子どもの食べ残し、食べる?食べない?

子どもの食べ残し、食べる?食べない?
食欲の秋。おいしいものを子どもにもたくさん食べてほしいと手間暇かけて作った料理が残ってしまったら、どうしますか?「せっかく作ったのに」「もったいない」とついつい自分の口に運んでしまうなんてこと、ありますよね。その一口が子どもから感染症をうつされるリスクになるのではというツイートが親の間で話題になっています。(ネットワーク報道部 野田綾 加藤陽平)

かぜをひかないために“食べ残しは捨てる”

話題になったのはこんなツイートです。
「子どもが残したものを食べないだけでかぜをひく回数が減る。健康のために食べ残しは捨てる」
子どもたちはその日の体調や機嫌で食事を残すこともあります。

ですが、保育園や学校でかぜなどさまざまな病気にかかっているかもしれないので、「食べ残しを食べないほうが親にうつる心配は少ない」ということのようです。

これに対して、賛同する声が相次いでいるのです。

「なるほど!実践しよう」
「せめて親は生き残らねば。共倒れするわけにはいかない」
「子どもの食べ残しを食べないのはもちろん、歯ブラシも離している」

中にはこんなツイートも。
ツイートした人に話を聞いてみると、親子ともにぜんそくの症状が出ることがあり「これまでかぜやインフルエンザの流行の際は気を配ってはいなかったけど捨てるようになった」ということです。

一方で子どもの食べ残しは親が食べるという人たちもいます。

「もったいないが勝っちゃう」
「僕は子どもの食べ残しを食べてるけどかぜひきません」

職場の同僚は「親からコメが無かった時代の話を聞いて育ったのでコメを残されるとダメ。子どもが食べきれない時は自分が食べる」と話していました。

捨てるのはもったいないという気持ち、分かります。

高リスクな行動はほかにある?

実際、どのくらい感染のリスクがあるのか。

公衆衛生に詳しい日本小児科医会の峯眞人理事に聞くと意外な答えが返ってきました。
峯医師
「インフルエンザや一般的なかぜの場合は子どもの食べ残しを食べても感染するリスクはそれほど高くありません」
その理由をこう説明します。
峯医師
「インフルエンザなどの主な感染経路は飛まつや接触による感染です。多くは家庭内でのほかの行動、例えば子どもの鼻水を拭いた手で自分の口や鼻、目元を触ったり、子どものくしゃみやせきを顔に浴びたりすることで感染していると考えられます」
では新型コロナウイルスは?感染経路はインフルエンザとほぼ同じ。

厚生労働省のホームページにはこんな記載がありました。
つまり食べ物から感染したというケースはこれまで報告がないということ。

厚生労働省に問い合わせたところ「食べ物から感染するとは考えていません」という回答でした。

一方で峯医師は食べ残したものについてはどのくらいリスクがあるかはわからないといいます。
峯医師
「新型コロナウイルスはまだわからないことが多いウイルスです。
リスクを避ける意味では食べ残しは食べないほうがより安心です」
病気ならまだしも元気な子どもの食べ残しを毎回捨てるのは忍びない・・・。そんな親たちの声が聞こえてきそうですが、万が一にも感染している可能性が捨てきれない以上、やはり捨てた方がいいのでしょうか。
峯医師
「ウイルスが気になるけれど捨てるのはもったいないという人は例えば子どもがかじった果物などは水で洗ったり、温かい料理なら加熱しなおしたりしてから食べるといいでしょう」
新型コロナウイルスは70度では5分以内に検出できなくなり、温度が上がるほど短時間で死滅する傾向がみられたという研究報告もあります。

親子の感染 ここに注意!

食べ残し以外で親子間の感染を防ぐために気をつけた方がいいもの。

それは子どもの便だそうです。
峯医師
「新型コロナウイルスは便から長期間排せつされることが分かっています。子どもには無症状が少なくないことを考えると元気であっても念のため便の処理をする際は注意が必要です。そうした感染症はほかにもあります。例えば下痢などの症状が出るロタウイルスは1か月ほど症状がなくなったあとも便からウイルスが排せつされることがあります」

ちょっとした工夫でできる家庭での対策

子どもがいる家庭で家族間の感染を防ぐ効果的な方法も教えてもらいました。
峯医師
「子どもの鼻水を拭いたり便を処理したりした後はすぐに手を洗ってください。また玄関にアルコール消毒液を置き外から帰ってきた人はその場で手を消毒してから洗面台に移動し、手を洗うようにすれば室内に持ち込むウイルスを減らすことができます」
手や体を拭くタオルも家族それぞれに分けるのが望ましいということですが、子どもが決められたタオルを使ってくれるとは限りません。

そうした時は声かけを工夫するといいそうです。
峯医師
「感染予防には子どもの協力が不可欠です。しかしあれダメ、これダメ、こうしなさいでは、なかなかうまくいかない。子どもにとってもストレスになります。『大好きなお花のタオルすてきね。これを使ってね』などと子どもが率先してやりたくなるような声かけをすると無理なく対策ができるでしょう」

食べるのをやめた理由はほかにも

感染リスクを排除するために食べ残しを捨てるのか、それとも加熱するなど対策をして食べるのか。

結局は個人の判断ということになりそうです。

ただ食べるのをやめたのは感染対策だけが理由ではないという人もいます。
「残飯を食べると思うと心が折れる。しかもその食べ残しで太ると惨めな気持ちになる」。(ツイッターより)

子どもが残したものばかりを食べるのが苦痛になってしまったというのです。

当然食べるべき?あるべき母親像とは

その気持ちを描いた漫画が話題になっています。
「私の小さい頃も食べ残しは母が食べていたし、今でも姉は食べている」
「私も当然そうすべきだと思っていた」
「ところが・・・食べたくない」

そしてこう続きます。
「ある日ついにもういいや 捨てちゃおう」
「私は無意識に理想の母親像を自分に縛り付けてたのかも知れない」

作者のちくまサラさん。食事の量や味付けなどをいろいろ工夫しましたが、食べ残しを無くすことはできなかったそうです。漫画をSNSに投稿すると、同じ思いを抱えていた親からたくさんのコメントが寄せられたといいます。
ちくまサラさん
「発信してくれてありがとうと言われ、自分だけではなかったのだと気づきました。子どもには食べ物を捨てるのはよくないということをしっかり教えれば、必ずしも食べなくていいと考えています」

食べ残し 気にしすぎないで

食育の専門家も「気にしすぎないで」と話します。
太田さん
「そもそも子どもの気持ちにはどうしたって『ムラ』があるものなので、残すのは当たり前のこと。無理に食べさせようとすれば、よけいに食事が苦手になるかもしれません。買ってきた食材を腐らせず調理できたなら、結果的に残ってしまっても食材をむだにしたことにはならないと考えましょう。またどのくらい食べられそうか事前に子どもに確かめると食べ残しが減らせることもあります」
子どもの食べ残し、食べる?食べない?

新型コロナウイルスの感染拡大で行動や価値観が変化する今。

感染予防や親のストレスなどさまざまな視点から改めて議論が起きています。