コロナでも売上増?西松屋流 店舗運営の極意とは

コロナでも売上増?西松屋流 店舗運営の極意とは
新型コロナウイルスの感染拡大で多くのアパレル企業が苦境に陥る中、売り上げを伸ばして“勝ち組”とも言われているのが、子ども服大手の「西松屋チェーン」です。
その要因は特徴満載の店舗にあるのですが、ことし8月に就任したばかりの大村浩一社長(32)にインタビューし、戦略を聞きました。(大阪放送局記者 甲木智和)

“勝ち組” その店舗戦略は?

がらんとした店内に、ハンガーで高いところまで陳列された子ども服。従業員の姿もほとんど見当たらないー。

西松屋の店舗に入ると「どこか普通のお店と違うな」と感じます。全国におよそ1000店舗を展開し、豊富な品ぞろえと価格の安さから子育て世代の支持を受けていますが、“コロナの勝ち組”と言われている理由は、その店舗のつくりにあるんです。
店舗の多くが郊外に立地 駐車場は目の前に●店舗は同じデザイン ほとんど平屋建て●高い天井 ベビーカーがすれ違える広い通路●衣類はハンガーでつり下げ サイズやデザインが一目でわかる
こうした特徴は感染拡大を受けて導入したわけではありません。買い物客の利便性と店舗を効率よく運営するために従来から取り入れてきました。買い物客はベビーカーでもスムーズに移動し、店員の接客なしでも商品を選ぶことができます。
また、店側にとっては衣類をハンガーでつり下げればたたみ直して整理する必要がないなど、少ない人数でも運営することができます。実はそれぞれの店舗にいる従業員の数は、あれだけの広さにもかかわらず2、3人なのです。
新型コロナの影響で一部の店舗では閉店や営業時間を短縮しましたが、ことし8月下旬までの半年間(2021年2月21日~8月20日)の決算では売り上げが12%余り増えたということです。

異業種からの発想を持ち込む

西松屋チェーンのルーツは兵庫県姫路市の呉服店です。
1956年、乳幼児の衣類などを販売する「赤ちゃんの西松屋」として創業しました。
1980年代までは地元に根づいたチェーンでしたが、大村さんの父親である前社長が店舗の改革に踏み切りました。
もともと大手鉄鋼メーカーに勤めていた経験から、製造業のノウハウを小売業の販売に取り入れ、効率性を追求したのです。
衣類をたたまずハンガーでかけたのは、従業員がたたみ直す手間を省き、少人数で店舗を運営するための工夫です。また、通路を広げたことで客がいても商品を搬入するのに制約がなくなりました。こうした積み重ねによって低コスト運営が可能になり、それが商品の価格の安さにつながったのです。
大村浩一社長
「お客様の利便性と、店舗運営の効率性を高めることは、正比例していく関係だと思っています。こうした店舗のつくりや運営は従来から続けてきたものですが、3密の回避が求められるコロナ禍でニーズが深まっていくと考えています」

コロナ前は減益続きの苦境

しかしここ数年を振り返ると、決して順風満帆ではありませんでした。
売り上げは伸びていましたが、利益が出ないという苦境に陥っていたのです。
2017年2月期の決算から3期連続で減益。直近2020年2月期の決算で最終利益は3年前の5分の1近くにまで落ち込んだのです。
その要因の一つはライバルとの競争激化です。ユニクロやしまむらなど大手が次々と子ども服事業に参入してきました。

それだけではありません。社内にも原因がありました。
シーズンものの商品など、大量の売れ残りを処分することによって利益が減ってしまう「値下げロス」が急増していたのです。店舗が増え続けるなか、仕入れが過剰になったり在庫の管理につまずいたりして収益が圧迫されていきました。
大村社長
「1000店舗まで増えたことで、仕入れのコントロールが難しくなっていました。方向性を誤るとその損失額が大きくなってしまい、本当にピンチだと思いました。直近2期の決算では利益の半減が続き、このまま同じことを繰り返しているとたぶん赤字になるだろうと」

打開は“現状の否定”から

この状況を打開するため、大村さんは創業以来続いてきた仕組みを抜本的に見直すことにしました。
商品の仕入れでは、これまでおよそ30人の担当者がそれぞれ判断していた仕入れの量を、会社全体で一元的に管理するように改めました。ボトムアップだった仕入れをトップダウンに変更する180度の転換です。また、在庫の状況を現場から経営陣まで共有する仕組みも導入。こうした改革によって売れ残り処分による損失は4割以上縮小しているということです。
大村社長
「注文した商品が今どの段階にあるのか、その状況をトップから担当者までが同じ基準で一元的に把握できる仕組みを作りました。この瀬戸際でメスを入れなければ、同じやり方を繰り返しているとさらに状況は悪化すると思って、なんとか<現状を否定>して、今やらなければという危機感でした」

若き社長が目指すものは

大村さんは現在32歳。
大学の卒業後、みずほ銀行に入りましたが、前社長の父親から「若さと力を生かしてほしい」と求められ、6年前に西松屋に入社しました。
東証一部上場企業では異例の若さともいえますが、大村さんは臆することなく、若さを武器にいろいろと挑戦していきたいといいます。店舗の数を1500店舗に増やすこと、コロナ収束後の海外出店など、目標はたくさんあるそうです。
大村社長
「ITベンチャー企業などでも私より若い社長というのはたくさんいると思いますし、世の中はデジタル化が進むなど変化が激しくなっています。これからの時代は若い世代が中心となってけん引していくことが重要なのかなと。『日日(ひび)に新たに』ということばを大切にしているんですが、学ぶべきことを学んで毎日新しさを求めて挑戦し続ける、若いからこそ新しいことにも気後れせずに、ものおじせずに、チャレンジしていくことが大切だと考えています」
かつて父親が異業種からの発想を持ち込んで成功の道筋をつけたように、大村さんも若さを武器に今、新しい風を会社に吹き込もうとしています。コロナ禍をどう乗り切っていくのか、32歳の社長の挑戦が続きます。
大阪放送局記者
甲木 智和
平成19年入局
大津局、経済部を経て
大阪局で経済担当
エネルギー・金融・財界などを幅広く取材