コロナで企業の休廃業が増加 事業続ける意欲失う経営者も

コロナで企業の休廃業が増加 事業続ける意欲失う経営者も
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新型コロナウイルスの影響による業績の悪化が打撃となり、休業や廃業する企業が全国で増えています。信用調査会社は、当面は政府の資金繰り支援策で乗り切れたとしても、経営の改善が見込めないとして事業を続ける意欲を失う経営者が多いのではないかと分析しています。
信用調査会社の東京商工リサーチによりますと、ことし1月から8月までに全国で休業や廃業、それに解散した企業は3万5816社で、去年の同じ時期より23.9%増加しました。

このペースが続くと年間で5万3000社を超え、過去最多だったおととしの4万6700社余りを大幅に上回る可能性があるとしています。

内訳は、旅行や飲食などのサービス業が1万1100社余りで最も多く、建設業が6300社余り、小売業が4500社余り、製造業が3800社余りなどとなっています。

信用調査会社では、政府の資金繰り支援策などで当面は乗り切れたとしても、影響が長期化すれば経営の改善が見込めないとして事業を続ける意欲を失う経営者が多いのではないかと分析しています。

東京商工リサーチ情報部の原田三寛部長は「新型コロナウイルスの感染拡大前から社長の高齢化や担い手不足などで企業の休廃業や解散の件数は高止まりする傾向にあった。そこに新型コロナの影響が加わって資金繰りに窮するところが出てきた」と分析しています。

そのうえで「今の資金繰り支援策はあくまで企業を潰さないためのものにすぎず、未来まで担保してくれるものではない。この先も会社が存続するよう、業態を転換するための資金を助成したり、いわゆる『事業承継』を後押ししたりする取り組みが必要だ」と指摘しています。

店閉めた中国料理店 オフィス街の客足戻らず

東京・銀座で中国料理店を営んでいた冨澤直志さん(70)は、40年続けてきた店を先月19日に閉じました。

3人の従業員とともに店を切り盛りしていましたが、4月の緊急事態宣言で客が激減し、1日に20万円以上あった売り上げは3割ほどまで落ち込みました。

オフィス街にあるこの店は、良心的な価格でおなかいっぱい食べられると周辺の会社員に親しまれてきましたが、緊急事態宣言が解除されてからもテレワークの導入などで客足は戻らず、9月に入っても売り上げは例年の半分ほどにとどまっていたと言うことです。

冨澤さんは去年から閉店を検討してはいたものの、新型コロナウイルスによる打撃が苦渋の決断を後押ししました。

この日は1枚だけ残しておいた店の白衣に袖を通し、ちゅう房の油汚れを丁寧に落としていました。

冨澤さんは店を今月中に明け渡したうえで、いつかまた料理人として働きたいと考えています。

冨澤さんは「自分で苦労して築いた店をコロナの影響で閉じるのは悔しく、粘りに粘ったが、もうだめだと思った。消費税率の引き上げやキャッシュレス化など年々環境が厳しくなる中、時代についていけなかった。小さな店をまた営みたいという思いはあるが、現実はうまくいかない。今商売するのは難しいとつくづく感じる」と話していました。

業態転換で再起の人 給付金の申請に苦労

新型コロナウイルスによる影響が長引くと見て、新たな業態に移ることで再建を図る人もいます。

東京・足立区で定食の店を営んできた吉澤万里子さんもその1人です。

吉澤さんは新型コロナウイルスの感染が拡大する中、自分の店がきっかけで感染者が出るのを避けたいと、3月以降、店を休業していました。

再開のタイミングを探してきましたが、感染が落ち着かず先行きが見えないことから、先月いっぱいで店を閉めました。

しかし、飲食業を続けたいという思いは強く、店舗よりも維持費がかからず感染の可能性も低そうなキッチンカーで持ち帰り弁当を販売する店を始めることを決めました。

吉澤さんは店の休業期間中も毎月10万円の店の家賃を払っていたうえ、キッチンカーのレンタルには3か月で50万円が必要だということです。

費用は国からの給付金などを使ってめどをつけたいとしていますが、インターネットを使った手続きに不慣れなことから、申請に苦労したと言います。

吉澤さんは、制度を使いやすくするとともに、資金面だけでなく事業の継続や業態転換をどう進めたらいいのか、専門家による相談も充実させてほしいと考えています。

吉澤さんは「店は常連さんも多く、毎日楽しく営業していたので、閉めるのは本当に残念でした。私は何とか新しい事業を始められそうですが、まだ苦しんでいる人も多く、幅広い支援が必要だと思います」と話していました。