コロナ禍での修学旅行 6割の学校が実施 多くが近場に変更

コロナ禍での修学旅行 6割の学校が実施 多くが近場に変更
k10012654961_202010090623_202010090629.mp4
コロナ禍での修学旅行の実施状況について、NHKが全国の教育委員会に聞いたところ、回答が得られた2万校余りのうち、15%の学校が「中止」を決めている一方、60%の学校が「実施」を決め、その多くが行き先を隣県や県内などの近場に変更して対応していることがわかりました。
新型コロナウイルスの影響で、全国の小中学校や高校で修学旅行の延期や中止が相次ぎましたが、感染状況に応じて、改めて実施を決める自治体も出てきていることから、NHKでは全国の都道府県に最新の状況を聞きました。

その結果、公立の小中学校と高校の修学旅行の実施状況について、学校数で回答が得られた35自治体、合わせて2万1132校のうち、「実施」を決めたのが60%、「検討中」は17%、「中止」を決めたのは15%でした。

また「実施」を決めたうち、「例年通りの形での実施」という回答は一部にとどまり、多くが行き先を県内や隣県などの近場に変更したり、時期を先延ばししたり、日程を日帰りに短縮するなどして、例年と違う形で対応していることがわかりました。

都道府県別にみると、90%以上の学校が実施を決めている自治体がある一方、80%以上の学校で中止となっている自治体もあり、地域によって対応が大きく分かれています。

文部科学省は今月、全国の教育委員会などに対し、すでに取りやめた場合でも改めて実施を検討することや、感染防止策を講じたうえで近距離での実施や日程短縮など適切に変更すること、「Go Toトラベル」の割り引きの対象となることを通知し、教育的意義や児童生徒の心情を考え、実施に向けて最大限配慮するよう求めています。

夏以降 改めて実施を検討する学校が増加

大手旅行会社によりますと、新型コロナウイルスの影響で春先には多くの学校が修学旅行を見合わせていたものの、夏以降、改めて実施を検討する学校が増えているといいます。

大手旅行会社の「近畿日本ツーリスト」では、年間で小中学校や高校、およそ4000校の修学旅行を手がけているということですが、感染拡大を受けて春先にはほとんどの学校がキャンセルする意向を示していたといいます。

しかし、感染の状況に応じて、夏以降、改めて実施を検討する学校が増えてきたということで、先月末時点では例年の6割にあたるおよそ2400校が今年度中の実施を決めたということです。

一方で、このうち75%にあたるおよそ1800校が行き先を県内や隣県に限定するなど、当初の予定を変更したうえで実施するということです。

特に感染対策は重視されていて、交通手段を公共交通機関からタクシーに変えたり、バス1台のところを2台に分乗して2席分を1人で利用したりするほか、食事の際には同一方向や互い違いに座るなど密を避ける工夫をしているということです。

受け入れがなかった修学旅行が増えたケースも 新潟 燕市

新型コロナウイルスの影響で観光客が減少している新潟県燕市では去年、全く受け入れのなかった修学旅行が先月から増えています。

新潟県燕市は、隣の三条市とともに金物や洋食器の製造が盛んで、6年前からは市内にある工場見学などを中心に観光客の誘致に力を入れていますが、感染拡大の影響で、市内を訪れる観光客はことし6月までの半年間におよそ20万人と、去年の同じ時期に比べて半数ほどに減っているということです。

こうした中、市には修学旅行で訪れたいという問い合わせが相次いでいるということです。

市では、去年、修学旅行の受け入れは全くなく、以前もほとんどなかったということですが、先月から12月にかけて県内をはじめ県外の学校合わせて41校、1600人余りの児童・生徒らが燕市を訪れるということです。

このうち7校は、隣接する長野県や山形県、それに福島県といった県外の学校だということです。

市によりますと多くの学校では、感染拡大の影響で行き先を変更したということです。

今月2日には山形県朝日町にある朝日中学校の3年生26人が伝統工芸品などを展示する燕市産業史料館を訪れました。

この学校では当初、ことし6月に東京などへの修学旅行を予定していましたが、感染拡大の影響で延期し、行き先も変更したということです。

この施設では感染対策のため検温やアルコール消毒を実施しているほか、団体客の場合は密を避けるためにグループに分かれてもらう対応をとっていて、生徒たちも分かれて金属加工品を見学したり、タンブラーに模様を付ける体験に取り組んだりしていました。

参加した男子生徒は「修学旅行で東京に行けないと知った時はがっかりしましたが、新潟で仲間と楽しい思い出を作れてうれしかったです」と話していました。

朝日中学校の土田紘愛教諭は「さまざまな大会などが中止となり子どもたちには我慢を強いていたので、修学旅行を実施することができてよかったです」と話していました。

市では修学旅行で訪れた人たちのために地元で作られたスプーンなどを準備していて、この日もバスの中で生徒たちに贈っていました。

市では感染対策を徹底して今後も安全に受け入れを進めたいとしています。

燕市観光振興課の梨本信宏課長は「コロナの影響で観光客が減る中で、修学旅行で生徒たちが市に集まってくるのは本当に驚きです。また来たいと思ってもらうように取り組みたい」と話していました。