“変革”に挑む ~みずほフィナンシャルグループ坂井社長

“変革”に挑む ~みずほフィナンシャルグループ坂井社長
国内初のメガバンクとして、3つの銀行が統合して2000年に発足したみずほグループ。ことし、発足から20年がたちました。発足当時、総資産は150兆を超えて世界最大の金融グループの位置にいましたが、今は国内3番手に甘んじています。長引く低金利や異業種の参入など、金融環境の変化で向き合う課題は増える中、次の時代を見据えてどうその姿を変えていくのか、みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長にインタビューしました。(経済部記者 野上大輔)

20年目の危機感

9月下旬、大手町の本社でインタビューを受けた坂井社長は開口一番、みずほグループが発足してからの20年間で金融業界をめぐる環境が大きく変わったことへの危機感を口にしました。
坂井社長
「今いちばん思ってるのは、この20年間通して、低成長、低金利というものが進行してきたことによる影響です。金利メカニズムが働きづらい、ほとんど金利のない世界でどうやってお客様との関係で付加価値をつけていくのか、いちばん重たい課題だと思います。
みずほでは次世代金融への転換を図ろうとしているが、お金だけで付加価値をつくっていく世界ではなく、非金融の領域も含めて、新たに価値を作ってくいくのがわれわれの方向感として必要になります」
利用客からお金を預かって貸し出せば、銀行も成長していく従来型のビジネスモデルからの転換を迫られています。

坂井社長も預金を預かって安定的に収益をあげて、預金者に還元するという時代は終わり、銀行として新たな価値をどう創造していくかが問われているというのです。

店舗改革

金融機関の将来像を変える1つのピースと坂井社長が考えるのが店舗の改革です。みずほはメガバンクの中で唯一、全国47都道府県すべてに支店を持っています。その店舗の在り方を見直すことで、利用者との旧来型の接点を変えるねらいです。
坂井社長
「全国の幅広いネットワークで、駅前にお立ち寄りしやすい場所に構えて、いかに便利な場所で手続きいただくことに意味があったが、今はわれわれが満足なリターンをお渡しできない環境になりました。今までの有人の店舗だけではなくて、スマートフォンを起点とした生活圏と経済圏ができてきている中で、デジタルの世界で金融機能をしっかりつなげていくようなことをやっていくことが不可欠になってきています」
新たな店舗では、店頭に置くタブレットを操作することで手続きの用紙がなくても口座開設や住所変更、入金などの手続きができるようにします。店舗の数も削減し、2023年度までに3000人規模で事務職員を配置転換します。

デジタルで遅れない

次世代に向けた改革の柱に据えているのが、決済サービスに代表されるデジタル分野への進出です。

みずほ銀行はメガバンクでは唯一、スマホ決済のサービス「Jコインペイ」を広く展開しています。全国の地銀と提携することで、8000万を超える銀行口座の利用者が手軽にチャージできる決済サービスを目指しています。

しかし、利用者の数や普及度合いではPayPayや楽天ペイなど競合のIT企業に大きく出遅れているのが現状です。
坂井社長
「少額の送金など、ATMが手のひらにのったような形で実現できるような利便性を訴求していきたい。一方で、決済網の安心安全というものがあって、初めて一人一人の生活を守ることにつながるので、安全と信頼のバランスがいちばん重要です。金融機関単体だけではなくて、提携先も含めて強じんな仕組みをつくることが求められています」
金融機関との口座の接続ではことし、ドコモ口座をはじめとする不正引き出しの問題が起きました。
「Jコインペイ」では被害は起きていませんが、みずほ銀行の口座でも、過去に複数の電子決済サービスを通じて預金が引き出される被害があったことが明らかになっています。安全性を高めながら競争の激しい決済分野での生き残りを図ることができるかが問われています。

コロナ禍での金融機関の役割

危機の際に真価を問われるのが銀行業界です。今回のコロナショックでは、事業継続のための資金を確保しようと、企業が銀行に融資を要請する動きが相次ぎました。

しかし、収束しても経済活動はすべて元どおりに戻るには時間がかかり、その影響は長期化すると懸念されています。このため銀行には、通常の融資だけでなく一歩踏み込んだ支援が必要となります。

坂井社長は資金繰りの支援だけでなく、企業の成長ビジョンをアドバイスして、経営そのものに積極的に関わっていくことが重要だと考えています。
坂井社長
「企業であれば事業構造をいかに変えていくか、そのために、われわれが壁打ちの相手になり、議論をして、一緒に汗をかいて、ビジネスの新しい道を開拓することを今やるということがいちばん大事です。リスクを一緒にとっていく、そういうことをやっていかないといけないわけで、今が勝負どころだと思います」
みずほグループの発足から20年がたち、いまでは社員のおよそ70%が3行統合後の入社となります。坂井社長は、コロナ渦で対応を迫られたデジタル化の改革を進めるだけではなく、みずからの事業モデルの変革にも挑みたいとも語りました。

次世代の金融モデルをどう構築していくのか、坂井社長のもとで次の20年を見据えた議論がすでに始まっています。
経済部記者
野上 大輔
平成22年入局
金沢局をへて、経済部で現在、金融業界を担当