ハワイ、観光再開は?

ハワイ、観光再開は?
新型コロナウイルスは、日本人に人気のハワイにも甚大な影響をもたらした。感染拡大で厳しい移動制限などが取られ、観光客は激減。ホテルやビーチは今も人影がまばらだ。ただ、最近になって感染者数は減少傾向になり、観光客の受け入れ再開に向けた動きも出始めている。(ロサンゼルス支局長 及川順)

“今は来ないで” 続いた困難な時期

州政府によると、ハワイ州の感染者数はおよそ1万2000人(10月2日時点)。新規の感染者数は7月下旬以降、再度増加傾向となり、8月には1日当たり200人を超える厳しい状況となった。
航空便の運休も続き、ハワイを訪れる人の数は、去年は1日当たり3万人だったが、今は2000人にまで激減している。
パティ・ハーマンさん
「レストランも何もかも、大変な打撃を受けましたが、これまでは、関係者全員が“今はハワイに来るべき時ではない”というメッセージを発信せざるをえませんでした。感染が落ち着き、“青信号”となれば、観光復活の計画を日本にも届けたいと思っています」

厳しい監視で感染状況に落ち着き

感染状況は、9月中旬以降、比較的落ち着きをみせている。新規の感染者も1日100人程度まで減った。
現地では、行政が中心になり、警察とも連携しながら感染防止策を強力に進めている。
例えば、オアフ島のビーチでは、健康維持のためのサーフィンや散歩は認められているが、5人を超える集団での行動は禁止だ(10月2日時点。状況に応じて詳しい内容は変更される)。
警察が昼夜を問わずパトロールしていて、ビーチでは、4輪バギーに乗った警察官が何人も出て違反者がいないか監視の目を光らせている。

大きな一歩になるか、10月15日

ハワイ州は現在、アメリカのほかの州や海外から訪れる人に対して、到着後14日間、ホテルなどで自己隔離を行うことを求めている。これについてイゲ州知事は、感染状況に改善が見られたとして、10月15日から基準を緩和する方針を発表した。
具体的には、
▽ハワイに到着する72時間以内にアメリカの基準を満たしたPCR検査で陰性と判定されること、
▽到着したときの体温に異常がないこと、
▽その後も体調に変化がないことなどが満たされれば、14日間の隔離を不要にするという。

アメリカでは、渡航前のPCR検査はドラッグストアなどで受けることができる。基準緩和によって、アメリカの他州からハワイへは行きやすくなりそうだ。地元メディアは、10月15日を「観光再開の第一歩」などと伝えている。

日本からの場合は?

気になるのは、日本で受けたPCR検査が隔離免除の対象になるのかどうかだろう。9月16日に行われた州知事の会見の時点では、私たちの取材に対して州知事のオフィスは、「対象にならない」との回答だった。
ただ、その後も取材を続けると、ハワイ州政府の関係者は、日本での検査も対象に加えることについて日本側と調整を進めていることを明らかにした。アメリカ国内を除けば、ハワイにとって日本人は最大のお得意様だ。できるだけ速やかに調整を済ませ、日本からの観光客の受け入れ態勢を整えたいというねらいがうかがえる。

あちこちで進む対策

今、ハワイでは観光客の受け入れ再開に向けて、さまざまな取り組みが進んでいる。
町中のレストランの入り口には紙が掲示されるようになった。店内の消毒、テーブル間の距離の確保など、十分な感染防止策が取られていると衛生当局が判断すれば“合格”と書かれた緑色の紙が掲示される。
ちなみに要改善になると黄色、そして、営業停止は赤色だ。感染防止策を「見える化」することでレストランに対策を促している。
今は閑散としている空港でも、準備は進む。当初は、到着した乗客一人一人に担当者が近づいて検温を行っていたそうだが、9月までに、乗客の体温を測るサーマルカメラがすべてのゲートに設置された。
また、ある大手のホテルでは、長さ30センチほどの棒状の道具が導入された。ウイルスなどを取り除く効果があるとされる紫外線で、多くの人が触れるエレベーターのボタンやドアノブなどを消毒しているとのことだった。

日本向けの旅行商品も

日本の大手旅行会社の中にも、年末年始の観光需要をにらんで新しい商品を販売する動きが出ている。空港とホテルの間を専用車で送迎するほか、朝食はルームサービスにするなど、感染防止の徹底がセールスポイントだ。
古川裕之さん
「年末年始は1年以上前から予約を頂いています。予約の動向は若干、弱含みではありますが、年末にハワイに来られることを信じて予約される方も多くいらっしゃいます。皆さん最新のハワイの感染状況などを気にされているので、観光業に関わるすべての人たちでしっかりとお客様をケアできる態勢を整えたいと思っています」

恒例のあのイベントは?

ハワイでは、12月にホノルルマラソンが控えている。主催者は「状況が許せばことしも開催したい」と話す。密集を回避するため、参加人数は例年の3万人から2万人に絞ることにした。コースから狭い道路は外し、一斉スタートもやめることにした。
マスク代わりに使えるバンダナも用意するという。
ジム・バラハルさん
「まだ諦めていません。新型コロナウイルスの中でも開催ができるよう、何か月もかけて準備を進めています」

一歩、一歩

去年、1000万人が訪れたハワイ。州政府の関係者は徐々に観光客を取り戻していきたいと話す。
感染防止と経済活動の再開は、世界中の重い課題だ。性急な観光客の受け入れ再開は将来のリスクになりかねない。事実、ハワイの一部の市長からは「州政府とは別に独自の検査基準を設ける」などと慎重な対応を求める意見も出ている。ハワイの観光関係者は、一歩一歩、正常化に動こうとしている。まずは、10月15日以降の状況が当面の焦点だ。
ロサンゼルス支局長
及川 順
1994年入局
政治部、アメリカ総局(ニューヨーク)などを経て2019年から現所属