攻し、首都ベイルートを包囲しました。

この際、ベイルートの難民キャンプで、レバノンの武装集団が、数千人とも言われるパレスチナ難民を虐殺するといういたましい事件も起きています。

イスラエル側は2000年、占領していたレバノン南部から撤退しましたが、レバノンは、国境地帯の一部については、イスラエルに占領されたままだとして、国境線の画定を求めています。

また、2006年7月には、イランやシリアの支援を受けて勢力を拡大してきたレバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」が、イスラエル軍を襲撃したことなどをきっかけに、イスラエルが国境を越えて侵攻し大規模な戦争になりました。

戦闘が始まって1か月後には、国連安全保障理事会の決議に基づき、イスラエル軍とヒズボラの間で停戦が実現しましたが、両国は、現在に至るまで休戦状態が続いています。