【詳報】座間9人殺害裁判~弁護士を拒否 異例の被告人質問~

【詳報】座間9人殺害裁判~弁護士を拒否 異例の被告人質問~
「弁護士からの質問に答えるつもりはありません」。

10月7日から始まった白石隆浩被告に対する被告人質問は、異例の展開となりました。審理が行われたのは、1人目の被害者となった神奈川県の当時21歳の女性「A」さんの事件。法廷では、被告とAさんのSNSのやりとりも明らかになりました。被害者は殺害されることに同意していたのか。検察側の質問に被告がどう答えるのか注目が集まりました。

黙り込んだ被告…一転して

証言台のいすに座った白石被告は、弁護士に問いかけられても、首を傾けたまま何も答えませんでした。

弁護士が8月に面会した際、「質問には一切回答しない」と話していたということで、被告人質問は中断し、5分ほどで休廷になりました。

再開後、今度は検察官から「質問に答える意思はありますか」と尋ねられると、一転してはっきりとした口調で「あります」と答え、次のように述べました。

「最初は黙秘しようと考えたが、ニュースなどで自分が犯したことの大きさを感じ、逃げられないと思って白状することにした」。
(被告人質問より)

「さみしい」「死にたい」ツイート探す

事件までの経緯については、「風俗店に女性を紹介するスカウトの仕事で逮捕されたのをきっかけに5年ぶりに実家に住んだが、父と折り合いが悪く、家を出て女性の“ヒモ”になりたいと考えるようになった」と述べました。

そのターゲットにしたのが、“悩みを抱えた”女性でした。

「SNSで『疲れた』『さみしい』『死にたい』とつぶやいている女性を探してつながろうとした。スカウト時代の経験から、問題を抱えている女性の方が自分の思いどおりに操作しやすいと思った」。
(被告人質問より)

誘い出す手口についても語りました。

「実際に死にたいと思ったことはなかったが、自殺願望がある人には、『死にたい』などと書き込むと信頼を得やすい」。

こうした中で知り合ったのが、最初の被害者となったAさんでした。

SNSやりとり詳細

検察側は、被告とAさんのSNSのやりとりの詳細を示しました。

以下は、やりとりの抜粋と冒頭陳述、被告人質問などで、検察側が明らかにした事件に至る経緯です。

<2017年8月8日>
被告とAさんは、2017年8月初旬にSNSを通じて知り合い、メッセージのやりとりを始めました。

次のやりとりは、8月8日に行われたものです。
(取材に基づく再現)
●被告はAさんとやりとりする中で「自殺を手伝う」と言った方が、会ってもらえると考えたといいます。
(被告人質問より)

被害者「生きようと思う」

●8月15日には、自殺を手伝うという名目で、3人目の被害者Cさんも含め3人で会うことになっていました。

しかし、Aさんは死ぬのをやめるというメッセージを送り、その日は一緒に酒を飲んだだけで別れたということです。
(検察の冒頭陳述より)

貯金確認後に表れた変化

●Aさんにまとまった貯金があるのを知ると、被告は態度を変え、部屋を借りて同居し「ヒモになりたい」と考えるようになったとしています。
(検察の冒頭陳述より)

ロフト付きの部屋にこだわり

8月18日、2人は同居する部屋を探すため、不動産仲介業者を回りました。このときに応対した従業員の証言です。

(応対した従業員)
「女性は被告に『これから頑張って働いてね』と言っていました。翌日に内見を行うと、女性は『きれい』とか『ここでいつでも会えるね』と言っていましたが、被告は『ロフトがある部屋がいい』と難色を示していました」。
(検察が示した調書より)
●検察側によりますと、このころから被告はAさんのヒモになれない場合は、殺害してお金を奪おうと考え始めたとしています。

一方、女性は、失踪を装う形で被告と新たな生活を始めようと考えていたとしていて、現場のアパートの契約のため、Aさんは51万円を被告の口座に振り込みました。
(検察の冒頭陳述より)

未読の最後のメッセージ

●このメッセージは、失踪に関与していないことを装う偽装工作だったと被告は証言しました。

そして、Aさんに自殺する気配がなく、ヒモになるのも難しいと判断して殺害を決意、8月23日の夜、殺害したとしています。
(被告人質問と検察の冒頭陳述より)

好意示すAさん なぜ殺害?

被告と新たな生活を始めようと考えていたとされるAさんと、そのまま暮らす選択肢はなかったのか。

被告はこう証言しました。

「一緒に住んで金づるにするか、殺害するか、気持ちが揺れ動いていたと思う。ただ過去の経験からすぐに自分に冷めてしまうだろうと思った。そうなる前に殺して金を奪おうと思った」。


その上で検察官から、「殺害当日、Aさんから『自殺したい』とか『殺してくれ』という話がありましたか」と問われると、「ありません」と否定し、「首を絞めた時、Aさんは自分の手をどかそうとしていた」と説明しました。
(被告人質問より)

殺害当日 母親にメッセージ

殺害当日の8月23日、Aさんは母親に「明日夜帰るね、仕事が終わったら」とLINEでメッセージを送っていました。
(Aさん母親の証人尋問より)

法廷に立った母親によりますと、その後連絡が取れなくなったため、Aさんの部屋に入ると、手帳に挟まった「失踪宣告書」と書かれた文書が見つかったということです。

そこには、「自殺はしない」「友達と住みたい」と書かれていて、母親は、1人で生きたいと決意したのかと考えたそうです。

娘は生きようと思っていた

「娘は責任感が強く、他人を思いやれる優しい子だった」。

当時、Aさんは母親と同居し、会社員として働いていました。母親が車で送り迎えし、一緒に買い物や映画に行くこともあったといいます。

母親は、涙ながらに次のように証言しました。

(Aさんの母親)
「娘は直前まで正社員になりたいと考え、パソコンの資格を取ろうとしていた。生きようと思っていたのだと思う。『自殺したい』という感情を吐露することで、精神的なバランスをとっていたのだと思う」。

そして、被告について尋ねられると、「すぐにでもこの世からいなくなってほしい。娘と同じことを受けてほしい」と声を詰まらせました。

双方の主張は…

今回の裁判では、9人の被害者を3つのグループに分け、まずAさんなど1人目から3人目までの被害者の事件について審理が行われます。

検察側は、争点について次のように述べました。
(検察側)
「真意に基づく承諾があったかどうか。被害者たちは被告の殺害計画を知らなかった。自殺願望を抱いていたことと、殺害されることの承諾があったことは、イコールではない」。
(検察の冒頭陳述より)

一方、弁護側はこう反論します。

(弁護側)
「被害者たちは殺害方法や希望日を伝え、みずからの意思で被告のもとに行った。被告の手で死が実現されることを想定していた」。
(弁護側の冒頭陳述より)

殺害直前も“死にたい”

弁護側は、Aさんは過去に自殺を図ったことがあるなど深い悩みを抱え、精神的に不安定な状態だったと述べました。

さらに、パソコンに残っていた日記の内容を示し、殺害される2日前、「殺されてもいいから終わりにしたい」とつづっていたことを明らかにしました。

そして、殺害当日の23日にかけても、被告とは別の人物に「死にたい」というメッセージをSNSで送っていたとして、殺害されることについて「承諾があった」と強調しました。
(弁護側の冒頭陳述より)

被告人質問で白石被告は、弁護士の質問を拒否し、検察官の問いかけには、よどみなく答えました。

本人が「承諾はなかった」と食い違う証言を行ったことで、弁護側は難しい対応を迫られることになりました。

今後の裁判では、これらをどう反証していくのかが焦点になります。