トランプ大統領が退院へ 医師団「退院できる水準にまで回復」

トランプ大統領が退院へ 医師団「退院できる水準にまで回復」
新型コロナウイルスに感染して入院しているアメリカのトランプ大統領は、日本時間の6日午前7時半に病院を退院すると明らかにしました。
大統領の医師団はトランプ大統領が「症状が完全になくなったわけではない」としながらも退院できる水準にまで回復したという見解を示しました。
アメリカのトランプ大統領は、今月2日未明に新型コロナウイルスに感染していることを明らかにし、その日の夕方、首都ワシントン近郊にある軍の病院に入院しました。

トランプ大統領はその後、4日間にわたり病院で治療を受けていましたが、5日、ツイッターで日本時間の6日午前7時半に退院すると明らかにしました。

病院では、このあと大統領の医師団が記者会見を開き、トランプ大統領の体調について「この72時間、発熱などの症状は出ておらず、血液中の酸素濃度も通常の水準だ」と述べました。

そのうえで「症状が完全になくなったわけではないが、医師団によるすべての診療結果が大統領の退院は可能だということを指し示している」と述べ、トランプ大統領の体調は問題なく退院できる程度にまで回復したという見解を示しました。

医師団では今後、ホワイトハウスでトランプ大統領の体調の経過を24時間態勢で慎重に観察するとしています。

一方、記者会見で記者団からは、トランプ大統領が4日に病院前の支持者に姿を見せるため専用車で外出したことが適切だったか質問されたのに対し、「大統領や周辺にいる人の安全について感染症の専門家と常に協議をしながら適切な助言を行っている」と述べるにとどめました。

またトランプ政権では5日、ホワイトハウスのマケナニー報道官の陽性が新たに判明するなどトランプ大統領周辺での陽性確認が相次いでいて、政権中枢での感染拡大も懸念されています。

トランプ大統領 病院の外に出たことを正当化

トランプ大統領は、車に乗って病院の外に出たことを一部のメディアが軽率だったと批判的に伝えていることについて、5日、ツイッターに「メディアは、私が、安全な車両に乗って、病院の外で待ってくれていた多くのファンや支援者に感謝したことに憤慨しているということだが、もし、私が出て行かなければ、今度は失礼だと言ったに違いない!」と投稿し、みずからの行動は正しかったと主張しました。

トランプ大統領 周辺での陽性確認相次ぐ

トランプ大統領の周辺で新型コロナウイルスの検査で陽性と確認されたのは、トランプ大統領夫妻も含め、これまでに少なくとも12人に上っています。

これまでの発表などによりますと、検査で陽性と確認されたのは、トランプ大統領、メラニア夫人、大統領の顧問を務める最側近のヒックス氏、コンウェイ元大統領顧問、再選に向けた選挙対策本部のステピエン本部長、共和党全国委員会のマクダニエル委員長、トランプ大統領の討論会の準備を担当するクリスティー前ニュージャージー州知事、マケナニー報道官、大統領秘書のルナ氏、それに共和党のリー上院議員と、ティリス上院議員、ノートルダム大学のジェンキンス学長です。

このうち大統領を含む7人は、先月26日にホワイトハウスで開かれた連邦最高裁判所の新たな判事を指名する際の行事に出席していて、アメリカのメディアはこの行事で感染が拡大した可能性もあると伝えています。
アメリカのメディアは、このほかにもホワイトハウスで勤務する複数の職員の陽性が確認されていると報じていますが、有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、トランプ大統領が陽性と確認されたアドバイザーの1人に公表しないように指示したと伝えています。

また、複数のメディアはトランプ政権が陽性と確認された人の濃厚接触者を探す「コンタクト・トレーシング」を十分に実施していないと指摘しています。

具体的には、連邦最高裁の判事指名の行事に参加していたおよそ150人やトランプ大統領の側近が陽性と確認された後に開かれた選挙資金パーティーの参加者およそ200人のうち、ホワイトハウスから連絡を受けた人は限られ、メディアは「政権の混乱ぶりを象徴している」と伝えています。

一方、連邦最高裁の判事指名の行事にはペンス副大統領も出席していましたが、4日に検査した結果、陰性だったとしています。

また、29日に行われた初めてのテレビ討論会でトランプ大統領と対じした民主党のバイデン前副大統領も検査の結果、陰性だったと発表しています。

専門家「今後も数週間は注意深く見守ることが重要」

ジョンズ・ホプキンス大学健康安全センターのアメシュ・アダルジャ上席研究員はトランプ大統領の病状について「医師団は病状をよく見せようとしていて、会見の内容だけからは正確にわからないが、大統領の症状は軽いものではなく、投薬や酸素を必要とする少なくとも中程度の症状だったとみられる」と分析しました。

また、退院の判断について、「すべての患者が症状がなくなるまで入院するわけではなく、ある程度回復したところで退院する人も多い。ホワイトハウスでは24時間常に高度な医療を受けられることを考えると、安全な決断ともいえる」としながらも、「CDC=疾病対策センターのガイドラインに従えば、症状が出てから10日間は人との接触を避けなければいけない。当面、選挙活動で人と接触するべきではなく、以前のスケジュールに戻るには時間がかかるだろう」と見通しを示しました。

さらに、「大統領は高齢かつ肥満の男性であり、今後も油断すべきではない。症状が再び悪化しないように数週間は注意深く見守ることが重要だ」としています。

一方で、トランプ大統領の側近らの間で感染が相次いだことについて「トランプ大統領とその周辺は、とるべき予防策をみずからの選択でとらなかった。感染が広がったのは驚きに値しないが、このようなことが大統領の周辺で起こったのは安全上大きな問題だ」と述べたうえで、「トランプ大統領とホワイトハウスは新型コロナウイルスの危険性を過小評価し続け、真剣に対処する人をばかにしつづけてきた。トランプ大統領のツイッターのメッセージは感染対策への信頼を失わせるものだ」と強く批判しています。