新型コロナ感染で入院のトランプ大統領が退院

新型コロナ感染で入院のトランプ大統領が退院
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新型コロナウイルスに感染して入院していたアメリカのトランプ大統領が日本時間の6日朝、退院し、ホワイトハウスに戻りました。トランプ大統領は、治療を続けながら隔離された部屋で執務を行うとみられますが、ホワイトハウスの関係者に感染が広がる中、入院からまる3日での退院には懸念や批判も出ています。
トランプ大統領は新型コロナウイルスに感染し、首都ワシントン近郊にある軍の病院に入院して、抗ウイルス薬の投与など治療を受けていましたが、入院からまる3日がたった5日、日本時間の6日朝、退院しました。
トランプ大統領は、ホワイトハウスに戻るとツイッターにビデオメッセージを投稿し「私は指導者として最前線に立つ仕事に戻る。危険は承知のうえだ」と述べて、ウイルスと闘う姿勢をアピールしました。

また「新型コロナウイルスに支配されたり、恐れたりしてはいけない。ワクチンもまもなくやってくる」と主張しました。

退院にあたってホワイトハウスは、トランプ大統領が隔離された部屋で執務を行えるように準備をしたと、アメリカのメディアは報じています。

また、医師団は6日も抗ウイルス薬の投与を続け、24時間態勢で慎重に経過を見守るとしていますが、完全に回復していないなかでの退院には懸念の声も出ています。

一方、ホワイトハウスでは、5日もマケナニー報道官がウイルスの検査で陽性と判定されるなど感染が相次いでいます。

こうした中、トランプ大統領はホワイトハウスに戻ると、すぐにマスクをはずして報道陣にポーズを取っていて、CNNテレビは「感染者がさらに増えるおそれがあり、無謀だ」などと批判しています。

病院の前には大勢の大統領の支持者

病院の前にはトランプ大統領の退院を見届けようと、大勢の大統領の支持者が集まりました。

このうち、トランプ大統領が入院した10月2日から現場に寝泊まりしていた40歳の支持者の男性は「大統領が退院するのを見ることができて最高の気分です。来月の選挙では地滑り的大勝利をおさめると思います。トランプ大統領の健康が全く心配ないとは言えませんが、医師が『大丈夫』と言ったのなら問題ないと思います」と話していました。

民主党 バイデン前副大統領「新型コロナの危機 終わっていない」

民主党のバイデン前副大統領は5日、南部フロリダ州マイアミの会場で開いた集会で演説し、新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領が、入院中にビデオメッセージを発信したことに言及し、「喜ばしく思った」と述べました。

そのうえで、選挙戦のメッセージを発信するまでに体調が回復しているとして、「大統領にはぜひ、科学者の言うことや、全国でのマスクの義務化を支持するようにしてほしい」と述べました。

また、「大統領が早期に回復するよう願っているが、この国の新型コロナウイルスの危機は、まだ終わっていない」と述べ、大統領に対して、新型コロナウイルスの感染対策に取り組むよう呼びかけました。

菅首相 「退院され安どしている」

菅総理大臣は、自民党の役員会で「アメリカのトランプ大統領が退院され、安どしている」と述べました。

加藤官房長官「早期の全快願う」

加藤官房長官は閣議のあとの記者会見で「医師団によると、トランプ大統領の体調は良好であり、順調に回復しているということで、先ほど、退院されたと承知している。トランプ大統領が早期に全快することを願っている」と述べました。

一方で、記者団が大統領選挙に与える影響について質問したのに対し、加藤官房長官は「他国の選挙に関して、わが国がコメントする立場にはない」と述べました。

医師「本来であればまだ入院治療が必要」

アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルスに感染したあと、入院からまる3日で退院したことについて多くの患者の治療に当たってきた自治医科大学付属さいたま医療センターの讃井將満教授は、「74歳という年齢と肥満体型という条件からみれば重症化するリスクは十分あり、本来であればまだ入院治療が必要だ。ただ、大統領という特別な仕事で代わりもいないと考えられ、歩くことができる程度に回復しているのであれば、退院して厳重な経過観察を行うのも一つの判断としては妥当かもしれない」と話しています。

一方で、「発症から1週間から2週間は急激に重症化することがあるほか、入院から3日程度であれば周囲に感染を広げるリスクもある。
仕事に復帰したとしても厳重な隔離が必要で、周囲のスタッフも感染に十分注意しなければならない」と述べ、引き続き、十分な注意が必要だとしています。

そのうえで、讃井教授は「レムデシビルやデキサメタゾンなど、すでに効果が分かっている薬に加え、開発中の薬を使うなどしたことで、重症化を防げた可能性がある」と指摘した一方、「一般的には、いったん回復しても入院して治療や経過観察を続けるべきで、簡単に退院できるほど甘い病気ではない。トランプ大統領の行動は決して参考にしてはいけない」と述べ、あくまで異例の措置であると強調しました。

バイデン大統領候補「マスクは重要 命守ろう」

野党・民主党の大統領候補、バイデン前副大統領は、トランプ大統領が感染防止対策を軽視しているとして批判を強めています。

自身のツイッターには、トランプ大統領がマスクを外してみせた際の動画と、マスクを着けたみずからの姿とともに「マスクを着けよう」「マスクは重要だ。命を守ろう」と投稿しました。

また、NBCテレビのニュース番組に出演し、トランプ大統領が退院した際にマスクを外したことについて尋ねられると「マスクは重要で命を守り、感染拡大を防げる。大統領がツイートしてきたのは、そんなに心配するなということだけだ。実際は心配だらけで、21万人が亡くなっている。問題ないというようなメッセージを出すべきではない。これは深刻な問題だ」と述べて、トランプ大統領の対応を批判し、感染対策の徹底を訴えました。