ノーベル平和賞にWFP=世界食糧計画

ノーベル平和賞にWFP=世界食糧計画
k10012656561_202010091959_202010092021.mp4
ことしのノーベル平和賞に、世界各地で食糧支援を行っている国連機関、WFP=世界食糧計画が選ばれました。
ノルウェーのオスロにある選考委員会は、日本時間の9日午後6時すぎ、ことしのノーベル平和賞に国連のWFP=世界食糧計画を選んだと発表しました。
WFPは、ローマに本部を置き、1961年に設立された食糧などの人道支援を目的に創設された国連の機関です。

WFPは去年、88の国と地域の1億人近くに対して、緊急物資の配布や栄養状態の改善のための取り組みを行いました。

ノーベル賞の選考委員会によりますと、紛争が続き食糧事情が困難なイエメンやコンゴ民主共和国、それにナイジェリアなどでは、ことし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響も加わり、飢えに苦しむ人の数が急増しており、
WFPは活動を強化しているということです。

国連は、世界で飢えに苦しむ人の人数を、2030年までにゼロにする目標を掲げていますが、現在もおよそ7億人は食べ物の確保が困難で、WFPは各国政府や民間団体が一丸となって取り組まなければ目標は達成できないと訴えています。

国連機関のノーベル平和賞の受賞は、これまで
▽UNHCR=国連難民高等弁務官事務所や、
▽UNICEF=国連児童基金、
▽ILO=国際労働機関などが受賞していますが、
▽WFP=世界食糧計画の受賞は初めてです。

WFP報道官「誇りに思う」

ことしのノーベル平和賞にWFP=世界食糧計画が選ばれた瞬間、WFPのトムソン・フィリ報道官はスイスのジュネーブにある国連ヨーロッパ本部で記者会見中でした。

国連の関係者からメモを渡され受賞したことを告げられると、フィリ報道官は「とても誇りに思います。ノーベル平和賞の候補にあがったことだけでも十分だと思っていました。私自身、ジュネーブに来る前には南スーダンで仕事をしていました。WFPのすばらしいチームの一員であることをとても誇りに思っています」と述べ、喜びをあらわにしていました。

WFPが投稿「深く感謝」

WFPは、ノーベル平和賞に選ばれたことを受けて、ツイッターにメッセージを投稿し「2020年のノーベル平和賞に選んで頂き、深く感謝したい。平和と、飢餓ゼロが結びついていることを、世界に強く思い起こさせてくれる」とコメントし、世界から飢えをなくす取り組みの重要性を改めて訴えました。

選考委員会「飢餓の利用防ぐ推進力の役割を果たした」

選考委員会は授賞理由の中で「国際的な連帯と多国間協調の必要性はかつてないほど求められている」としたうえで、WFPについて「飢餓との闘いに努め、紛争の影響下にある地域で和平のための状況改善に向けて貢献し、さらに、戦争や紛争の武器として飢餓が利用されることを防ぐための推進力の役割を果たした」と評価しています。

そして、新型コロナウイルスの感染拡大によって、飢餓に苦しむ人が世界中で急増していると指摘し、「WFPは『ワクチンができる日まで、食料こそが混とんに立ち向かう最もいいワクチンだ』とし、世界的な大流行の中でその取り組みを強化するため、めざましい努力をしてきた」としています。

さらに、「ことしの授賞によって、飢餓に苦しんだり、その脅威にさらされたりしている何百万もの人たちに世界中の目が向いてほしい。WFPは食料の安全保障を平和の手段とするための多国間協調の中で重要な役割を果たし、アルフレッド・ノーベルの遺志にある国家間の友愛を発展させるために日々、貢献している」としたうえで、「人類全体の利益のためのその努力は、世界のすべての国が支持し、支援すべきものだ」と結んでいます。

活動は命がけになることも

ことしのノーベル平和賞に選ばれたWFP=世界食糧計画は、アフリカや中東など各地の紛争地で、危険で困難な状況にいる人々に食料を届け、「命をつなぐ」活動を続けてきました。

世界では2000年代に入り、民族や宗教の違いを背景にした内戦や武力衝突が各地で増え、戦闘が市街地などに拡大し戦火に巻き込まれる一般市民が急増していて、国外に逃れた難民や国内で避難する人たちに緊急の人道支援を行うWFPの役割は重要さを増しています。

WFPの活動は、アフリカのソマリアやコンゴ民主共和国の東部など、戦闘が続いて国家機能が失われている危険な地域でも行われています。

スタッフがテロや戦闘に巻き込まれたり、食料を運ぶトラックが襲撃されたりするなど、その活動は、まさに命がけになることもあります。

また、近年は、気候変動の影響で農業生産が打撃を受けているアフリカのサハラ砂漠の南側のサヘル地域の国々での活動にも力を入れ、このうちブルキナファソでは、農地の改良なども支援しています。

世界で増える飢餓人口

世界で十分な食事を取ることができず飢餓に苦しむ人は世界人口の9%近くにあたる6億9000万人近くに上ります。

地域別にはアジアが最も多く、3億8000万人を超えているほか、アフリカも2億5000万人を超えています。

国連の報告書によりますと、2000年代の中頃に8億人を超えていた世界の飢餓人口は、新興国での経済成長や農業生産の拡大などもあって減少傾向にありましたが、2014年以降、再び増加に転じています。

その大きな原因が各地で続く武力紛争で、アフリカの南スーダンや中東のイエメンなど内戦や戦闘が続いてきた国では、子どもを含む多くの市民が十分な食事をとることができなくなっています。

また、気候変動の影響も深刻で、アフリカのサハラ砂漠の南にあるサヘルと呼ばれる地域の国々では、干ばつや豪雨によって農業生産が打撃を受け、食料不足に拍車をかけています。

国連では、2030年までに世界から飢餓を一掃する目標を掲げていますが、このままでは人類が飢餓との闘いに打ち勝つのは困難だとして、各国に対策と支援を強化を呼びかけています。

元WFP忍足さん「まさかことし取れるとは」

ことしのノーベル平和賞に、WFP=世界食糧計画が選ばれたことについて、30年以上、国連に勤務して人道支援や開発支援にあたり、2009年から2014年までWFPのアジア地域局長を務めた忍足謙朗さん(64)に話を聞きました。

忍足さんは、「何度か候補になっていたのは知っていましたが、まさかことし取れるとは考えてもおらず、うれしく思います」と率直に喜びを語りました。

受賞が決まった理由については、「難民などにできるだけの支援をして日常的に生活できるようにしてあげるという、基本的なWFPの使命が評価されたのかと思う」と述べました。

さらに、ことしは新型コロナウイルスの影響で世界中で飢餓の状態にある人が増えているとし、「WFPはロジスティックス部門にたけていて、アフリカなどでコロナ対応のために衛生関連の援助に関わる人がWFPの飛行機を使って動いている。こうした点も評価されたと思う」と話していました。

そのうえで、「受賞をきっかけに世界の飢餓に注目が集まればと思う。飢餓人口はここ20年間では減ってきたが、気候変動による異常気象などで再び増え始めている。食べ物の支援はまだまだ必要で、日本をはじめ各国の人々がWFPの活動に対して支援していただければ非常にありがたい」と、ノーベル平和賞の受賞が今後の活動の後押しになることに期待を示していました。

日本被団協 全国理事「平和賞にふさわしい団体」

広島の被爆者で、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の箕牧智之全国理事は、「WFPは幼い子どもを救う行動をとってきたと思う。平和賞にふさわしい団体で心からお喜び申し上げます」と述べました。

そのうえで、「核兵器廃絶に向けた活動はノーベル平和賞を受賞するかどうかにかかわらず末永く活動することが必要なので、署名活動や証言活動を地道に続けていきたい」と決意を新たにしていました。

また、核兵器禁止条約を批准する国や地域が早ければ今月にも条約の発効に必要な50に達する公算が大きくなっていることについて、「その時が来たらみんなで喜び合いたい」と期待を示しました。

日本被団協 代表理事「来年に向けて頑張りたい」

長崎市の被爆者で、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の横山照子代表理事は、「食べるものがないと生きていけないということを戦争中に体験しているので、貧しいところに食糧を支援する活動が受賞したことはよかったと思う」と述べました。

また、日本被団協が受賞を逃したことについて、「来年に向けてまだまだ頑張りたい。来年は核兵器禁止条約が発効されるかもしれず、そういう年にノーベル平和賞に選ばれれば注目が集まり、核兵器をなくそうという気持ちが世界中の人に広がるのではないか」と述べました。

長崎や広島などで核廃絶の署名を集める活動を続けノーベル平和賞に推薦された「高校生平和大使」については、「被爆者が高齢化する中で、高校生平和大使は私たちが希望を託している活動だ。逃したことにがっかりせず、活動を続けてノーベル平和賞を受賞してほしい」と話していました。

日本被団協 代表委員「訴え継続に意味」

長崎市の被爆者で、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の田中重光代表委員は、「世界の多くの子どもたちが紛争地域に暮らし、食べるものも飲むものもない状況だ。飢えている子どもたちを支援する団体が選ばれたことはいまの情勢にあったものだと思う」と述べました。

また、日本被団協が受賞を逃したことについて、「選ばれなかったのは残念だが、私たちがこれまで二度と被爆者を出してはならないという思いでずっと先頭に立って訴えてきたことがいまの核廃絶の世界の動きにつながっていることには意味があると思っている」と述べました。

長崎や広島などで核廃絶の署名を集める活動を続けノーベル平和賞に推薦された「高校生平和大使」について、「まだ世界的には知名度が低いが自分たちが核兵器をなくすという思いで運動を一生懸命続けて、もっと世界中に知れ渡るようになってほしい」と期待を寄せました。

長崎市の被爆者「受賞は当然」

長崎市の被爆者、山川剛さんは、「人類を直接脅かす食糧危機に関わる団体が受賞したことは、当然のことだと思う」と述べました。

また、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会が受賞を逃したことについて、「戦後75年、核兵器廃絶に向けて先頭で活動してきたのは被爆者だ。世界がもっと理解を示すべきだと思う」と述べました。

長崎や広島などで核廃絶の署名を集める活動を続けノーベル平和賞に推薦された「高校生平和大使」については、「平和大使の署名活動はユニークで、時間はかかるかもしれないが、いつか受賞すると信じている。今後も活動を続けて、ひとりひとりに署名をお願いすることで市民の核兵器への意識を変えていくことができると思う」と話していました。

高校生平和大使「今後も活動継続していきたい」

長崎や広島などで核廃絶の署名を集める活動を続けノーベル平和賞の候補に推薦されていた「高校生平和大使」のメンバーは9日、長崎市で平和賞の発表を待ちました。

「高校生平和大使」は、毎年、核兵器廃絶を求める署名を集め、スイスのジュネーブにある国連本部に届ける活動などを続け3年連続でノーベル平和賞の候補に推薦されました。

9日は、長崎市内のホテルに高校生平和大使や、署名を一緒に集めている
県内の高校生などおよそ30人が集まり、中継の映像を見ながら緊張した面持ちで発表を待ちました。

そして、世界各地で食糧支援を行っている国連機関、WFP=世界食糧計画が選ばれたことを受けて、記者会見を開きました。
この中で、高校生平和大使の大隈ゆうかさん(17)は、「受賞者にはなりませんでしたが、今後とも核兵器のない平和な世界の実現に向けて活動を継続していきたいです。微力だけど無力ではないというスローガンを信じ、受賞にふさわしい活動ができるよう努力していきたいです」と述べました。
また、高校生平和大使の大澤新之介さんは(17)「受賞できなかったのは残念ですが、これからもインターネットを使った署名集めなど、新しい取り組みでも広く平和を呼びかけていきたい」と話していました。

知花くららさん「関心がより高まることを期待」

2007年からWFP=世界食糧計画の活動に関わり、7年前からはその日本大使を務めているモデルで俳優の知花くららさんは戦争や災害などで難民となった人たちの現地の実情を伝え続けています。

WFPがことしのノーベル平和賞を受賞することについて知花さんは「現地視察を重ねるたびにWFPの活動がどれほど人々のぜい弱な暮らしを支えているのかを目の当たりにしてきました。受賞のニュースを受けて飢餓撲滅への熱い思いで活動するWFPの職員の真摯なまなざしが思い出されました。食糧支援は人の命を救い、また、種まきのような活動でもあり地道で根気のいることです。この受賞をきっかけに世界中で食糧問題についての関心がより高まることを期待します」とコメントしています。

WFPパレスチナ事務所代表「活動認められたことうれしく思う」

WFP=世界食糧計画は、中東パレスチナのガザ地区やヨルダン川西岸地区で、およそ35万人に対し食糧支援を行っています。

WFPによりますと、このうち種子島ほどの広さに200万人が暮らすガザ地区では、人口の53%が貧困状態にあり、ことしは新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって、およそ70%の住民が十分な食事がとれない状態にあるということです。

WFPパレスチナ事務所のステファン・カーニー代表は、ノーベル平和賞の受賞が決まったあとNHKの取材に応じ、「紛争地では食料不足が人々を追い詰める手段に使われかねない。食料の不足が紛争を深刻化させないよう取り組んできたWFPの活動が認められたことをうれしく思う」と話していました。そのうえで「今後は支援を行うだけでなく、住民が自分たちで食料を調達できるよう『魚の捕り方』を教えるなどして、経済発展にも貢献していきたい」と話していました。

また、「日本政府はWFPのパレスチナでの活動にとって重要な支援国であり、今後も支援を続けてほしい」と日本への期待も示しました。

WFP副事務局長「すべての職員にとって感動的な瞬間」

WFPのアブドゥラ副事務局長は本部のあるイタリアのローマで、日本時間の今夜8時すぎからNHKの取材に応じ、受賞が決まったことへの喜びを語りました。

この中で「WFPのすべての職員にとって感動的な瞬間だ。世界各地で活動する2万人の職員にとってこれまでの取り組みが評価されたもので、この喜びをどのようなことばで表せばよいのかわからない」と述べました。

そして「世界では紛争や新型コロナウイルスで多くの人々に影響が出ている。私たちは紛争のなかにあっても、平和が訪れ復興を目指すなかにあっても、常に支援を続けてきた」と話しました。

そのうえで今回受賞が決まったことをきっかけに、WFPをはじめ国連の機関やNGOへの支援が広がっていくことに期待を示しました。

親善大使の三浦雄一郎さん「食事は夢と希望育む力」

冒険家の三浦雄一郎さんは2015年に国連WFP協会の親善大使に就任し、活動に参加してきました。

2015年7月には大きな地震の被害を受けたネパールを訪問して山間部での食糧支援や復興支援の現場を視察し、日本からの支援の必要性を訴えました。

三浦さんは「親善大使として、このたびのノーベル平和賞の受賞は非常に名誉であり心より嬉しく思っております。地球上から飢餓をなくすため、特に子供たちに給食という形で食料を届けてきました。食事は生きるためだけではなく夢と希望と平和を育む大切な力です。今後も、世界中、特に子供たちを救済する役割を果たし続けてまいりますので、皆さまのご支援を心よりお願いいたします」とコメントしています。

親善大使の竹下景子さん「皆さんも支援の輪に加わって」

女優の竹下景子さんは、2005年から国連WFP協会を支援し、2010年には親善大使に就任しました。

2017年にはスーダンを訪れて難民キャンプを視察するなど支援の輪を広げるためのさまざまな活動に参加してきました。

ことしのノーベル平和賞にWFP=世界食糧計画が選ばれたことについて、竹下さんは「受賞を心よりうれしく思っております。これまでに5か国を視察し、現地の様々な状況を見てきました。いずれの国でも、WFPは、貧困や自然災害、紛争の影響を受けて、厳しい環境のなかに暮らす、最も弱い立場にいる人びとに食料を届けていました。食べることは生きること。これからも、世界中の人たちがきちんと食べることができるよう、私もWFPへの支援を続けていきます。皆さんも支援の輪に加わっていただけるとうれしいです」とコメントしています。

菅首相「日本は今後も取り組みを力強く後押し」

菅総理大臣は「WFP=世界食糧計画は、食糧支援を通じ、世界の飢餓と貧困の撲滅のために多大な貢献をしてきた。世界が新型コロナウイルス感染症の拡大という未曽有の危機に直面する中、連日対応にあたっている職員に深甚なる敬意を表する。日本は、人道危機に際し、豊富な活動実績を有するWFPを高く評価しており、今後も取り組みを力強く後押ししていく」とするメッセージを発表しました。

国連事務総長 各国にさらなる支援呼びかけ

国連は9日、「食料不足の最前線に世界で最も早く駆けつけるWFPの受賞を喜んでいる」とするグテーレス事務総長の声明を発表しました。

この中でグテーレス事務総長は「豊かになった世界で、なお数億人の人々が空腹を覚えながら床についているのは不条理だ。今、さらに数百万人が新型コロナウイルスが引き起こす飢餓の瀬戸際にある」として、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界の食料事情がさらに悪化していると、危機感を示しました。

そのうえで、「食べ物に加えいま世界に不足しているのは国際協力だ。WFPは政治を超え、人道上の必要に基づいて運営されている。国連加盟国による善意の資金拠出が頼りだ」として、各国に対してWFPへのさらなる支援を呼びかけました。

WFP日本事務所「飢餓問題考える機会に」

WFP=世界食糧計画がことしのノーベル平和賞に選ばれたことについて、WFPの日本事務所でも喜びの声があがっています。

WFP日本事務所では国内で、政府との連絡調整のほか、企業や団体との連携、それに広報活動などを行っています。

9日夜、都内でインタビューに応じた日本事務所の焼家直絵代表は「飢餓の状態が続くと、暴動や紛争につながり、教育や経済活動にも影響が出るので、飢餓を解決することが平和への道筋になります。ノーベル平和賞の受賞で私たちの活動を広く知ってもらえるようになることが非常にうれしい」と喜びを語りました。

そのうえで、「世界各国で新型コロナウイルスの感染が続き、私たちみんなが内向きになりがちな時代だからこそ、国際的な連帯が必要です。飢餓の問題をひと事ではなく『自分の事』として考えることが大切で、今回の受賞が、日本の皆さんにこの問題を考えてもらう機会となってくれればありがたい」と話していました。